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特殊相対論:固有時と 4元ベクトル

固有時 (proper time) は、相対性理論において重要な概念であり、観測者の持つ時計で測定される時間を表します。以下に、固有時がどのように定義され、軌道や4-速度ベクトル、エネルギー・運動量ベクトルなどとの関係について数式を用いて説明します。

1. 固有時の定義

固有時 (\tau) は、時空内での観測者の世界線に沿って定義されます。観測者の持つ時計に従って進む時間であり、時空の任意の2点 (P) と (Q) の間の固有時 (\Delta \tau) は、次のように定義されます:

[
\Delta \tau = \int_{P}^{Q} \sqrt{g_{\mu \nu} \frac{dx^\mu}{d\lambda} \frac{dx^\nu}{d\lambda}} , d\lambda
]

ここで、(g_{\mu \nu}) は時空の計量テンソル、(\frac{dx^\mu}{d\lambda}) は時空内の観測者の軌道をパラメトライズするパラメータ (\lambda) による微分です。

2. 固有時による軌道の表現と4-速度ベクトル

固有時 (\tau) を用いて軌道をパラメトライズすると、4-速度ベクトル (U^\mu) は次のように定義されます:

[
U^\mu = \frac{dx^\mu}{d\tau}
]

この4-速度ベクトルは、観測者が時空をどのように移動しているかを示します。

3. 4-速度ベクトルの大きさ

4-速度ベクトルの大きさ(ノルム)は、相対性理論では常に1に規格化されます。つまり、

[
g_{\mu \nu} U^\mu U^\nu = -1
]

ここで負の符号は、通常、時空の計量テンソル (g_{\mu \nu}) が ( (-, +, +, +) ) という署名を持つミンコフスキー時空での使用を意味します。

4. 運動量とエネルギーの定義

次に、質量 (m) を持つ粒子の場合、4-運動量ベクトル (P^\mu) は次のように定義されます:

[
P^\mu = m U^\mu
]

この4-運動量ベクトルは、粒子のエネルギーと運動量を一つのベクトルとしてまとめたものです。

5. エネルギーと質量の関係

4-運動量ベクトルの大きさを計算すると、次のようになります:

[
g_{\mu \nu} P^\mu P^\nu = m^2 g_{\mu \nu} U^\mu U^\nu = -m^2
]

この関係から、粒子のエネルギー (E) と3次元空間内の運動量 (\vec{p}) は次のように関係付けられます:

[
P^\mu = \left( \frac{E}{c}, \vec{p} \right)
]

ここで (c) は光速です。したがって、エネルギーと運動量の関係式は次のようになります:

[
E^2 = (pc)^2 + (mc^2)^2
]

これが有名な質量とエネルギーの関係式 (E = mc^2) の一形態です。

結論

4-運動量ベクトル (P^\mu = \left(\frac{E}{c}, \vec{p}\right)) の成分は、相対論的エネルギー (E) と相対論的運動量 (\vec{p}) となります。これは、4-速度ベクトル (U^\mu) を質量 (m) でスケーリングすることで得られ、その結果として、エネルギーと運動量の関係式が導かれます。この関係式は、エネルギーと運動量が相対性理論においてどのように結びついているかを示しています。

結論

固有時は、観測者が時空内で移動する際の「自身の時計による時間」を示し、その軌道のパラメータとして用いられます。この固有時によって定義される4-速度ベクトルは常に規格化され、質量を掛けた4-運動量ベクトルから、エネルギーと質量の間の関係式が導かれます。これにより、相対性理論における基本的な力学的性質が記述されます。


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4-運動量 (P^\mu) の成分がエネルギー (E) と運動量 (\vec{p}) になる理由について、相対性理論の基本的な定義と数式を用いて詳しく説明します。

1. 4-速度ベクトル (U^\mu) の定義

まず、固有時 (\tau) を用いて観測者の世界線をパラメトライズしたとき、4-速度ベクトル (U^\mu) は次のように定義されます:

[
U^\mu = \frac{dx^\mu}{d\tau}
]

ここで、(x^\mu = (ct, \vec{x})) は時空座標です。4-速度ベクトルの成分は以下のように書けます:

[
U^\mu = \left(\frac{d(ct)}{d\tau}, \frac{d\vec{x}}{d\tau}\right)
]

したがって、

[
U^\mu = \gamma \left(c, \vec{v}\right)
]

ここで、(\vec{v} = \frac{d\vec{x}}{dt}) は3次元空間における速度ベクトル、(\gamma = \frac{1}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}}) はローレンツ因子です。

2. 4-運動量ベクトル (P^\mu) の定義

次に、質量 (m) を持つ粒子の4-運動量ベクトル (P^\mu) は、4-速度ベクトル (U^\mu) に質量 (m) を掛けることで定義されます:

[
P^\mu = m U^\mu
]

この成分は次のようになります:

[
P^\mu = m \gamma \left(c, \vec{v}\right)
]

3. 4-運動量の成分とエネルギー・運動量の関係

4-運動量ベクトルの成分を具体的に書き出すと、

[
P^\mu = \left(\gamma mc, \gamma m \vec{v}\right)
]

ここで、(\gamma m c^2) が相対論的エネルギー (E) を表し、(\gamma m \vec{v}) が相対論的運動量 (\vec{p}) を表します。したがって、4-運動量ベクトルは次のように書けます:

[
P^\mu = \left(\frac{E}{c}, \vec{p}\right)
]

このように、4-運動量ベクトルの0番目の成分がエネルギー (E) を表し、残りの3つの成分が運動量 (\vec{p}) を表します。

4. エネルギーと運動量の関係式

4-運動量ベクトルのノルムを計算すると、以下のようになります:

[
g_{\mu \nu} P^\mu P^\nu = P^\mu P_\mu = -\left(\frac{E}{c}\right)^2 + \vec{p} \cdot \vec{p} = -m^2 c^2
]

これを解くと、

[
E^2 = p^2 c^2 + m^2 c^4
]

これがエネルギーと運動量の関係式です。ここで、質量 (m) がゼロの粒子(例えば光子)に対しては、エネルギーと運動量の関係は (E = pc) になります。
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