ペイザナ×とおののどぶろくプロジェクト その2
今回は、前回予告した通り、岩手県遠野市でどぶろくを造る佐々木要太郎さんと、山梨県勝沼でワインを造る、ペイザナ農事組合法人代表であり、ドメーヌ・オヤマダの小山田幸紀さんの対談をお届けいたします。
※敬称略
佐々木要太郎さん(左)と、小山田幸紀さん(右)
佐々木:
うちのどぶろくはどちらで最初に飲まれたんですか?
小山田:
ドメーヌ・オヤマダのワインを取り扱ってくれている仙台のの酒屋さんがとおののどぶろくも取り扱っていて、ワイナリーに送ってくれたんです。ただ、ワイナリーを共同で運営している「ドメーヌ・ポンコツ」の松岡さんが、どぶろくを受け取った後にワインセラーの中で横に保管していて。もちろんどぶろくは吹き出してしまい、送ってくれた酒屋さんにもう1本お願いしました。笑
無事届いたそのどぶろくを飲んだら、今まで飲んだものと全く違って、とても美味しくて、造っている方に会ってみたいなと思って前回(2019年4月)お邪魔しました。
佐々木:
ありがとうございます。そういえば前回来られた時に、2年後にどぶろくを造るためのお米を持ってきます、とおっしゃってましたよね。
小山田:
はい、酒の約束は必ず守るので。笑
実は、前回お邪魔した時に、棚田で、三反ほどの新しい田んぼを借りる予定があったんです。
それまでは食用のお米だけを作っていたのですが、その新しい田んぼでは酒米にチャレンジしようと考えていました。
ただ、前回4月にお邪魔したので、その年のお米は間に合わないと思って2年後に、とお伝えしました。
実質、今年(2020年)初めて新しい田んぼでお米を作ったので、虫が沢山来たり、稗(ひえ)にまみれたりとかなり大変でしたが、何とかここまでたどり着きました。笑
- 佐々木さんは、今まで他の方が栽培したお米でどぶろくを造られたことはありますか?
佐々木:
はい、今も2人の契約農家さんのお米を使わせてもらっています。ただ、条件があって、無農薬・無施肥での自然栽培をお願いしています。
田んぼでは、健全な土が微生物たちのごはんとなり、その微生物たちがまた土を活性化してくれて、健全な循環となります。健全なお米を栽培するためには、まずその元となる土が健全でなければならない。農薬を使ってしまうと、病気だけでなく、本当は必要な微生物も殺してしまうし、肥料を上げると栄養が偏ってしまうし、健全な土にならないんです。
- 佐々木さんも小山田さんも農薬や肥料を使用しない栽培をされていますが、いつからその方法でされていますか?
佐々木:
20年前からお米の栽培を始め、3年目以降はずっと無農薬で栽培しています。
ただ、最初の5年くらいは少なくて、一番少ない時は1反(約100㎡)で30㎏しかお米が採れませんでした。
- 平均収量のほとんど20分の1!
※1反当たりのお米の平均収量は約530kg
佐々木:
こんなに採れないものか、と悲しくなりましたね。笑
5年くらい経つと、1反あたり5俵くらい採れるようになりました。
ただ、やってみて分かったのは、自然栽培のお米は元々の持っている栄養素が少なくて、どぶろくを造る時に米が硬いのでピンと糸を張り巡らしたようにぐーっとゆっくり発酵するんです。自然栽培のお米をどぶろくにする時は、培養酵母を使うよりも、野生酵母で発酵させた方が発酵力が強いですね。
- ブドウの場合は、慣行栽培の場合と、無農薬・無施肥で栽培する場合の違いはありますか?
小山田:
ありますね。直接食べるよりもお酒にするとよく分かります。佐々木さんがおっしゃっている通り、発酵の仕方も全く違いますね。私は使用していませんが、肥料をあげてある程度太らせた方がブドウは香りが出ます。ソーヴィニヨン・ブランのようなアロマティックなブドウは肥料をあげてアロマを出した方がいいと言われています。
- 小山田さんは他の農家さんが慣行栽培をしていた畑を借りてブドウを栽培しているんですよね?
小山田:
はい、そうです。今年も畑を1枚借りました。今まで肥料をあげて沢山実を収穫していたブドウの木を私が剪定すると、今までの半分くらいは枝を落としてしまいます。剪定を厳しくした分、切り落とした枝に行くはずだった栄養分が1本の枝に集中して長くなったり、肥料をあげないので、何年かすると今まで太かったブドウの木がガクッと痩せてきて収量が落ちたりして、5年くらい経ってやっとバランスが取れてきました。
佐々木:
ブドウもバランスが落ち着くまでに5年位掛かるんですね!
先程最初は30kg程度した収穫できなかったとお話しましたが、それは稲が草に負けて稲に栄養がいかないからなんですね。農薬を使わないと稲以外の草もたくさん生えてくるのですが、最初の頃はその様子や収量の少なさを、一緒に働いていた父親と「自然栽培とはこういうもの」と笑っていたのですが、そのうち「何かが違う」と思い始めました。思えばその時は栽培しているのではなく、放置していたんです。
小山田:
草を取るとかなり変わりますよね。
佐々木:
そうですね。あと、肥料を使わずにいると、最初よりも草が減ってきて、除草する回数も減ってきました。
- 肥料が草の栄養にもなっていたということですか?
佐々木:
いいえ、そうではないんです。
僕たちがよく言うのが、「米を勝たせるためのタイミングを見計らう」ということなのですが、それは技術的なことで、遠野で一番遅く田植えをして、一番早く稲刈りをします。20年やってきて、最近はそれに落ち着きましたね。
- 稲刈りのタイミングはコントロールできるのですか?
佐々木:
コントロールはできないのですが、僕たちは桜の木を見て田植えと稲刈りのタイミングを決めています。
これは曾祖母から教わったことなのですが、若い桜と、年老いた桜を見比べてタイミングを決めろと言われています。
- 桜の木を見て、ですか…?
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桜の木と稲がどう関係しているのか?
次回は、そのお話から始めようと思います。