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親たちの出雲駅伝 #3

これまでの話

昔からの友人に会ったかの如く

 2019.10.14 第31回出雲駅伝当日は、今にも泣きだしそうな「いかにも出雲」という曇り空。

 例年通り8時過ぎに出雲ドームに到着。出雲大社型のゲートを、スマホ片手にジョグしながら走っていく人がいます。もしやと思い「Sさ~ん!」と手を振ってみたら、ビンゴ。

 「息子の気分になって走ってみました」と。初めてお会いするのに、何年も前からの部活仲間という感覚です。自己紹介すらしなかったような。

 息子さんも、息子さんの親友もアンカーを務められます。近くには立命館のアンカーのご家族がおられ、しばしアンカーの親談義。ライバルであるけれど、同志でもある、共通の知り合いもいる、そんな会話の輪に私も混ぜてもらって、互いに応援する大学の健闘を祈りあいました。
 今年も、心が温まる時間を皆さんからいただきました。

理想の幕切れはこう!

 出雲ドーム付近で親御さん向け応援ベストポイントは、ゴール直線に曲がる手前とゴール前直線の2か所。

 前者は今一つの走りのとき、声を掛けやすい位置。後者はいい走りの時がオススメ。後者を案内した時、「息子と親友が、バチバチのデッドヒートで飛び込んでこないかな。そして、今度はうちが勝つんだよ。そして優勝だ」とSさんが仰る。両家の想いが伝わる言葉です。

 「Sさんの願いが叶うといいな。でもそうすると駒大が負けちゃうってことだから、後援会会員にあるまじき考え方だよな。」自分を律しなきゃと思いつつ、気持ちが揺らぎます。

 Sさんの奥様と合流したら、さらに気持ちが揺らいでしまい、「駒大が優勝したうえで、Sさんちと親友さんちが同タイム同ゴールしてくれないかな。」という落としどころに気持ちを持って行くのが精いっぱいでした。


ゴール100m前

 Sさんは出雲大社のスタートから各区をまわり、私は第一中継所からまわり、閉会式でお会いしましよう!そう約束してお別れしましたが、5区の応援スポットでバッタリ。

 駒大の藤田コーチもいらっしゃいます。笑顔でしたから、勝利を意識されているのが伝わります。2013年の優勝時を知っているだけに、またあの歓喜に浸れるのかと思うと、自然と上気分になります。

 応援を終えてSさん一行と一緒に出雲ドームへ向かいました。駐車場からドームに向かう道のりで、息子さんの調子が良さそうなのが解り、せっかくだから、ゴール前で見ましょうとお誘いし、コースを挟んで向かい合わせで、その時を待つことにしました。

 テレビ中継や周りの観客からの情報で、近年まれにみる大混戦。Sさんの息子さんが快走していることが解ります。
 ゴールの瞬間を撮るために、カメラの設定を再確認。手は震える、心臓はバクバク、足がガタガタ。まるで我が子の最高の瞬間を撮るかのような気持ちの高ぶり。ましてや、毎年ゴールの瞬間は失敗しがち。でも撮りたい画角は譲れない。
 胃がキリキリしてきます。手には脂汗。この感覚は、我が家人たちが全国2位をつかみ取った時以来。私の人生が変わる瞬間かも、、、そんな考えが脳裏をかすめた直後のこと。

 拍手と歓声がひときわ大きくなりました。いったい誰が飛び込んでくるんだろうと思いながらファインダーをのぞき、思いっきりシャッターを切り始めた瞬間、「ヒデー、ヒデー、ラストー」というSさんの声がはっきりと聞こえました。コースをはさんでいるにも関わらず!

 そして8秒後「大聖、ラストだー!」
 息子さんに掛けた声と同じ熱量の声援が、藤色のタスキの背中に飛んだのでした。

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(完)

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第31回出雲駅伝 出雲ドーム 2019.10.14 8:10
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第31回出雲駅伝 出雲ドーム 2019.10.14 15:15

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