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「さびしさは鳴る。」

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自作小説を集めたものです。表題は、某芥川賞作品の有名な冒頭から、拝借致しました。
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2014年10月の記事一覧

「毒薬」

「毒薬」

その小さなガラス瓶は、陽にかざすとキラキラと光を反射した。
その中を、無色透明の液体がとぷとぷと波を立てて、瓶を満たしている。

『これが一人分だよ』

たしかに、あの人はそう言った。
私の小さな手にも簡単に忍ばせることができる、これが"一人分だ"と。

あの人に出会ったのは本当に偶然だった。
前期レポートを提出するために行った教授の元で、あの人は静かに笑っていたのだ。
「人畜無害」という言葉を具

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