“もったいない”は生まれ変われるのか?まだ世の中に知られていないお酒「Who#00004」誕生秘話
”Who”
それは、何とも魅力的で可能性を秘めたこのお酒たち。
私たちIMADEYAが日本全国の生産者を訪問した際に、試験的に造られたり、少量だったりといったさまざまな理由で、まだ世の中で販売されていないお酒たちと出会うことがあります。
まだ誰も知らなくて、とっても魅力的で、そして大きな可能性を秘めたこのお酒たちを、IMADEYAは“Who”と名付け、みなさまのもとへお届けすることにしました。
Who誕生のきっかけはこちらの記事からご覧いただけます。
Whoシリーズ第1弾(#00001)が販売されたのは2022年8月のこと。
そこから、第2段、第3段と続き、いよいよ2024年10月、待望のWho第4弾(#00004)の発売が決定しました!
第4弾の生産者は、蔵王ウッディファーム&ワイナリー。
この1本が私たちのもとにやって来るまで、いったいどんな物語が繰り広げられてきたのか、”Who #00004”誕生秘話をお届けいたします。
蔵王 ウッディファーム&ワイナリー
山形県上山市にある蔵王ウッディファーム&ワイナリー。
創業は1977年。かみのやまの自然環境をテーマに、自社畑のブドウのみを使用したワイン造りを行っています。
ウッディファームさんのワインはこちらからチェック↓↓↓
2022年秋「もったいない」からはじまるストーリー
今回のWhoの主役は、2022年収穫の黒ブドウのカベルネ・ソーヴィニョン。
ただし、通常のカベルネ・ソーヴィニョンとは一味違います。
ウッディファームのカベルネ・ソーヴィニョンの畑面積は1.5ha。
この広大な畑ですくすくと育っていたブドウに異変が起こったのです。
「レーズンみたいになっている・・・!」
黒ブドウのカベルネ・ソーヴィニョンにだけ、房のお尻の方がレーズン状になるという症状が全国のワイナリーで見られるようになっているそう。
そしてウッディファームでも同じく、収穫期が終盤を迎えた秋ごろにブドウたちがレーズン状になっていったのです。
金原さん曰く、「このような現象の原因はいくつかあるんですが、はっきりこれだ!と言えるわけではなく、毎年秋ごろに急にレーズンになっていくんですよね・・・」とのこと。あまりにも、突然です。
ちなみに、インタビュー後、金原さんより、ご参考までに、とワイン手引書の参考文献を送っていただきました。(ご丁寧にありがとうございます!)
毎年そうなるわけではないらしいのですが(実際に2023年はレーズン無し)、今までそうなってしまったブドウは泣く泣く廃棄していたそう。
もちろん広大な畑全部がレーズンになるわけではありませんが、やはりレーズンカベルネは量的にも多く、金原さんはこう思いつきます。
「廃棄予定のレーズンカベルネで、何か違ったワインができるかもしれない・・・!」
そう、この“もったいない”という想いが、Who(#00004)のいのちに小さく光を灯したのです。
やはり手ごわいレーズンカベルネたち
思い立ったが吉日。
まずは、レーズンになった房とそうでない房を分けるというかなり手間のかかる作業からスタートすることにしました。
0.9㏊の畑から採れたレーズンカベルネの量はなんと379kg!
(379kg=グリズリーベア、アメリカバイソン1頭分に相当します)
これだけの量が今ままで捨てられていたなんて・・・なんて大きい数字なんだと金原さんもビックリ。
だがしかし、このレーズンカベルネたち、なかなかのクセモノだったのです。
クセ➀とにかく糖度が高い!
言うならば脱水している状態なのでその分糖度も高くなり、実際にワイナリーで測ったところ、驚異の26~27度の甘さに!
クセ②とても硬い!
レーズンになっているので、ワイナリーのプレス機では恐らく搾汁ができないだろうと思い、茎だけを取り除いて醸すことに。
ただ、そこでも問題が。硬くて櫂入れができない。
とにかく硬くて、全然櫂が入っていきません。
長靴をはいて、足で踏んでみようとしたけどそれでもできないくらいのカッチカチ!
なかなかのクセモノです・・・。
そこで金原さん、前代未聞の工程に挑戦します。
それが・・・・
“逆セニエ”!
なんと、11/7に収穫したプティ・マンサンの果汁を入れることに!
