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「田の中で醸す」8代目蔵元が支える伝統と革新/白糸酒造(福岡県糸島市)


はじめに

福岡県糸島市に、全国が注目する老舗酒蔵があります。
「なぜ彼らの日本酒はこんなにも特別なのか?」
その謎に迫るべく、10月初旬、ちょうど酒造りの準備が始まる頃に、チームIMADEYAで蔵を突撃訪問させていただきました。

蔵外観


白糸酒造

白糸酒造は、福岡県糸島市にある169年の歴史を誇る老舗の酒蔵です。創業は安政2年(1855年)、地元の自然と風土を大切にした酒造りを続けています。糸島の米と水を使って、地元の食文化に寄り添う日本酒を提供し、福岡県や糸島の人々から長年愛されてきました。その丁寧な酒造りが全国的にも注目され、近年高い評価を受けています。

8代目蔵元

迎えていただいたのは白糸酒造の顔であり、あの有名銘柄「田中六五(たなかろくじゅうご)」の考案者、8代目蔵元の田中克典(たなか かつのり)さん。とってもシャイな方に見えましたがそれは初対面だからだそう・・?!

蔵元田中さん(左から2番目)


いざ蔵見学へ

早速中に入れていただくと、蔵内に漂うほんのり甘やかな香り、
「プスーーーー・・・」というような、心地よい微かな膨らみを感じる音、薄暗い蔵内に外の光が差し込んでいて、そこに揺らめく白い蒸気がとても幻想的だったのを覚えています。何か生命を感じる温もり・・。
眼の前で異彩を放ち鎮座(と言いたくなる佇まい)していたのは四角い形状の甑(こしき)と呼ばれる大きな蒸篭でした。
訪れた日はちょうど蒸米のタイミングで、蔵内に漂う神々しいもの全てはここから放たれていたのだと理解。
甑といえば一般には円筒形が多いのですが、四角い形状ということで、米を広く均一に広げることができます。それにより蒸気が早く抜け、蒸米がふわりとパラパラに仕上がるそうです。

蒸し上がりの様子は後ほど。

まさに蒸し真っ只


独自の麹作り

こちらの蒸米を一部使って麹を造るわけですが、麹造りにおいて麹菌の活動の肝となるのが 蒸きょう(または蒸米) という米を蒸す工程なのです。 
四角い形状の蒸し器を使用することに加え、米を通常より少なめの100キロほどで仕込むことにより、水分量が少なく、麹菌の活動に適した蒸米に仕上げられます。
米が含む水分量によって麹菌の育成スピードや繁殖の量が決まってきますので、洗米の工程から細心の注意を払いながら、水分量や各工程にかける時間を見極めていきます。
つまりここまでパラパラだと、放冷が早く、麹室での作業時間も大幅に短縮できるため、これが白糸酒造の日本酒に軽やかで柔らかい口当たりをもたらしている秘訣に直結していくのです。

丁寧な搾りの工程と蔵の設備

白糸酒造では、長さ8メートル(!)にも及ぶ一本の太い樫の木を用いて「ハネ木搾り」という非常に昔ながらの手法を採用しています。ここでは上槽(じょうそう)という、醪(もろみ)を搾り、酒と酒粕とに分ける作業を行います。仕組みとしては、一本の木と片側に重りである石を使い、支点、力点、作用点、いわゆるテコの原理によって、醪に圧力をかけ、酒をゆっくりとていねいに搾り出すのです。
ハネ木搾りは重労働で、短時間で搾りきることができる機械より減産となります。しかし、醪を十分に搾りきれない分、雑味成分が出にくい利点があるといいます。そんな滑らかな口当たりが個性として際立ち、経営が厳しい時期もあったそうですが、蔵は根強いファンに支えられてきたのです。

