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デザインという枠を、越えて 前編 ーP.K.G.Tokyo × SDGs

本記事を第一弾として始まる、
対話型インタビューマガジン Conceptual dialogues 。

今回は、「サステナブル」について、
3人の「デザイナー」と対談を行いました。

サステナブル、持続可能な社会への実現に向けて、今私たちにできることは何なのか、を考える機会が増えてきたのではないでしょうか。

私たちがふだん、何気なく使ったり、消費したりしている様々なもの。
自動販売機で買うペットボトルの水やお茶、移動手段として利用する自転車や電車、自宅で使う炊飯器や電子レンジ…。
それらは全て、人の手によって作り出され、人の手によって使われます。

消費することの意味、概念について皆が考え始めた今、作り手たちは、どのような想いで、ものづくりに関わっているのか。
それが、知りたくなり、3人のデザイナーにお話を聞いてみることにしました。

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今回、お話を伺ったP.K.G.Tokyoのみなさま。

2017年に天野 和俊さん(写真右)声かけの元、柚山 哲平さん(写真左)、中澤 亜衣さん(写真中央)のデザイナー3人でP.K.G.Tokyoを立ち上げる。
パーパス(存在意義)として「世の中のあらゆる価値をデザインで更新し、世界のすみずみへ届ける」ことを掲げ、デザインはあくまでも”手段であると定義づけている。飲料や食品をはじめとしたパッケージデザインを通して、クライアント、そして消費者へ価値の創造を行っている。

チームを作る理由が、欲しかった。

──デザイナー3人で、P.K.G.Tokyoを立ち上げた経緯を教えてください。

柚山:天野さんとは、独立前に所属していたデザイン会社の先輩後輩です。お互い独立して、別々に経営をしていました。仕事はそれなりに順調だったのですが、個人事務所でやれる範囲の仕事に、物足りなさを感じていたんですよね。そんな時に、天野さんと話す機会があったんです。お互い同じことを感じていたのか「どうしたもんかね」という話になり、何かチームで一緒にやってみようか、という話になった。

天野:そうだったね。

柚山:ただ、これまでと同じことを一緒にやります、ではあまり意味がないと思っていたので、何かひとつのテーマ性を持った上で起業をしたかった。それで考えた時に、二人それぞれがやってきた仕事の共通項の一つが、パッケージデザインだったんです。パッケージデザインは、長い期間評価してもらえるところが良いなと。広告をはじめとした短期間のデザインと違って一過性で終わらない。加えて、専門性のある分野なので、他のデザイナーが参入しづらい。テーマ性を持って起業するときに、その専門性が役に立ちました。

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P.K.G.Tokyoがネーミング・コンセプトから考案した
「UMESHU THE AMBER」。
熟成期間の違うヴィンテージ梅酒3種のセット。年代ごとに梅酒の琥珀色が違い、キラキラと美しく、その魅力を生かした作品にできればと考えた。
Pentawards 2020にてSilver Award、Topawards Asia、日本パッケージデザイン大賞2021銀賞を受賞。

「このままじゃ、いかん」という意識

──そこから、中澤さんがどのように加わったのですか?

柚山:中澤さんは、立ち上げのタイミングでちょうど、イギリスから帰ってきたんだよね。

中澤:イギリスに留学して、1年間、大学院でブランディングを学んできました。以前から知人だった天野さんは、ご自身も欧州に行っていたご経験があり、いろいろと相談に乗ってくださっていました。修士論文のアドバイザーもしてくださって…。それで、日本に帰ってきた時に「食事でも」と誘っていただいた。そこで、柚山さんと一緒にチームを作ることを考えているんだ、と聞きました。

天野:中澤さんは、留学前は大手食料品メーカーのデザイナーだったんです。現場での経験が豊富かつ、海外でブランディングを学んできた中澤さんという強力なパートナーが欲しかった。帰国後の食事の時に「一緒にやらない?」と軽く声をかけました。ですが、メーカーの採用面接を受けていると聞き、「そうか。一緒にやるのは難しいか」なんて思っていた。そしたら、後日「私、辞めました」と中澤さんが言い出した。

中澤:言いましたね。辞めました、と。

柚山:「辞めました」は、就職を?

中澤:そうです。就職活動を辞めましたと。メーカーの仕事は好きだったのですが会社員である以上定年があるし、長期的な視点で自分のデザイナーとしてのキャリアを考えた時に、ずっと現場にいることは難しいのではないかと思いました。天野さんと一緒に新しいことにチャレンジする方が楽しいんじゃないかと思ったんです。

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天野:ここにいる人たちは、そういうところがあるんですよね。人生の選択が、独特というか。笑。普通の人がしないような選択をしている人たちが、集まっている。

──確かに皆さんの共通項としてありますよね。「このままじゃ、いかん」という精神。

中澤:ハハハハハッ。笑。(全員笑う)
柚山:いまだに思ってますもん。

概念までデザインできるか。


──「このままでは、いかん」という精神が流れる皆さんは、サステナブルに対して、どのように考えていますか。

天野:サステナブル=持続可能。このままの仕組みでは、人間社会が持続不可能であるという「気づき」があって、浮かび上がってきたワードなのだと思うのです。ただ、企業活動や経済活動を止めるわけにはいかない。経済と両立しながら、世界が一つになって、みんなで足並みを揃えるために、必要な概念だと思います。

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柚山:SDGsやサステナブルという考え方のいいところは、ちゃんと経済も回していこう、というところですよね。

中澤:私も、3年前に子どもを持ってから、より意識をするようになりましたね。資本主義の形が変わってきていることを感じます。これまで、企業は第一に事業の拡大を目的にしていましたが、社会の為に何ができるのかという視点を、求められるようになってきたように思います。

──デザイナーとして、サステナブルに、どのように関わっていきたいと思いますか。

柚山:サステナブルという考え方は、個人的にはとても良いことだと思いますし、広まって欲しいと思っています。また、デザインがサステナブルという社会の仕組みに、積極的に働きかけていくべきだとも思います。その一方で、デザインだけでは根源的な人類に関わる問題を解決できないのではないか、と懐疑的に思っている部分もあります。

例えば、男性用の口紅のデザインやビジュアルを手がけたとして、これまで異質だと思われていた価値観を「あ、ちょっといいかもな」ぐらいに意識を変化させることは今のデザインの力でもできると思います。それが、ジェンダーレスの一助にはなるかもしれない。だけど、根源的に性差別や偏見そのものをなくしていけるか、ということになると少々疑問です。もっと根本的な解決を望むなら、教育から変えていかなければならない。でもそれはデザインが担う領域とされていないんです。

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天野:でも、そこもデザインが入っていっていい領域じゃないかな。そこまでデザインだと思って、仕事をしている人がどれだけいるのかということですよね。

──サステナブルを契機に、社会からの「デザイナーとは何か」という意識が、変わっていくきっかけを作れるかもしれませんね。

柚山:そうですね。そのために、僕たちは積極的にサステナブルに対して、デザイナーとして考え続けていきたいです。

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後編へ続きます。

取材・文 :大島 有貴
写真:唐 瑞鸿 (MSPG Studio)


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