北村薫
北村薫先生は、今更当方が紹介するまでもないと思う。
とはいえ、好きなのだから仕方がない。
どれを取り上げるかは死ぬほど迷ったが、1冊に決めきれなかった。
若い女性が語り手の「円紫師匠と私」シリーズと、主人公が若い女性に翻弄される「覆面作家」シリーズが好きである。
クソ田舎育ちの当方、娯楽があまりない幼少期を過ごした。
数少ないイベントの一つが、両親の好きな落語である。
地元出身の若手落語家が、師匠を連れて年に数回凱旋する、小さな落語会に連れて行かれていた。
こちとら、生まれながらの本の虫である。
落語はテレビで見るより、本で読んで覚えていた。今でも寿限無くらいならソラで言える。
会場はもちろん、大人ばかりだ。その中でポツンと一人、当方の小さなシルエット。
小学生が艶噺で、食い気味のいい笑い声をたてるものだから、驚いた(呆れた?)師匠に顔を覚えてもらった。
というわけで、落語家の出る話を外すことは出来ない。
女子大生の「私」が、知り合った大学OBの落語家に、日常のちょっとした謎を解くヒントをもらう連作集。
北村先生のデビュー作「空飛ぶ馬」から始まる。
ヘッダーの「朝霧」は5作目にあたる。
登場人物の一人が若者に向けた言葉が、当方に刺さった、お気に入りの1冊である。
「好きになるなら、一流の人物を好きになりなさい。」
もう一作も、舞台は編集部。
こちらは男性編集者が、風変わりな新人作家に振り回される事件簿だ。
小説初心者にもお手軽に読んでいただけると思っている。
同世代の若い女性を扱うのに、全くテイストが変わる。
北村先生はオッサンなのに(誠に申し訳ございません)どちらにも違和感がない。
北村先生が根本凪を描写したら、どうお書きになるのだろう。
その前に、まず当方が根本凪の魅力をテキカクに、皆様にお届けできるようになりたいものである。