これには、インタビューをしていたIMADEYAスタッフも「ドライレーズン状になったものに別品種の果汁をいれるという事例はないですよね?!」と興味深々。
もともとセニエには「血抜き」という意味がある通り、赤ワインを作るときに、途中で果汁を抜き取るという意味でつかわれるセニエ。
それに対し既に果汁が少ない醪へ別の果汁を足しているので逆セニエと名付けたそう。
※逆セニエという表現は、ウッディファームさんで"遊び心"としてできた名称であり、正式に確立された醸造方法ではございません。
時期的にも、果汁が持っている特性も全てがちょうどよかったプティ・マンサンの果汁が入ったおかげで、櫂は前よりも入りやすくなり、発酵も徐々に促されるようになりました。
それでも「まだまだ発酵するポテンシャルがあったことを覚えています。」とおっしゃるくらい、かなり元気な状態だったそう。
このままだとアルコール度数が15%を超える恐れあり・・・。
そう思い、金原さん、またもや続いて、通常通りに仕込んだカベルネ・ソーヴィニョンと、通常通り仕込んだカベルネ・フランをそれぞれブレンドすることにしました。
あまりにも複雑な工程すぎる・・・!
思いついた金原さん、スゴイ・・・。
秋が過ぎ、冬になり、それでもずっと発酵が終わらない。
不安定で、それでいて元気で・・・。
思い描いていたのとは違う、甘口のロゼができあがってしまうのではないかという不安。
そして、もしかしたらお蔵入りになるかもしれないという緊張感。
(廃棄のブドウを使用したのにそれがお蔵入りなんて!)
不安と緊張の中、秋から冬の終わりまで金原さんはずっと付きっきりでワインを見守ります。
そして、春。日の光が差し込みました。
2023年春 小樽で熟成へ
“逆セニエ”がなんとか功を奏し、元気だった原酒もいつのまにか落ち着いて安定するようになったレーズンカベルネ。
束の間安心。ほっと胸を撫でおろし、いよいよ小樽にお引っ越し。
10カ月間の熟成開始です。
2023年秋 10カ月の時を経て生まれ変わったレーズンカベルネ
10カ月間、3つの季節を樽の中で過ごし、スクスクと育ってきたレーズンカベルネワイン。
(熟成期間中も金原さんは不安で不安で仕方がなかったそう)
金原さんの期待を裏切らず、10カ月の熟成期間中に、圧倒的に成長して帰ってきたのです!
一番の驚きは「安定感」。
だいたいどんなワインであっても、1週間も経てば酸化して違う味になってしまうのですが、今回のレーズンカベルネは1週間が経過しても、ずっと味も香りもほとんど変わらなかったという驚異の安定感を身に付けていたのです!
10カ月間、しっかりと熟成していたんですね・・・・
酒質としてみると、プティ・マンサンを入れる前はほとんど果汁が無い状態で醸されていたので、その段階で酸化しており、ワインになったときに酸化する酒質が、非常に少なくなったのではないか、とのこと。
10月後半の山形は、暖かい日で15度くらいと非常に寒く、生育できる微生物も限定的になっていたということ、そしてレーズンカベルネの糖度が26度と高かったので、生きていける微生物も少なかったころがプラスに働いたのかもしれません。
スゴイ・・・・いろんなことが全部ポジティブに進んでいった結果だったのです!
2024年梅雨 満を持してIMADEYAと出会う
小樽での熟成を経た後は無濾過で瓶詰。
金原さんが長い時間と労力をかけ、造り上げた壮大な1本は、
2024年の梅雨の日、満を持してIMADEYAと出会います。
「金原さんらしいワイン、金原さんしかできない」
そんなワインへと姿を変えた、廃棄寸前だったレーズンカベルネたち。
金原さんの愛と、丹精と技術、そしてブドウのポテンシャルが合わさって生まれた奇跡の1本です。
「あえてするものじゃないなあと思いました(笑)
まずもって、レーズンにならないように栽培するのが一番ですし」
と金原さんは、いたずらっぽく笑いながらこの1年半のワイン造りを振り返ります。
この言葉の重みがどれほどのものなのか、私たちはただ一滴一滴を受け止め飲み干すことでしか想像できません。
名前はないけど、魅力と可能性が詰まったWho(#00004)。
あなたはこの1本に何を感じ、どう名付けますか?
※こちらの商品は、IMADEYA 会員ステージ RUBY・VINTAGEのお客様へ10/10~より優先案内をしております。
(会員ステージ特典についてはこちらをご確認ください)
※一般販売は2024年10月14日(月)開始を予定しております