見出し画像

車輪の再発明はなくしたいが、車輪が動く原理は知っておいた方がいい

「車輪の再発明」という言葉を聞いたことがないでしょうか?

ウィキペディアでは、以下のように説明されています。

車輪の再発明とは、「広く受け入れられ確立されている技術や解決法を再び一から作ること」を指すための慣用句。誰でも直観的にその意味が分かるように、車輪という誰でも知っていて古くから広く使われている既存の技術を比喩の題材として使った慣用表現で、世界中で使われている。

簡単に言えば、「すでに解決策があるのに、再び作るのは非効率でムダ」ということで、ネガティブな意味で使われるケースが多いと思います。

例えば、システム開発の現場において、「すでに優れたプラグイン(拡張機能)があったのに、新たに開発してしまった」といった話はよく聞きます。時間をかけた割には、成果物はいまいちだったり、セキュリティのリスクが高かったりと、まさに車輪の再発明をしてしまったと言えます。

「車輪の再発明」をしないメリット

私たちはweb制作会社ですが、webサイトの種類としては「BtoBサイト」を制作する機会が多いです。

長年のBtoBサイト制作の経験で培ったナレッジは、「車輪の再発明をなくしたい」という考えから、汎用的に利用できるようテンプレート化をしており、社外に対しても無料で配布しています。

上記で紹介した「BtoBサイト・標準ワイヤーフレーム」は、数多くのwebサイトを制作するなかで導き出された最適解を、誰でも簡単に使えるようにAdobe XD形式のワイヤーフレームとして作成したものです。

BtoB企業といっても多種多様な企業が存在し、マーケティングやセールスを含む購買のプロセスも異なりますが、BtoBビジネスの共通特性に由来する「型」があります。

しかし、そのような「型」があることを知らないと、試行錯誤をしながら制作をしていくことになり、限られたリソースの中で、時間・コストともに浪費する結果になりかねません。

社内においても、標準ワイヤーフレームができる前は、ディレクターやデザイナーが議論しながらワイヤーフレームを作り上げていくものの、結果としては各サイトで同じようなアウトプットになることも多かったです。

「BtoBサイト・標準ワイヤーフレーム」は、現在も社内で活用されており、経験が浅いメンバーでも比較的短時間で、完成度の高いワイヤーフレームを作りあげることができるようになった実感があります。

このことは「車輪の再発明がなくなった」と言える喜ばしいことです。

「車輪の再発明」をしないことのデメリット

一方で、標準ワイヤーフレームが存在することにより、「なぜここにお問い合わせへのボタンが配置されているのか?」「なぜこの優先順位でレイアウトされているのか?」などの疑問を持たずに、ただ、テンプレートのように中身のテキストを書きかえるだけになってしまう恐れもあります。

例えば、BtoBサイトにおいては、半数以上のユーザーがホームから閲覧を始めますが、その中でもお問い合わせ(コンバージョン)目的と情報収集の目的が半々程度で混在します。

そのようなユーザーの心理としては、

・お問い合わせ目的で来ているので、さっさと済ませたい
・キャッチコピーを見ると良さそうなので、まずは問い合わせしたい
・多くのページを見るのは面倒なので、まずは問い合わせしたい
・下層ページを見ると良さそうなので、問い合わせて詳しく知りたい


といったものがあり、ホームのファーストビューにお問い合わせへのボタンを配置することは、コンバージョンしてもらうために非常に重要なのです。

そのような背景を知らないと、いざ顧客に提案をしても、「ホームのファーストビューは、コピーと写真だけでシンプルにしたい」と言われた場合に、「なぜこうしているのか」「ここにボタンがあることで、コンバージョンにどれくらい影響が出るのか」を説明できず、顧客に言われたままにボタンを削除してしまうかもしれません。

これはwebサイト制作における例ですが、社内におけるドキュメント作成などでも同様です。

上司や先輩が過去に作成したフォーマットを再利用することは、時間短縮や一定の品質を保つために有効ではありますが、思考停止で中身だけを差し替えていると、全体の一貫性もなく、整合性の取れないドキュメントになってしまう恐れもあります。

再利用は便利だが、原理や理屈は知っておきたい

「車輪の再発明」をせずに、先人が苦労の末に生み出してくれた車輪を使うことは、効率化において大きなメリットがあります。幾度も性能試験を繰り返していることにより、安全性も高いでしょう。

しかし、車輪はどうやって動くのかという原理が分かっていないのに、直感で改造をしていると、思わぬ事故を引き起こしてしまうかもしれません。

また、時には「あえて車輪を再発明をする」という決断も必要だとも思います。既存のものからあと一歩抜きんでたものを作ろうとするならば、遠回りする可能性はあるものの、世に出回っている車輪より、さらに良いものを生み出せるかもしれません。

大事なことは、車輪の再発明をする・しないに関わらず、対象に対して深く興味を持つことではないでしょうか。興味があれば「なぜこうなっているのか?」を知りたくなり、原理や理屈にもたどり着くと思います。

効率化を意識して、すでにあるものを再利用しようとしている場面では、少し立ち止まって、「なぜこうなっているのか?」と考えるのがよいのではないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 Twitterもやっていますので、リプで感想などいただけると嬉しいです! https://twitter.com/imnstkhs