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安全性と透明性の新基準:EUの新たな食品安全規則

2024年11月29日、欧州連合EUは食品安全に関する新たな規則を施行する予定である。
この規則は、食品のトレーサビリティ強化やアレルゲン表示の厳格化を目的としており、食品業界全体に広範な影響を与えると予想される。
日本企業を含む輸出事業者にとっても、対応が求められる重要な内容である。


新規制の背景と目的

EUは、消費者の健康保護と食品供給の安全性向上を目指し、食品安全規制の強化を進めている。
特に、過去の食品事故やアレルギー反応の増加を受け、食品の追跡可能性とアレルゲン情報の明確化が求められてきた。これらの課題に対応するため、新たな規則が導入された。 

トレーサビリティの強化

新規則では、食品の生産から消費までの全過程において、詳細な追跡情報の記録と保存が義務付けられる。
これにより、問題が発生した際の迅速な対応が可能となり、消費者の安全が確保される。
具体的には、各事業者は原材料の供給元、加工・製造工程、流通経路などの情報をデジタル形式で管理し、必要に応じて当局に提供することが求められる。

アレルゲン表示の厳格化

食品ラベルにおけるアレルゲン情報の表示が一層厳格化される。
これにより、消費者は自身の健康状態に応じた適切な食品選択が可能となる。
新規則では、アレルゲン成分を強調表示することや、曖昧な表現の排除が求められる。
例えば、「本製品は○○を含む可能性があります」といった表現は、「本製品には○○が含まれています」という明確な表記に変更される。

米国食品安全強化法(FSMA)との類似点

米国食品医薬品局(FDA)が施行する食品安全強化法(FSMA)とEUの新規制には、以下の類似点がある。

予防的アプローチの強化

FSMAは、食品安全において予防的管理を重視し、事業者に対してハザード分析とリスクに基づく予防管理計画の策定を義務付けている。
EUの新規制も同様に、リスクベースの管理と予防措置の強化を求めている。

トレーサビリティの向上

FSMAでは、食品のサプライチェーン全体での追跡可能性を強化し、問題発生時の迅速な対応を可能にしている。
EUの新規制も、同様の目的でトレーサビリティの強化を図っている。

アレルゲン管理の厳格化

FSMAは、アレルゲン管理を食品安全計画の重要な要素として位置付けている。EUの新規制も、アレルゲン表示の厳格化を通じて、消費者の健康保護を強化している。 

日本企業への影響と対応策

日本からEU市場に製品を輸出する企業は、新規則への対応が不可欠である。
主な影響と対応策は以下のとおりである。

 トレーサビリティシステムの整備

製品の原材料供給元から最終製品までの全工程をデジタル形式で記録・管理するシステムの導入が求められる。
これにより、問題発生時の迅速な対応が可能となる。

ラベル表示の見直し

アレルゲン情報の表示方法をEUの新基準に適合させる必要がある。
具体的には、アレルゲン成分を強調表示し、曖昧な表現を排除することが求められる。

従業員教育の強化

新たな規制に対応するため、従業員への教育やトレーニングを実施し、規制遵守の重要性と具体的な対応策を周知徹底することが重要である。

EU内の責任者の指定

EU市場に製品を供給する際、EU内に設立された経済事業者を責任者として指定し、製品の安全性に関する義務を果たす必要がある。

最後に

EUの新たな食品安全規制は、消費者保護と食品業界の信頼性向上を目的としている。
米国のFSMAと共通する要素も多く、グローバルな食品安全基準の調和が進んでいることが伺える。

日本企業を含む食品業界は、これらの規制に適切に対応することで、持続可能な成長と消費者の信頼確保を実現することが期待される。
これらの対応には時間とコストが伴うが、EU市場でのビジネスを継続・拡大するためには不可欠な取り組みである。
早期の対応が、競争力の維持と消費者の信頼獲得につながる。

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