私達が他者との関わりに求めるもの
こんにちは。対人コミュニケーションについて研究・教育をしている大学教員の今井達也です。
私のホームページ:https://tatsuyautexas.wixsite.com/mysite
この記事は:
- 友人や恋人、家族などの前で、素直に振る舞えない人
- 自分が他者に受け入れられていないように感じる人
- 素の自分を出しすぎて、他者に嫌われてしまうのではないかと不安な人
に読んでもらうことによって、その気持ちの原因をすっきりとさせることができるのではないかと考えています。
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私達は、他者と共にいることにより、色々なモノを得ています。例えば:
- 楽しい時間
- 孤独じゃない喜び
- 愛情
- 安心感
などです。もちろん、お金や物質的な物、も他者から得られるモノに入ります。
今日は、その「他者といることで得られるもの」の中から、2つ取り上げてみます。なぜその2つを取り上げるかと言うと、その2つが人間関係を構築する上で非常に大きな役割を担っているからです。
その2つとは:
1.受容感:ありのままの自分を受け止めてもらえると思えること
2.肯定的評価:自分は誰かにとって価値がある存在だと思えること
です。下で詳しく見ていきましょう。
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1.受容感:ありのままの自分を受け止めてもらえると思えること
「人から受け入れてもらいたい」これは心理学的には基本的な欲求だと考えられます。ここでは2つの理論を紹介し、人から受容感を得ることの大切さを説明していきます。
愛着理論、ソシオメーター理論、です。
まず1つ目の理論、ボウルビーの愛着理論では、赤ちゃんの頃に親からしっかりと受容され、心の安全基地を築くことが大切であるとされています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E7%9D%80%E7%90%86%E8%AB%96
私も子供が二人いますが、これは「抱っこ」であると考えます。赤ちゃんは嫌なことがあると「抱っこ」を求めます。「抱っこ」が赤ちゃんに伝えるメッセージは「あなたは大丈夫」ということです。上の子は5歳児ですが、まだまだ抱っこを求めてきます。(可愛いんだけど、抱っこしすぎて腰が崩壊しています笑)
「あなたは大丈夫。どんなあなたでも私は受け入れます」という意味を伝えるのが抱っこなのかな、と思っています。
個人的には、大人になると突然「抱っこ」を必要としなくなる、とは思えません。肉体的な「抱っこ」ではなくても、精神的な「抱っこ」はたとえ老人になっても人は求めるものだと思います。去年亡くなった大好きだった祖母が、亡くなる直前に私にハグを求めてきたこと、一生忘れられません。
「あなたは大丈夫。どんなあなたでも受け入れます」そういうメッセージを欲していない人はいないのではないでしょうか。
その受容感は、私達の自己肯定感とも関連します。2つ目の理論です。
他の記事でも書きましたが、著名な心理学者Dr.Learyは、自身が提唱するソシオメーター理論の中で、
「自分という存在が他者に肯定的に評価されている、そして受容されていると感じられていること、それが自己肯定感」と主張しています。
つまり、私達の自己肯定感が高く保たれるためには、他者からの受容感が大きな役割を果たしていると言えるでしょう。
(ちなみに、日本人は他国の人と比べても自己肯定感が低いということが内閣府の調査で分かっています。その低い自己肯定感の裏側にも、もしかしたら受容感が関係しているかも知れません。)
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26gaiyou/tokushu.html
まだまだ挙げればキリがないのですが、私達は本能的に「ありのままの自分を他者に受け入れてもらいたい」という思いが強くあるようです。つまり、私達は受容感を他者との関わりに求めていると言えるでしょう。
それでは、私達が他者との関わりにおいて求めているものの、2つ目について触れていきます。
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2.肯定的評価:自分は誰かにとって価値がある存在だと思えること
心理学には Positivity Strivingsという言葉があります。これは
「他者に良く見られたい」という欲求のことです。
それに関連する面白い論文を紹介します。これも私がいたテキサス大学の先生、Professor. Swannの研究です。授業を受けたら、優しげなおじいちゃんでした笑
恋愛をしているカップルが仲良しなのはどういう時か。それは自分が相手に「良い人」だと思われている時、です。つまり、自分が肯定的に評価されている時に、人はその関係性に満足をする、という訳です。
(この研究結果には続きがあり、結婚しているカップル、つまり、夫婦には違う欲求があることが分かりました。それは「例え自分の悪い部分でも、相手に理解してもらいたい」という欲求です。それをSelf Verification Strivingsと言います。つまり、これはこの記事の1で説明したの受容感と関連があると言えます。)
上記のような恋愛のカップルがお互いに求めているような、「良い人だと思われたい」という欲求。この「良い人だと思われたい」って何を指すのでしょう。
色々な考え方がありますが、ここでは「良い人だと思われたい」というのは「私があなたにとって 価値がある人 だと思われたい」とします。
それに関連して面白い実験があります。
この実験では被験者を2つに分けます。2つのグループとも、被験者は何かをさせられるのですが、そのさせられたことに対して、フィードバックをもらいます。
グループAの被験者は、その被験者がやったことに対して「ありがとう」という内容が含まれたメッセージを受け取ります。
グループBの被験者は、その被験者がやったことに触れてはいますが、「ありがとう」という内容が含まれていないメッセージを受け取ります。
結果によると、グループAの被験者は、グループBの被験者よりも、そのメッセージの送信者に協力的な態度を取りました。つまり、「ありがとう」と感謝の言葉をもらった被験者は、そのメッセージの送信者に好意を持ったと言えます。
その理由は?
その理由は、グループAの方が、グループBよりも、「自分が社会的に価値がある」と感じることができたからだということが統計的な分析により分かりました。
つまり、「ありがとう」と言ってもらえることで、私達は自分が「肯定的に評価されている」「自分は価値がある存在である」と感じることができ、その気持ちにより、「ありがとう」と言ってくれた人に対して好意を抱いたと考えられます。
まとめると、私達は他者に「良い人だと思われたい」という欲求があります。なぜ「良い人だと思われたい」のか。それは、自分が他者にとって価値がある人だと思ってもらいたいからだということです。
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全体をまとめますが、私達は他者との関わりの中で以下の2つを求めています。
1.受容感:ありのままの自分を受け止めてもらえると思えること
2.肯定的評価:自分は誰かにとって価値がある存在だと思えること
私達は、他者からこういったものを得られることを期待していますが、実際に得ることは簡単なのでしょうか。お気づきの通り「非常に難しい」と考えます。なぜなら、
- 肯定的な評価を得るために、人は自分を偽って表現することがある
- それにより、ありのままの自分が表現されず、受容感を得ることが難しい
といった問題が起こりやすいからです。
つまり、今日紹介した2つの欲求は「私達が他者の前でどう振る舞うか」という問題に関係してきます。
- 受容感を満たそうと素直に振る舞えば、他者から肯定的に見られない懸念も出てくるし、
-他者の期待に合わせた自分を演じても、受容感が満たされないことがある、などの問題が出てくるわけです。
赤ちゃんは泣けば大人が抱っこしてくれます。でも大人が急に泣いても、誰も抱っこしてくれない、という話です(私が泣けば奥さんはハグしてくれるかも知れませんが笑)。
その問題にどうやって私達が対応していったらよいか。別の記事で、コミュニケーションの理論を応用しながら説明していきたいと思います。
読んでいただきありがとうございました!
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