並走飛行
助手席の斜め上を、鳥が舞っている。
空港を出た旅客機と少しだけ並走飛行して、ルートを変えた。
鳥の名を、よく知らない。
雀や烏には見えなかったから、鷹だの鷲だのというヤツかもしれない。
しまむらに連れて行けと言われたので、御意。と車を出した。ミセスコーナーの近くでスマホを弄りながら待っていると、推しの衣装に使われる、薄いグレーのギンガムチェックのシャツが目に入った(しかしデザインはガチマダム)。
婆さまに「これにしなよ!」と勧めるか、一瞬本気で悩む。やめておいた。
裁縫の能力があったら、買ってリメイクしたりするところだが、お絵描きと同じで壊滅的である。
知人はたまに、「女性ファンは、推しとお揃いのワンピース着てイベント行かれて羨ましい」と言う。
確かに、見ていてとても可愛らしいし、愛を感じる。探すんだろうなぁ。
知人も去年はよく、ギンガムチェックのシャツばかり探していた。
特にそいつはタッパと肩幅があるので、たとえTシャツだったとしても、レディースのブランドを着るのは難しかろうと思う。
鳥は、飛行機に憧れて並んで飛んでいるわけではない。
ただただ自然に、己の生活をしているだけだろう。
ファンも、推しのモノマネをしているわけではない。
愛を持って応援をしているだけだ。
しかし、下から見上げる当方には、
遠い空を羽ばたく推しと、遠征から帰ってきた隣に立つ男が、
並走飛行しているかのように眩しく見える時がある。
きっと、まだこちらが離陸できていないからだろう。
☆ヘッダー写真、お借りしました。ありがとうございます。