人間関係を豊かにする栄養とは?
こんにちは。対人コミュニケーションについて研究・教育をしている大学教員の今井達也です。
私のホームページ:https://tatsuyautexas.wixsite.com/mysite
この記事は:
- 身の回りの人間関係(友達、恋人、家族など)に悩んでいる人
- コミュニケーション学、対人関係、心理学などに興味を持っている人
- 新たな人間関係の構築に不安を持っている人
などに読んでもらうことによって、新たな気付きが得られるかも知れません。
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読者のみなさんは人間関係についてどういうイメージを持っていますか?私は人間関係を植物のように捉えることがあります。豊かな人間関係は急に手に入れたり、いきなり良くなったりするのではなく、植物のように育てるものだと感じています。
もし人間関係が育てるものなのだとしたら、豊かな人間関係を育てるためにはどのような栄養が必要なのだろう。ふとそんなことを考えて記事を書くことにしました。
この記事を読む前に、あなたの身の回りの人間関係を一つ思い浮かべて読んでもらうと、より内容が腑に落ちると思います。是非思い浮かべてから、次に進んでみてください。
主に参考にしている本は
Rowland S Miller先生のIntimate Relationshipsです。私のゼミの教科書です。特に親密な人間関係を学びたいのであれば、必読の良著です。
人間関係を植物に例えるのであれば、その成長に影響するものを2つ考えることができます
1. 栄養
2. 悪影響
まず1の栄養ですが、植物を育てる際、様々な栄養が必要なことはみなさまご存知だと思います。子供のために大きなモミの木を買って1年後に枯らしてしまった私ですが笑、植物を育てる際に必要な栄養について少し調べてみました。二酸化炭素、水、光、チッソ、リン、カリウムなどだそうです。
そしてもちろん、2の植物の成長に悪影響を及ぼす要素も存在します。不適切な量の光、水、温度、肥料、そして病害虫などがそれにあたるようです。
では人間関係に必要な栄養とはなんでしょうか。そして悪影響とは。様々な研究や本、理論を読んでみて思いあたるものをリストしてみます。もちろん、これが全てではありません。
とその前に、1の栄養 と 2の悪影響 の前段階として、要素0を以下に挙げさせてください。
0. 肉体的・心理的安全
これが保証されていないと、人間関係は安定しません。植物に例えるのであれば、土や鉢と言ったところでしょうか(水耕栽培は土も鉢も要らないですね、ハイすみませんでした笑)。身体を傷つけられないという安心、心理的にダメージを与えられない保証、そうったものがないと人間関係は健康的に育ちません。
虐待、DV、偏見、いじめ、パワハラ・セクハラ、こういったものがこの状況に当たるでしょう(意外と身の回りにあって驚きます)。虐待を日常的に受けていれば、その虐待をする人間とは豊かな人間関係は育ちませんし、毎日パワハラをしてくる上司とは良い上司部下関係は構築されません、よね。
それでは栄養について見ていきましょう。
1. 栄養
情報:まず、お互いに十分な情報を共有していることが大切です。例えば、あなたは自分で思う本来の自分のことについて、大切な人に正確に理解してもらえていると思えていますか?あなたは、あなたの大切な人のことを十分に理解していると言えますか?
受容感:情報がお互いに共有されている = お互いに受容されている、という訳ではないですよね。お互いに相手のことを深く受容していることが重要です。表面的な人間性の受容ではなく、その人本来の姿、ありのままのその人を、受容し合うことが大切です。あなたの人間関係では、お互いにお互いをしっかりと受け止めていますか?受容の仕方についてはこちらを。(もっと踏み込んだ内容はこちらを)
肯定的評価:お互いに対して肯定的に評価していることも、親密な人間関係には重要な要素となります。お互いがお互いに対して相手の良いところ、すごいと思えるところを認識し、伝え合う必要があります。相手に感謝を伝えることも、相手に『あなたは価値のある人間です』と伝える有効な手段です。あなたの人間関係には、お互いを皮肉ったり、けなしたりする行為がありませんか?
