広告業界の2強(Alphabet・Meta)を揺るがすリテールメディア広告
今、広告業界に変化が起きている
デジタル広告業界を牽引するAlphabet、Meta
2023年の米国のデジタル広告業界の市場規模は約37兆円、Alphabet・Metaで合わせて約18.5兆円を売上げており、デジタル広告業界で圧倒的な強さを誇る。
近年、AmazonやWalmartのような小売広告が急成長
次に時系列×シェアでデータを見ていく。米国のデジタル広告業界におけるシェアは、2017年にGoogle、Metaで54.7%を占めているが、以降、段々とシェアが低下している。逆にE -commerceシェア(下図、オレンジ)が拡大しているのが分かる。
なぜ、小売のデジタル広告(RMN)が伸びているのか
小売のデジタル広告、RMNとは?
小売業が保持するメディア(リテールメディア)を駆使して広告を行っていく。例えば、Amazonであれば、Amazon(ECサイト)・Kindle・Amazon Primeである。これらをリテールメディアネットワーク(RMN)と呼ぶ。
RMNは購買情報を駆使した広告効果検証を可能にする
既存のデジタル広告、例えばGoogle広告では、CTR(クリック率)による効果検証は可能だが、購買までは追跡できない。RMNは自身が購買チャネルを持つため、これを可能にする。例えば、アマゾン広告ではACoS(広告費売上比率)を算出できる。広告費に対して、売上がどの程度上がったかを示す数値である。これにより効果的な広告を可能にする。
多様な顧客データ×顧客接点による広告
RMNは購買情報を中心とした多様な顧客データに基づきターゲティングが可能。
また、RMNはファネルにおいて、購買に近い領域の顧客にリーチできるのは大きな強みである。AmazonのECサイトで検索をかけているような比較的購買意欲が高い層に対して効率的にリーチが可能である。
日本におけるRMNの鍵は購買情報と顧客情報の紐付け
日本におけるRMNの現在地
日本においてRMNは広がっているとは言い難い。2022年頃からファミリーマート、ヤマダ電機、セブンイレブンなどがRMNの試みを始めている。
例えば、ファミリーマートは2022年の中期経営計画にてRMNを新規ビジネスの1つとしている。
RMNの鍵は購買情報と顧客情報の紐付け
筆者はRMNの成長ドライバーは購買データの獲得にあると考える。小売業でも購買情報が顧客情報と紐づいているとは限らない。例えば、ファミリーマートでSuica決済をすれば、顧客の住所、過去の購買行動とは全く紐づかない。これでは、前述したRMNのメリットが享受できない。
ウォルマートから見る小売業界の未来
AmazonはECサイトが主力であり、必然的に購買データと顧客情報が紐づく。一方で、実店舗中心のウォルマートもデジタル広告事業を急拡大している。ウォルマートは高度なデジタル化によって、顧客体験を向上させつつ、顧客データと購買データの連携を実現している。
Shopping & Saving 〜実店舗とオンライン購買をスムーズに〜
アプリでオンラインで商品をオーダーすると自宅へ無料配送される、また、すぐに商品が欲しいのであれば、実店舗で商品を受け取れる。また、実店舗の在庫の確認や売り場のどこに商品があるかの検索も可能。
Savings Catcher 〜会計後でも、最安値を保証〜
会計後に他店が同じ商品をウォルマートより低価格で売り出していた場合、その分の差額を割り引く。レシートをアプリで読み込むと近隣の他社商品価格と自動で比較して、差額分を電子ギフトカードで受け取ることができる。
Easy Digital Return 〜返品不要で全額返金〜
アプリにより、レシートを読み込み返品したい商品を選択する。これにより、返品不要で全額返金が可能になる(一部の商品は返品が必要)。しかも、購入した商品を「不味い」「嫌い」という顧客主観に基づく理由でも返品が可能。ただ、これらはアメリカの無条件返品文化が背景にあるので、日本でも真似すればうまくいく訳ではない。
このようにウォルマートではデジタルを駆使して顧客体験を高めている。日本における小売業界はデジタルによる顧客体験の向上による顧客データと購買データの紐付けがRMNの前段として必要そうである。
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