![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173355975/rectangle_large_type_2_19011634b3840f6604f512250c839754.png?width=1200)
寄付を増やすために認定NPO法人の申請をしたい!という団体さんに必要な2つのこと
最近の認定NPOの実態はどうなんだろう?こんな思いを持ち、2025年1月31日発行の「認定NPO法人白書」を読みました。
この白書はNPO会計税務専門家ネットワークが制作しており、クラウドファンディングのお知らせがあった際に寄付をして、白書を返礼品として送っていただきました。175ページにまとめられていて、わかりやすい構成です。
認定NPO法人といえば、寄付したら税額控除などの税制優遇のメリットがあるので寄付が増える!と思ってしまいますが、本当にそうなのか?や、認定申請や更新がとてもしんどいのでは?という疑問がこれまでありました。
今回は認定NPO法人白書を参考に実態を確認し、疑問を解いていけたらと思っております。
認定NPO法人の申請数は減ってきている
認定NPO法人は、2024年9月末時点で1,290法人となっています。
認定NPO法人になるには任意団体→認証NPO法人→認定NPO法人といった段階を経る必要があります。
認定されると、寄付者に対して所得税や相続税への税制優遇を提供することができたり、法人自らには収益事業から特定非営利活動に係る事業への寄付(損金算入)が所得金額の50%又は200万円の範囲ですることができます。
こうした税制優遇のメリットをうけられる認定NPOですが、増加数は一時期と比べて少くなくなっています。
これは認定NPOのひとつ手前の段階である認証NPO法人自体の数が年々減ってきていますので、それに合わせて認定NPOの増加数も鈍化している見方もあります。今はNPOよりも簡易な運営ができる一般社団法人として設立するケースが増えています(2023年の一般社団法人の設立数は6077法人でNPO法人の約5倍)。
![](https://assets.st-note.com/img/1738806498-xI9pKGYwa0XQBeH1VTqCNnsk.jpg?width=1200)
認定NPO法人と組織の信頼度はあまり関連性がない
認定NPO法人を取得すると信頼度が上がるという見方がありますが、信頼度に関する調査結果で認定NPOを信頼できると回答しているのは16.7%で民間企業、社会福祉法人、公益法人、一般社団法人、NPO法人に次ぐ信頼度になっており、必ずしも信頼度に直結してはいない現状です。どうやら認定NPO法人になって信頼度が上がったから寄付が増えたとは言えなさそうです。
![](https://assets.st-note.com/img/1738807141-S2piKV31FYtoHnBE0bOLfkgM.jpg?width=1200)
ちなみに、NPOの信頼度は、情報公開、窓口設置、反社とのつながりのなさ、活動に伴う人権侵害がない等で感じられているとのことでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1738807256-2cNs9GDgyIXQPH70fUSFhYbv.jpg?width=1200)
認定NPO法人になると寄付は増えるの?
認定NPO法人の寄付金の割合を見ると、認定団体の2.5%にあたる30団体が、全体の74.9%の寄付金額を獲得していることになります。一方、寄付額が500万円未満の団体数は70.2%を締めています。寄付者に対する税制優遇が見込まれて寄付が増えると思われている認定NPOですが、巨額の寄付を集めている少数の団体と、そうではない団体の2極化していることがわかります。
![](https://assets.st-note.com/img/1738807540-nROsUGuqNFbX5PTiSMkhtWjZ.jpg?width=1200)
2極化しているとはいえ、3年前と比べて寄付が増えたかを聞くと60%が増えたと回答しているので、認定NPO法人になると寄付が増える可能性が高まると言えるのではないでしょうか。
![](https://assets.st-note.com/img/1738820392-fwUXQualS5n8t9RFMHvP3VWY.jpg?width=1200)
寄付増につながる取り組みとして多いのは認定NPOであることを既存寄付者や潜在寄付者にアピールすることでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1738820392-QB6pMIqYhcGXuOs8rxt7JmDL.jpg?width=1200)
他にも、以下のような寄付にプラスになっているコメントがあることからも、認定NPO法人取得と寄付増には関連性があると思いました。
・企業寄付の審査に有利となった
・振込用紙と税制優遇を知らせるチラシをセットで配布している
・控除できるからという理由で大口寄付の話がくるようになった
・認定になってもすぐには寄付が増えることはなかったが、ホームページのリニューアルの際に企業寄付を求めるページを用意すると徐々に企業からの寄付が増えた
PSTは絶対値基準が63%
認定NPOのになるためにはパブリックサポートテスト(PST)という多くの人たちに公益的な活動をしていると認められていると証明する必要があります。その方法は、寄付金3,000円以上の寄付者が年間100人以上の絶対値基準、助成金や寄付金の収入金額の占める割合が2割以上の相対的基準、条例個別指定基準の3つから1つを選ぶ必要があります。63%の認定NPOが絶対値基準で認定されています。
![](https://assets.st-note.com/img/1738807870-d3nqkzMtwNLVXDpmRue4EIS6.jpg?width=1200)
認定申請の際の大変さってどんなことがあるの?
