明日、決行!
若い頃、地方都市で既製服のデザイナーをしていた母。DCブランド大流行中、友人が1着ン万円もする洋服を購入していた頃、私は月1万円程度で、母手作りのなんちゃってブランド服を数着、手にしていた。なんちゃってと言っても、そのブランドのちゃんとした型からおこした物(洋裁の本に型がついていた)だから、そういい加減な物ではない。
とはいえ、生地やボタンは、オリジナル。だから、私はセピア色のヨージ山本の服を着たりしていて、たまたまその店舗の前を通り過ぎた時、店の中にいた店員さんが、明らかに私を2度見したことがあった。通り過ぎながら、不思議がらせてゴメン、と内心思った。
そんな母だから、洋服に対する理解は深い。深いはずなのだが、とりわけTPOには厳しかった。特に素材と季節感には絶対のルールをひいていた。だから今般、女子に人気のバッグブランドの“カゴバッグに毛皮”なんてのは、母にしたら絶対許せない組み合わせなはずだ。
その母から、かつて言われていたことがある。「破れたジーンズと、真夏にそのウエスタンブーツを履いてるのを見たら、勘当する」と。
何? そんな楽しいことしてくれるの? 内心、ニヤリとした私。それって、やれってことだよね?
当時、社会人2年目くらいで、初めてクレジットカードを使って買った、お気に入りのヌメ皮のウエスタンブーツ。どこに行くにも履いていて、それを見かねた母が注意を促す意味で言ったのだと思う。真夏にウエスタンブーツを履いているのは、見るからに暑苦しいから、もはや罪だというのだ。
残念ながら母の目の前ではなかったけれど、破れたジーンズはとっくに履いた。だが暑すぎて、今まではさすがに真夏にブーツを履く気にはとてもなれなかった。けれど、私は歳も歳だし、そろそろやったるか、という気分。
明日、決行しよう!
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