”恋する惑星”は、歪んだ男女の恋愛映画の大傑作
1990年代、タランティーノの出現で映画界は大きな変貌を遂げました。
それまで自主制作で活動していた無名のタランティーノは、ハーベイ・カイテルに見出され、”レザボアドッグス”で一気に有名になりました。
タランティーノの映画は、殺し屋やギャングの物語であっても暗い話にならず、観ている人をパッと活気付けるような映画を撮っていました。
彼はプロモーションで世界中を周る度に、まるでロックスターのような扱いを受けました。
私の知る限りでは、そのような映画監督はこれまで存在しませんでした。
そのインディペンデント出身のタランティーノが大絶賛した映画がありました。
香港映画”恋する惑星”は、タランティーノだけでなく、90年代に映画好きを熱狂させた映画です。
斬新なカメラワーク、音楽、編集、風変わりで魅力的な登場人物などで、最後までオーディエンスを飽きさせずに楽しませてくれました。
物語は、2組のカップルを中心に話が進んでいきます。
1組目は、金髪の殺し屋の女と、元カノがパイナップルが好物で、パイン缶を買い続ける刑事との話。
2組目は、サンドウィッチ屋の女と、キャビンアテンダントの元カノが忘れられない刑事の話。
1話目に登場する刑事は、彼女にフラれた事で迷走します。
手当たり次第に女性をナンパしたり、パイナップル缶を大量に食べて嘔吐したりめちゃくちゃなのです。
その後に、バーで殺し野の女と出会い、不思議な一晩過ごすのです。
因みにこの刑事は、金城武が演じています。
2話目の刑事役はトニーレオンが演じ、サンドウィッチ屋の女を歌姫フェイウォンが演じています。
ベリーショートヘアのフェイが、仕事場で”カリフォルニアドリーム”を大音量で流しながら店で踊っているだけで、仕事やる気ゼロです。
刑事の元カノが、突然サンドウィッチ屋にやってきて、刑事のアパートの合鍵を置いて行きます。
フェイがその鍵を持って刑事の家に勝手に進入して、自分色に模様替えをして
自分に気付いてもらおうとします。
刑事は、自分の部屋の様子が違うことにだんだん気がついていくが……
現代ではストーカーだし、どこかおかしいのですが、人の家で爆音で音楽を流してフェイが踊っているだけで絵になっているのです。
フェイウォンを以前から知っていて、楽曲も聴いていましたが、こんな演技ができる人だとは思ってもいませんでした。
2話目の見所は、ずばりフェイウォンの演技なのです。
1話目の話もおかしいところばかりで面白いのですが、特に2話目のカップルの話が、際立って面白いのです。
登場人物も病んでいるし、ツッコミどころがいっぱいで、観ているだけで楽しくなるのです。
この映画を何度観たかわからないくらい観ましたが、人の心を鷲掴みにさせられる一本です。
クランベリーズのカバー曲
フェイ・ウォン - 夢中人
劇中にフェイが何度も流している曲
The Mamas & The Papas - California Dreamin'