認定NPOになるには申請書類を所轄庁に出す必要があります。
・申請書
・寄附者名簿
・各認定基準に適合する旨及び欠格事由に該当しない旨を説明する書類
・寄附金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類
これらが定められていますが、33%の団体が、法律で定められた書類以外に追加資料の提出を求められています。その資料は以下のような資料で、組織運営、労務、会計税務、寄付に関する書類と多岐にわたっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1738809446-Vqz8Mr1Z5jAYQHKPILbasWSO.jpg?width=1200)
申請時の大変さとして挙げられているのが以下のようなことです。
寄付者名簿の作成(クレジットカード決済を入金主義に変更や名寄せをするなど所轄庁の形式に合わせる必要がある、PST対象から担当者の判断で外される等)
所轄庁とのやり取り(担当者によって指摘内容が異なる、担当者が活動内容に関心がなく手続き主義、指摘が細かい)
書類の意味や記載方法が分かりづらい(法的に根拠のない書類提出が求められる)
紙で印刷することの大変さ(システムで管理しても都度紙で出力しないといけない)
共益活動要件についての指摘対応が大変(毎年事業報告等をしているのに改めて資料を作成しないといけない)
組織運営と経理の基準の証明
議事録等の整備
また、認定基準の変更要望として1番多く挙げられているのは、PSTでカウントされる寄付について、対価性がある・ないが所轄庁の担当者の裁量にゆだねられていて全国一律の対応ができていないことです。
次に、2番目に多いのが、寄付金を特定非営利活動に70%以上あてないといけないということです。寄付金を何にあてたのかを明確にするには事務手数がとてもかかります。例えば人件費に充てたとしても、一人の人件費は様々な事業で人件費配賦されて分割されていて、各事業は助成金によって担われているケースもあり、そこから寄付で充当されたものを指定するのは至難の業です。NPOの事業費の大半は人件費ですから、この要件は対応できるけど、しんどいのが実際のところです。
そして、3番目の特定非営利活動に係る事業費が80%以上というのも、収益事業が収入の柱になっているNPOの場合はクリアが難しい場合があります。
![](https://assets.st-note.com/img/1738810624-UqfAS1nNXyMm0rhtg46Bs5d2.jpg?width=1200)
認定NPOってなんだか大変そう・・・
この白書の第5章では、参考意見として今後必要な制度や運営の改善ポイントがまとめられています。これらが今後進められていくことが期待されますが、しばらくは以下の内容に関連する大変さが認定NPO法人であるかぎり影響することがわかります。
・認定NPO法人ガイドラインの策定
・寄付の証明方法の明確化
・寄付者名簿の形式の柔軟化
・電子データでの保存範囲の明確化
・受入寄付金の70%基準の運用方法の改善
・所轄庁ごとの独自ルールは設けない仕組みづくり
・担当者による審査のばらつきの是正
・返礼品付き寄付の取り扱いに関する事例の公表、事前確認
・総会での決算書修正の強制の抑制
・法律に提出義務のない書類提出の抑制
・細かい文字修正の抑制
・費用対効果を勘案した提出書類の簡素化
・行政指導を行う場合に理由を開示する
・更新時の調査の重点化、簡素化、点検調査等の促進
さいごに
認定NPO法人白書を読んでわかったのは、認定の申請や更新をしていくのは、人事・総務・経理といった経営管理チームがしっかりと機能していないと難しいということです。
難しいというのは、作業ボリュームも多いというのもありますが、所轄庁の担当者がはずれだと振り回されてメンタル的にしんどくなる可能性が高いので、チームでないとやりきれないのではないかということです。
「それ、法律で必要とされている資料ではないので、その要求はお断りしたいです。」と面と向かって言えることや、不認定処分をうけたとしても行政不服審査を行うことで不認定処分の取消を求めるなどの対応は1人ではできません。
寄付の面でいうと、認定NPO法人になってから寄付額が増えた団体が過半数いることから、やはり寄付を増やすためには認定NPO法人になった方がよいと言えます。
ただし、法人格を取得してから、個人や法人に対して告知し続ける姿勢が欠かせません。何もしていない団体は、寄付も増えていなかった調査結果を見ると、広報・ファンドレイジングの体制づくりも合わせて必要なことがわかります。
これらのことから、寄付を増やすために認定NPO法人の申請をしたい!という団体さんに必要な2つのことの答えは、「経営管理チームづくり」と「広報・ファンドレイジングチームづくり」となります。
ここから先は
記事を読んでくださいましてありがとうございます。少しでもお役に立てれば幸いです。おかげさまで毎回楽しく制作しております。皆さんからの応援があるとさらに励みになりますので、サポートお願いいたします!!