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「さびしさは鳴る。」

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自作小説を集めたものです。表題は、某芥川賞作品の有名な冒頭から、拝借致しました。
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2014年5月の記事一覧

「いつかの君の世界」

「いつかの君の世界」

三限の鐘が鳴る。

昼休みにあれほどいた人の群れがようやくまばらになって、一息ついた。

図書館前のテラスには日がぽかぽかと当たって、どこまでも青い空だった。

昼休みからすすっていたリプトンが底を尽き、ずず、という音がストローの先で鳴った。先週まで、どれだけ日差しがあっても風だけはひんやりとしていたのに。なまあたたかい空気と一緒に、夏の後姿が見える気がする。

「夏嫌いなんだよなぁー…」

口に

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