折坂悠太『心理ツアー』愛知公演
折坂悠太氏のライブに行ってきた。
場所は、名古屋市芸術創造センター。初めての会場はそれだけでドキドキする。
慣れない地下鉄を乗り継ぎ、いざ!
昼間の姿は知らずとも、夜に浮かび上がる前衛的な建物の見事なこと!かっこいい…
惚れ惚れしながら、いそいそと入場した。
入ってみると、肉眼で確認できる近さ!
全体像は撮り忘れたけれど、独特な形状のホール。いかにも演劇が上演されていそうな雰囲気。
ドキドキしながら開始を待った。
そして、折坂悠太氏とバンドメンバーがぞろぞろと登場。
インスタライブでのふにゃふにゃした彼ではない、凛とした雰囲気。
いつもの事ながらセトリは覚えていない。夢中でその瞬間を感じる。むさぼるように聴き入る。
没入感の強いライブだった。
時に穏やかで、時に陽気。そうかと思えば、急におどろおどろしく荘厳だ。
音源を聴き込んでいたことと、オンラインライブやインスタライブでよく耳にして随分と馴染んだ曲達。生活と密にあったからこそ、こうやって生身で生音を体感出来たことが何より嬉しく感動的だった。
ライブにしかない高揚感、ライブにしかないアレンジ、ライブで発見できる曲の新たな解釈。掴めない、一度きりしかないその瞬間を生きる。ライブが好きなのは、生きてる喜びを感じられるからかもしれない。ただただ楽しいという気持ちと、次々と浮かんでは消える思い出や日常のこと。
折坂悠太氏の曲達は、まるで人生そのものだ。これまでの日々のシーンを、走馬灯みたいに観ていた気がする。
歌詞は難解で、何のことを歌っているのかは本当のところ分からない。だけど、胸に刺さる。そして、心の底の奥の方から強い感情が込み上げてくる。
好きな曲も沢山やってくれた。
折坂氏の声の威力を実感する「朝顔」。
しんどい毎日でも大丈夫だと思える「針の穴」。
先日butajiさんも福岡のイベントで歌っていた「トーチ」。
鈴をもつ折坂氏に胸が高鳴る。あの曲だ、「春」。映画『泣く子はいねぇが』の主題歌、仲野太賀の顔が浮かぶ。
郷愁に駆られる「윤슬(ユンスル)」。この曲だろうか、水面のような照明が美しかったのは。
最初から最後まで照明が綺麗だった。
ストイックな演奏家たちとイカした会場、美しい照明。
職人のようなバンドメンバーは初めて観る人ばかりだったけれど、それぞれがそれぞれの持ち場で最高の仕事を遂行する姿の格好良いこと!
痺れる演奏だった。
そういえば、中学生の頃フォークソングにハマり、熱心に母のレコードを聴いた日々があった。しばらくロックバンドに夢中だったけれど、カネコアヤノ氏や折坂悠太氏などフォーキーなアーティストを好きになった今、あの頃の変わり者の自分があってよかったなと思った。
そして、コロナ以降のライブはほぼ100%泣いている。涙もろくなったのか、ライブが良すぎるだけなのか。
“また、遊びましょう。”
MCで折坂氏が言った。また来てね、ではなく遊びましょう。
それが良かった。
是非、またどこかで。