脳振盪についてのお話
こんにちは。
次は何を書こうかなぁと考えていたところで、ふと思いつきました。
「脳振盪ってどれくらい知られているんだろう?」
実は僕の大学院での研究テーマでもあるのですが、
「脳振盪」っていろいろと考えなければいけないものなんですよ、
という話をしてみたいと思います。
※あくまでも自身の研究の範囲で把握している知識・自身の考えなので誤りなどがある可能性があります。ご了承ください
「脳振盪」って何ぞや?
まず、脳振盪がどういうものか、という話ですが、学術的に言うと
「頭部への直接的な打撃、もしくは身体のその他の部位への打撃による間接的な衝撃によって生じる外傷性脳損傷」
となります
まぁ、なんのことだか伝わらないと思うので簡単に言うと、
「頭とか体とかに衝撃が加わったときに、脳にダメージが加わった状態」
って感じになると思います
何が危ないって、この脳振盪、実は致死リスクもあるんですよ、ってところ
正確に言うと、短期間で二度脳振盪状態になると脳に致命的なダメージが加えられることがあるんです
あと、脳振盪だと思っていたら本当は脳内で出血を起こしていた、なんてことも起きかねません
漫画などでは比較的軽症のように描かれることもある脳振盪なのですが、実は結構危ないスポーツ傷害なんです
「脳振盪」の現状
ここで僕が警鐘を鳴らしたいのは
「選手をそのタイミングで復帰させるの、本当に大丈夫ですか?」
「あなたが今感じている症状、脳振盪じゃないですか?」
ってところ
実は海外の研究では、選手の半数以上が脳振盪を医師やトレーナー、コーチなどに報告していないという研究(Fraas ら, 2014 他)が示されています。
また、一部の選手は各競技団体で定められた脳振盪からの復帰ガイドラインとは異なる復帰をしていることも知られています。
つまり、一部の選手は脳振盪に伴う重症化の危険にさらされているわけです
報告されない理由や不適切な復帰の理由に関しては現在、選手やコーチの知識不足、選手の性格や環境などが原因ではないかと考えられています
しかし、選手が報告したがらない理由については未だ研究が進められている段階であり、特に日本ではその類の研究があまり行われていないため、早急な解明が求められています
その対応、本当に大丈夫ですか?
特にコーチや指導者の方に改めて知っておいていただきたいのですが、
「症状がなくなったから大丈夫」
「意識を失っていないから、軽症だろう」
考えていたりしませんか?
脳振盪は意識を失っていなくても脳にダメージがある可能性もありますし、症状がなくなったからと言って脳振盪からの完全な回復を示すわけでもありません
指導者の方々の考え方が誤っていれば、選手の生命が危険にさらされる可能性もあるわけです
逆に言うと、指導者の方が適切な対応をとることができればリスクを減らすこともできるのです
脳振盪を軽く考えない
また、これは選手の方々に向けてなのですが、
「脳振盪を軽く考えない」
ということを徹底していただきたいと思います。
過去の研究では、脳振盪を報告しない理由の第一位が
「それほど深刻な状態であると考えなかった」
というものであるとされています
つまり、まだまだ選手の脳振盪に関する知識は完全であるとは言えません
選手の方々が試合や練習を続けたい気持ちは痛いほどわかります
でも、脳振盪であると感じたのならすぐに競技をやめてコーチや医師、トレーナーの指示を仰いでほしいのです
脳振盪の危険性から選手を守るには
これはあくまでも持論に過ぎないのですが、脳振盪の危険性から選手を守るには、
・選手が脳振盪であると気づき、報告すること
・周りの人々が気づき、適切な対応をとること
が必要であると思います
そのためにはスポーツにかかわる様々な人にもっと脳振盪について知っておいてもらう必要があるのです。
脳振盪が原因で競技生活を終えたり、生命を落としたりする前に、
どうか脳振盪のことについて考えてみてください