圧巻の8メートルに及ぶ樫の木

ーハネ木搾りは、言わば「古」。「古」はすなわち「個」であり、無比の個性を白糸酒造から生まれる酒に付与する。ただし、今、この瞬間も、1秒経てば過去となるように、その「古」は積み重なっていく。そうやってできた土台の上に、新しき知識や見解が生まれ、蔵に新しい風が吹き込む。
例えば、ハネ木搾りという伝統を守る一方で、これからの未来を見据えたアクションも始まっている。それが、新しく生まれ変わった蔵だ。
蔵というと普通は木造で、見上げれば梁があるような古民家の佇まいを連想する。しかし、2016年に全面改装したそれは、ハネ木搾りが行われる木造部分を残しつつ、そこから連結する空間をRC造によって仕上げたハイブリッドな蔵だ。この新たな場の中には、味を数値化し、データとして把握できる最新のテクノロジーを導入している。
いわば、温故“創”新。
故きをたずね、新しきを創る。それが白糸酒造の、未来に向けた酒造り。ー

(蔵H.P.から引用)

2016年に全面改装したそれは、なんと8年前、弊社代表小倉秀一が訪問したことがきっかけだったというのはこぼれ話・・。
増設した部分はこのような感じ。2階建てのコンパクトに纏まるハイブリットな空間でした。

外からの光を取り入れた明るい室内
貯蔵室
データ解像室
2階からの眺め
新設部の裏側



日本一カッコいい神棚?!

また増築した連結部には、田中さん曰く、日本一カッコいい!と称される神棚があり、欅の木で作られています。中央にはアマテラス大神、左に登り龍、右にくだり龍が彫り込まれており、伝統と信仰の象徴として蔵を見守っています。

蔵内にある神棚


酒米の蒸し上がり

そうこうしているうちに、酒米が蒸し上がったようです!
今回、酒米(この日は糸島産山田錦)の蒸しあがりの瞬間を見られるのは珍しく、見学の貴重なポイントとなりました。
蒸したてのお米は本当にパラパラで、でんぷん質がでてきていない証拠。外は固く中は柔らかい、まさに理想通りの「外硬内軟」の状態です。
噛むと米の甘味がじんわり広がり、蒸しの工程の丁寧さが感じられます。

蒸し上がりの瞬間


「外硬内軟」な蒸米を味見


蒸し上がった米を手作業で丁寧に放冷
放冷後、麹室へ


地元の自然が育むこだわりの原料

糸島市は酒の原料となる米・山田錦の栽培が盛んです。JA糸島によると、全国トップ5規模の生産量がある福岡県内産の約7割が糸島産です。
白糸酒造では、糸島産の酒米「山田錦」や「夢一献」を使用しています。特に看板銘柄である「田中六五」には、地元糸島で栽培された山田錦を使用。蔵元である田中家の名前と、「田んぼに囲まれている中で造った酒」、という意味合いも込め、また米の精米歩合65%にちなんで名付けられました。
また、この地に流れる脊振山系からの中硬水の伏流水はねっとりとした湿り気があり、ミネラルが豊富なよう。こういった要素も米や麹の風味を引き立てる大切な一因と言えそうです。

蔵近く一面に広がる山田錦の田んぼ


おわりに

今回の訪問では地元の自然や文化と深く結びついた酒造りの現場を目の当たりにできました。また、伝統を重んじながらも新しい知識や見解を積み重ねていく、まさに温故“創”新な田中さん。ちょっとヤンチャでクールな風貌からは最初想像できなかったのですが、歴史ある酒蔵をしっかり引き継ぎながら、現代の酒造りにも挑戦され続ける姿は、今回の見学で体感した蒸米のように「外硬内軟」のような方だと感じました。

そんな地の利を生かして造られた白糸酒造の日本酒、店頭で見かけた際にはぜひ手にとってみてください。そしてもし糸島を訪れる機会があれば、白糸酒造を訪ねてみるのも面白いかもしれません。蔵の周りの景色は当に「田中」ですし、蔵の外観からは深い歴史を感じとれます。売店では現地でしか販売していない銘柄も楽しめますよ。


可愛らしい売店入口
最後は田中さんの息子さんとIMADEYAマン^^


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田中六五のお酒が気になったかたはコチラから


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蔵熟成、最古のヴィンテージ ”2015”

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