やりたいことも、子どもとの時間も、仕事も。全部叶える方法は親子ワーケーションだった
近年、テレワークが広まってきたとともに注目され始めたワーケーション。ワーケーションとは、「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語で、観光地や帰省先など、自宅以外の場所でリモートワークをする新しい働き方です。
ワーケーションというと、リゾート地で仕事をしたり、ホテルでのんびり仕事したりするイメージ。そのため、時間やお金を自由に使える人しかできない、小さい子がいる自分には無理だ……と思っている方も多いのではないでしょうか。
カミイマイさんは、5歳の息子さんを連れて全国各地を旅をしながら仕事をしています。子どもとの時間も大切にしながら自分のやりたいことを実現してきたカミイさんに、親子ワーケーションについて伺いました。
「子どもが小さいうちはどこも行けないよね」と諦めそうになっているあなたも、毎日仕事場と家の往復だけで息が詰まっているあなたも、親子ワーケーションで新しい働き方を始めてみませんか?
子どもとの時間を大切にしたい
ーーカミイさんは、親子で日本一周しながらお仕事もされているんですよね。
はい。フリーランスとして記事の執筆や、イベントの企画運営・登壇などをしています。フリーランスといっても、クライアントと記事の企画を練ったり、取材や営業に行ったりと、会議や外出の機会も多いため、みなさんが想像するような自由度の高い働き方とは少し違うかもしれません。
ーーなぜ日本一周をすることに?
もともとは息子と海外留学したいと思っていたのですが、新型コロナウイルスの流行により渡航できなくなってしまって。でも、拠点を移しながら生活も仕事もする夢を諦めきれず、まずは国内から始めてみようと思ったのがきっかけです。ただ、日本一周といっても一度にすべて周っているわけではないんですよ。仕事との兼ね合いもあるので、自宅のある東京を拠点に複数回に分けて各地を巡っています。
ーーたしかに、国内ワーケーションならコロナ禍でも実現しやすいですし、日本一周といっても複数回に分けてだと挑戦するハードルは低くなりますね。とはいえ、育児も仕事もしながら全国を転々とするのは大変そう。どうして家族旅行ではなく、ワーケーションという形にしたのでしょうか?
「旅先では仕事はしない!」と思うと、出発までに仕事を終わらせる必要があります。そして、もし終わらなかったら旅行をキャンセルしないといけなくなる可能性も……。その点、ワーケーションなら旅行先で仕事をする前提だから、仕事に左右されずに行きたいときに行けるんです。それなら、日本を一周するような長期間の旅行にもチャレンジできそうだなって。
ーー現在お子さんとふたりで日本中を回っていますが、一人で行くことは考えなかったのですか?
親子で旅行ができる時期って、想像以上に少ないんですよね。小学校が始まると行事や部活動があったり、子ども自身も友達との時間を優先するようになったりして。小学生になる前の今の時期が、親子で旅行できるベストタイミングだと思ったんです。
旅行もしたいし、仕事もしなくちゃいけない。そして子どもとの時間も大事にしたいから、親子ワーケーションのスタイルにしました。
帰りたくなったら途中で帰ってもいい
ーー今でこそ親子で日本一周ワーケーションをしているカミイさんですが、初めての親子ワーケーションはどうでしたか?
息子が2歳のときに青春18きっぷを利用して東京から山梨まで行ったのが、私たち親子の初めてのワーケーションです。
ーーなぜ青春18きっぷで?
もうすぐ期限切れの切符がたまたま余ってたんですよ(笑)。それで行ってみようと思い立って出発しました。それまでも家族で旅行することはありましたが、息子と2人で遠出したのはこれが初めてでしたね。
青春18きっぷで乗る電車は各駅停車だけだから、退屈はするかもしれません。でも、各駅停車だからこそいつでも電車を降りることができる、という安心感はありましたね。行ってみてダメなら、途中で降りればいいって。
ーー無事に宿泊はできたのでしょうか?
