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通勤読書「虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督」
tvkの年末特番でお馴染みの村瀬秀信さんの「虎の血」を読んだ
村瀬さんは自分と同じベイスターズファン
人間離れした記憶力と軽妙な語りが好きなので
そんな彼がどんな本を書くのか楽しみだった
時代小説の様な禍々しい表紙
古くて汚れた写真には迫力を感じずにいられない
その写真の人物、岸一郎さんがこの本の主役
第8代監督・岸一郎。
1955 (昭和30) 年シーズン、プロ野球経験ゼロの還暦を過ぎたおじいさんが、突然、タイガースの一軍監督に大抜擢されてしまったのだ。
あのタイガースの歴代監督の中に無名の人物が混ざっている
コレは気になる
思ったよりスケールがデカい旅だった
岸監督がなぜ誕生した経緯、どんな人物だったのか?
その時球団はどうなったのか?
村瀬さんの語り口は軽妙なので、笑える話がいっぱいだと思っていたら
それだけでなく、結構ズシンとくる話が出てくる
表紙に負けない迫力の歴史
プロ野球人気が出る前の早慶戦や第1回都市対抗野球、「満州」なんて言葉も出てくる
読んでみると戦前の中国大陸を含めたスケールの大きな舞台を旅するコトになった
甲子園界隈をブラブラするつもりでいたのでビックリ
歴史は"人事"の積み重ねなのかもしれない
なんでこんなズンドコ人事があったんだ?
それにはオーナーの"鶴の一声"だけではない理由があるっぽい
選手を含めた関係者の都合、人間関係が人事の理由になっている
1955年が中心の話なんだけど、ズンドコ人事は今もあるだろう
読み終わった日に楽天の今江監督解任の話題があった
9日の最終戦終了後には「1年間、いろんな学びがあった。来年はしっかりやっていきたい」と来季への意欲を示していた。しかし、2年契約ながら球団から続投要請をされず、契約解除により退団することになった。
きっといろんな理由があるんだろう
人事の結果が新しい人事を生んで歴史になって、今も続いている
その人事のせいで変わってしまうコトもある
岸監督退任までの流れは読んでいて気の毒になるし
退任後の人生に影響がないわけがない
タイガーズだからオモシロオカシク読めるけど
自分が岸監督の立場だったらきっと耐えられないと思う
こういうのが想像できちゃうから
人は他人の人事に関心を持つんだろう
構成に凄みを感じた
ドキュメントなので前半は監督になって解任されるまでが書いてある
事実が面白く時系列に並んでいる感じ
解任された場面が本の中盤くらいだったので、この後どうなるんだ?と心配になった
だけど、その後が熱かった
岸一郎はどんな人物だったのか?の掘り下げが始まる
生い立ちから野球、手紙、人となり
福井から東京を経て、満州、大阪での監督業を終えてまた福井に戻る
日本海の冷たい風が見える様で、松本清張っぽさを感じた
軽妙なんだけど、やってるコトは腰の座った調査で
鋭く冷たく切り取っている様で、村瀬さんのハートが温かい
野球ファンならどのチームを贔屓してても面白く読める本だと思う