信頼:お互いに対して、相手を傷つけずに、相手に不利益なことをしないと、自信を持てていることが大切です。あなたの人間関係は裏切りに怯え、相手に対する不信感に満ちていませんか?
敬意:どんなに親しい人間関係にもお互いに対する敬意が必要です。もちろん、家族にも敬意は必要です。あなたの人間関係には、からかいなどに隠れた相手に対する軽蔑が含まれていませんか?
ポジティブな感情:人間関係における嬉しい、楽しい、気分がいい、といったようなポジティブな感情は非常に有効な栄養です。あなたの人間関係には鬱々とした感情や悲しみが溢れていませんか(もちろん、多少はあって当然です)。
では一方、悪影響を及ぼしうる要素とは何でしょうか。思いつく限り書いてみます。もちろん、以下が全てではありません。
2. 悪影響
栄養不足:まず基本的に、1で挙げた栄養が不足していたり、過剰だったりすることが悪影響の原因となります。植物を枯らしてしまう原因が水をやらなかったり、水をやりすぎてしまうのと同じです。例えば、情報不足は悪影響の原因となります。一方、相手のことを隅から隅まで知ってしまうこと(情報過多)は、相手との適切な距離感が崩れてしまったり、相手との新鮮味を失ったりすることにつながります。
不透明さ(不十分な情報など):人間関係において大きな不安の原因となるのが、そもそもの情報や感情などの情報共有不足です。これをコミュニケーション学の用語でUncertainty(アンサーティンティー)と言います。このUncertaintyが高いと、基本的に人間関係は良い方向に成長しません。人種差別なども、相手に関する正確な情報が不足し、表層的な情報(肌の色など)で相手を評価することから始まります。あなたの人間関係では、お互いに十分な情報と気持ちの共有が行われていますか?
ネガティブな感情:ポジティブな感情が人間関係を成長させる栄養と述べましたが、ネガティブな感情は悪影響を及ぼします。著名な夫婦関係研究者のGottmanは以下のように述べています。
あなたの人間関係にはネガティブな感情が打ち消されるほどのポジティブな感情に溢れていますか?
嫉妬:嫉妬は人間関係において多少なりとも存在します。しかり過剰な嫉妬は相手への攻撃につながります。私の研究では、恋愛関係においてその関係性に不安が多いカップルは、嫉妬が多い傾向を示しました。あなたの人間関係には過剰な嫉妬が存在していませんか?
さてどうでしょうか。人間関係を植物に例えるのであれば、上記のような栄養が必要であり、悪影響を減らす努力や工夫が必要です。
その栄養の供給の仕方とは?悪影響の減らし方とは?
それがコミュニケーションです。
受容感の供給であればResponsivenessや傾聴を。
情報や感情の共有不足であれば自己開示や質問、そしてアサーションを。
お互いの良いところを伝え合うのであれば感謝を。
ポジティブな感情を増やしたければユーモアやこのポッドキャストを。
みなさんの身の回りの人間関係に足りていないものはありましたか?うまくいっていると思えた部分はどこでしょうか?
私も家族や友人、そして一緒に学んでいる学生さんとの関係を思い出しながら、考えていこうと思います。(なぜ職場の同僚を思い出さない。。。)
ここまで読んでいただきありがとうございました!みなさまの応援が私の栄養になります笑 今年もよろしくお願いいたします(遅い)!
補足1:
例えば、ここに書かれていない栄養素としては、愛(Love)や新鮮味、などが挙げられると思います。この記事に取り上げたものは、もちろん一部であり、特に様々な人間関係に共通するものを選択しました。あとは私の知識不足です。
補足2:
対立(Conflict)も悪影響として挙げられるかも知れません。ただ、対立はうまく対処できれば、人間関係を向上させるという考え方もあり、一概に悪影響とは言えない側面もあります。
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