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IMA ニュース 2002年5 月号

モットー:果敢にリスクに挑戦し,素早く結論を出し,新しいビジネスを創出し,日本経済再生に寄与する。

IMA (Institute of Mathematical Analysis:数理解析研究所)ニュースをお届けいたします。

弊研究所における研究開発:洋上高精度 GPS 測位

幣研究所で行っている GPS 関連研究は相互に密接な関連がある。地下 GPS
と洋上高精度 GPS 測位の問題は,一見なんら関係がないように見えるが,ある意味では,ほとんど同じ問題である。火星などの惑星上の問題も含めて,要するに,初期位相不定性をいかに合理的に決定するかに尽きる。洋上高精度 GPS測位の問題に関しては,まだ完全な解答が得られていない。

いわば,暗礁に乗り上げた状態にある。ブレークスルーが必要であるが,長
年この道で頑張ってきた研究者の中から解決策が出るかというと,必ずしもそうとはいえないであろう。彼らの持っている豊富な知識が固定観念となって,逆にブレークスルーの足かせになるのである。筆者はまったく畑違いの分野からの出身者であるから,ある意味でまったく自由に考えられる。そう意味では,かえって有利な立場にあると考えられる。

現在,一つのアイデアを得て,その問題点を精査している段階であるので,
そのうち内容をご報告できると思う。初期位相不定性を決定するアルゴリズムは大変高度に発達していて,理解するだけでも大変である。誤差を含んだ情報の中から,正しい物理量をいかに推定するかという問題であり,数理解析の問題としてはほぼ完成していると言ってよいであろう。しかし,基線長(基準点受信機と観測点受信機の間の距離)が大きくなるとうまくいかないのである。

これは,多分,数理解析理論に問題があるというよりも,この理論の適用範囲の外で適用としているためであろう。

これは細部をどうするかということではなくて,大きな枠組みをどうすべき
かという問題である。筆者はこのようなアプローチの中に本当の解決があると信じている。その上に必要なことは,必ず解決できるはずだとの強い信念を持って,倦まず弛まず努力することであろう。

4月の仕事

(1)高精度 GPS のデータ解析(長基線キネマチック)
(2)地下 GPS 実用化提案(初期位相不定性)
(3)通信変復調基礎理論(Wavelet)のソフト開発
(4)高感度 GPS の実用化作業

5月以降の予定

(1)高精度 GPS のデータ解析(長基線キネマチック)
(2)地下 GPS の実用化提案(初期位相不定性)
(3)通信変復調基礎理論(Wavelet)のソフト開発
(4)ION GPS 2002 シンポジウムへのアブストラクト採否判明
  (9月/ポートランド)
    http://www.ion.org/meetings/meetings.cfm#gps
(5)日本造船学会春季講演会(2002/05/東京)で講演
    http://www.snaj.or.jp/

雑感:日本人のものの考え方

先ごろ小泉総理大臣が春の例大祭中の靖国神社を参詣した。公人として参詣
したのか個人として参詣したのかという質問に対する答えは,内閣総理大臣の小泉純一郎として参詣したとのことである。これが質問に対する答えになっているのか,なっていないのか判然としないが,今回取り上げるのは,これとは別の側面である。

何故,春の例大祭にほとんど予告なく参詣したかというと,昨年,終戦記念
日に戦没者の慰霊のために参詣しようとしたところ,中国,韓国から激しい抗議を受けたためである。抗議の理由は第 2 次大戦の A 級戦犯 13 人が含まれているので,先の大戦で大変な被害を受けた両国としては,納得できないというものであった。

多分,世界の大部分の国や国民は,中国,韓国と同じような考え方をすると
思う。一般の戦没者を慰霊することにはなんら問題はないが,その中に A 級戦犯も含まれることは承服できないということである。理論的には正しくこの通りであるが,日本人は少し違う考え方をするのである。

多分,仏教の影響だと思うが,日本では死んだ人間の罪は問わないと言う暗
黙のルールがある。死んだ時点で,すべての罪過をご破算にして,仏としては同格に扱うのである。この考え方の是非にはいろんな議論があろうが,この考え方が世界的に通用するかというと,かなり疑問がある。むしろ日本独自の考え方のような気がする。

中国や韓国の人から見たら,夏に参詣して抗議されたら,春に参詣するとい
うのは,まったく納得できない。馬鹿にするのもほどがあるということであろう。いつの間にか,何故参詣が好ましくないかという理由が,いつ参詣するかに摩り替わってしまっているのである。

このような誤解を招きやすい日本独自の考え方は,まだ他にもある。酔った
上での行動は,不問に付すというようなものである。海に囲まれた狭い国土に多くの人間が,暮らしてゆくために形成されたものかも知れない。海に囲まれているから,逃げ場がないので,あまり白黒をはっきりできないという側面がある。適当なところで収めて,ともかく和を保つということになる。
日本独自の考え方を大切にすることは必要であるが,他国の不信を招く元に
もなり得るということに,国際化が進んだ今日では大いに留意すべきであろう。

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応用数学の広場|ー色 浩
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