咲良四季
昔話、残っている記憶
ランダムに選定した言葉の組み合わせから一枚の絵を描き、それに付随した話のようなものを書いています お題に用いる言葉の数は5〜9語 他の絵と言葉が被った場合も重ねて使用しています 更新頻度は今のところ不定期です
曇天の中に去り雪待ちぼうけ
ふわりと香る憂愁の黄
満ち欠ける露に揺られし朝の花
秋の灯に過ぎた故郷言わぬが花ぞ
秋桜後ろ手に揺る暮れの灯のぽっかり浮かぶ朔月なりけり
こがねいろ刈り取られし過去日和見るなり
あの彼岸花には一切の愁などなかった
すぎゆく電車が悲鳴をあげる
頬が痛い。耳が痛い。二月の終わり、私は裸足のまま目に付いた下駄を履き、父の影を辿っていた。かじかんだ足先は感覚がなくなり始めている。 【ーーお掛けになった電話は電波の届かない場所にあるか電源が入っていないためーー】 耳に押し当てたままの向こう側から、無機質な女性の声をもうずっと聞いていた。 父が突然姿を消したのは、冬晴れの土曜日だった。警察から電話があったとうろたえる母から、父の失踪を知らされる。 祖母は仏壇の前に這いつくばってひたすら手を合わせるばかりだった。仰いだ視
陽を飲む垂れ込めた雲冷やる秋の香
あと何回でも同じ月を見たい
ひるがえる節の風に 仕合わせの花を見る
ほころぶ指の間に夏かぜの名残
やわく結んだ花弁から ゆるりと伸びるアサガオの指
慣れた歌詞に初めての声を聴く
たわむ穂に いつかの海を見る