ベトナム式ロックダウン緩和・出口戦略のあり方(5月9日夜現在)
緊急事態宣言が5月いっぱいまで延長された日本、そして今「ロックダウンはしたものの…」と社会をどう日常に戻していくかの模索が、世界各国で進んでいます。そこでは中国や韓国の例が日本では多く紹介されていますが、では我らが(!?)ベトナムはどのようにロックダウン(ベトナム的には「社会隔離」)後の世界を日常に戻していっているのでしょうか?
おさらい:ベトナムはどう抑え込み、社会隔離解除を迎えたか?
ここまで筆者noteを読んで頂いた方はご存知かもしれませんが、この記事アップ時点での最新状況(5月9日夜現在)をおさらいしますと、ベトナム国内の感染者総数は288人、内既に241人が退院、治療中は47人にまで減りました。現在は海外からのベトナム人帰国チャーター便が徐々に到着しているので、その中から感染者が報告されることはありますが、市中感染者は23日連続ゼロということで、国内の感染はほぼ抑えられていると言ってよいでしょう。そして特筆すべきは今のところ死者がゼロということ。これは世界に誇るべき成果だと思います。現在は重篤のイギリス人パイロットの治療のために肺移植が検討され、国の威信をかけての必死の救命が続けられています。
この成果には、強引なまでの徹底した隔離、検査、そして更に隔離との繰り返しが功を奏したとみられており、この点は日本を含めた世界のメディアでも賞賛と共に伝えられているところです。
いよいよ「社会隔離」緩和開始!
4月1日から始まった社会隔離政策に関しては、これまでのnote記事(こちらなど参照)でも書きました。4月15日に一部地域を除いて期限が延長された社会隔離政策ですが、期限ギリギリの22日にハノイ、ホーチミンなど大都市も「高リスク地域」から「リスク有地域」に格下げするということで、もっとも厳しい社会隔離政策、移動制限が緩和されることになりました。
これによりソーシャルディスタンスに気を付けながらも、レストラン、カフェなどが営業を開始できるようになりました。ただ「今日発表、明日適用」という急な政策変更(ベトナムでは通常運転)に、街はすぐには対応できず(笑)。
ただこの段階でも「不要不急」とされた各種娯楽施設、スパなどは営業停止のまま。基調としては「不要不急の外出を控える」まま、ベトナムのゴールデンウイークを迎えることとなります。あくまで慎重に、ゆっくりゆっくりと緩和するようにとの政府の姿勢が伺えました。
緩和ムードで迎えたベトナムのGWでしたが…
そして休日のメチャ少ないベトナムでは貴重なゴールデンウィーク(4月30日の南部解放記念日、5月1日のメーデーを組み合わせた、今年は4連休)に入りました。本来は観光業・サービス業にとって書き入れ時ですが、今年はまだ多くの店が開いていませんでした。海外観光客はほぼゼロ、国内観光客もまだフライトなどが十分回復していない中で期待薄、というわけで多くの店はこの連休まで店を閉めていたようです。ハノイなど都会で働く人々が、とりあえずの生計を守るために田舎に帰ってしまっていたこともあるでしょう。
何とか社会隔離緩和がGWに間に合った形ですが、娯楽施設も開いておらず、賑わうのはカフェとレストランくらい(それでも素晴らしいことですが)。長い移動制限を経て、多くの人は「田舎に帰る」という形でしばらくぶりの遠出を帰省という形で楽しんだようです。筆者一家も公園くらいは行こうかと思いましたが、まだそれも「不要不急」とみなされたのか、開放されていませんでした。連休での急な緩みを許さない、という意思表示もあったのでしょうか。
やっと!学校がついに再開!
そして、多くの市民にとって「待ち望んだ」日が来ました。1月後半のテト旧正月以降ずーっと休校が続いていた学校が、ついに再開したのです。感染者がおらず、元々「低リスク地域」とされていた地方省では4月下旬から、そしてハノイ、ホーチミンなどではGWの連休明けの5月4日から、徐々に学校が再開し始めました。ハノイ含む多くの地域にとっては、3カ月以上振りになります。
もちろん、単に再開ではなく、学校ごとに多くの施策を伴いながらの再開です。検温、マスク、クラス内でのソーシャルディスタンス、学年やクラスごとの交代制登校など、様々な試行錯誤を伴いながらの学校再開です。ただ、既に北部も含めて全国的に「真夏」の陽気となったベトナム全土、その中で「クーラーはダメ、生徒はマスクずっと着用」は現実的ではないとなったのか、クラス内でのマスク着用義務を緩和するガイドラインが保健省から発表されました。これを緩いとみるか、妥当とみるか、今後の様子を見守る必要があります。(とはいえ、子供はずっとマスクしてられないですよね…。)
公共交通、多くのサービス業も本格緩和へ
市中感染報告が最後にあった4月16日以降、20日以上市中感染報告ゼロが続くようになり、更なる緩和が発表されます。公共交通機関が5月7日から乗員制限などが無くなり、マスク着用義務などはあるもののほぼコロナ前にまで戻って来ました。
そして「不要不急」といわれた各種サービス業も、カラオケとディスコは除き再開を許可することが発表されました。これによりかなりの日常生活が元に戻ったことになります。中国のように「アプリで国民全員の一挙手一投足と健康情報を逐一報告」といった派手なIT活用は日常では感じられませんが、それでも一歩一歩着実に開いていっている、と言った印象です。
「ベトナム式抑え込み」の成功から「ベトナム式緩和」へ?それとも油断大敵か?
その抑え込みの徹底ぶりは世界からも賞賛されたベトナム、今後はその社会の緩和のあり方が更なる賞賛を呼べるかどうかが注目されます。ただ、生活者目線で言うと、これまでの制限が相当厳しかっただけに、ハノイ市民も「かなり力が抜け始めているなあ」と言う感じ。写真の通り、混雑するカフェ内でも誰もマスクをするわけでもなく…。まあ23日連続新規感染者ゼロ(市中感染)ともなれば、少しは気が緩むのも無理はありませんが…。
その一方、各国からのベトナム人帰国者を迎えるチャーター便が、徐々に多くの入国者をベトナムに迎える中、その集中管理施設から感染者が報告される事例が続いています。国内が落ち着いただけに今後は特に水際対策が強調されるでしょうから、日本との行き来が自由になるのはまだまだ先になりそうです。
ベトナム的ロックダウン緩和策、出口戦略は始まったばかり。どのような道をたどるかはわかりませんが、かなり歩調を早めて「日常」に戻ってきているのは確実に感じます。一足先に落ち着いた日々と社会・経済を取り戻し、更に「ベトナム式」を見せることができるでしょうか?
11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。