はい。山梨県にプラレールが置いてあるゲストハウスがあることを知っていたから、そこに泊まりました。宿の近くには特急列車も通っていたので、ここなら何かあってもすぐ帰れるって安心感もありましたね。
子どもがぐずったり、思うように仕事が進まなかったりして、帰りたくなったら思い切って帰る。親子ワーケーションはそれくらいの気持ちで計画するのがいいと思います。
長期の旅こそ親子ワーケーションに向いている!?
ーー途中で帰る選択肢を持てると気軽に行けそうですね。とはいえ、子どもと一緒だと仕事の時間を確保をするのは難しそうですが……。
ご想像の通り、予定通りに時間を確保しようとするとうまくいかないことも多いです(笑)。
仕事をするのは電車や飛行機など、主に移動時間を使っていました。また、駅や空港には余裕を持って到着するようにして、電車や飛行機の待ち時間でも仕事をしています。そうすると、子どもが一緒でも余裕を持って移動できますよ。
ーー移動時間を有効活用しているのですね。しかし、移動が多いとまとまった時間を確保するのは難しそう。
それなら、2泊や3泊といった短期の旅行よりも、2、3週間などの長期の旅行の方がまとまった時間が確保できますよ。移動が多いと、次の行き先を調べる時間や、宿を手配する時間、先の予定を決める時間など、旅行を計画する時間って意外ととられるもの。でも、長期の旅行でずっと同じ場所に滞在すれば、その分時間に余裕が生まれます。
あとは、子どもが一緒だとどんなに計画を立てても予定通りに事が運ばないことがほとんどなので、ワーケーション中は最低限の仕事だけをすると決めています。
ーー最低限の仕事とは?
私の場合は、旅行先でしかできない取材や、細切れの時間でもできる営業などの業務をやるようにしています。まとまって集中する時間が必要かつ旅行先でなくてもできる執筆などの業務は家に帰ってからしていますね。旅行も仕事も体が資本ですので、やらないことを決めることが大事です。
ーー最初からスムーズに優先順位を決められていたのでしょうか?
いえ、最初は旅行先でも執筆をしていたんです。でも、仕事が計画通りにいかず、ワーケーション中にもやらなければいけない仕事がどんどん積み重なってしまって。子どもと一緒に旅行先にきているのに、私は仕事にかかりきりで、子どもは一日中タブレットを見ている。家にいるのと変わらない状況になってしまいました。
これはまずいぞと思って、そこから仕事のやり方を変えました。それから、子どもと遊びに行く予定を立てている日には締切日のある仕事を避けるようにするなど、少しづつワーケーション中の仕事との付き合い方ができるようになってきたんです。
ーー仕事に集中したいときはどうしていますか?
子どもにタブレットを持たせて、YouTubeやゲームアプリに頼ることが多いです。あとは、現地の駅に売っている珍しいお土産や、その土地ならではの面白いものをプレゼントすると、子どもも喜んでしばらくは夢中で遊んでいますよ。
それでも子どもがぐずるときはあるのですが、そのときは思い切って諦めます(笑)。子どもと一緒に自分も寝たり、おやつを食べたり。無理に仕事を進めようとはしていません。そのためにも、全体的に仕事のスケジュールに余裕はあった方がいいですね。
ーーワーケーション中に取材や営業にも行くとのことですが、お子さんが同席するにはどうしているのでしょうか?
ワーケーション中に仕事に子どもを同席させるのは、遊園地やアミューズメントパークでの仕事など、その場に子どもがいても違和感のないときにしています。同席させるために、そういう場所での仕事をあえて選んでいる面もありますね(笑)。そうでないときは、シッターさんを頼んで預けることもありますよ。
ーー旅行先でのシッターさんはどうやって探していますか?
全国でシッターを探せるサイトがあるので、それを活用しています。私は『キッズライン』を使うことが多いですね。ただ、コストもかかるので利用するのは本当に必要なときだけ。
ーーシッターを使うのを嫌がることは?
私と息子ふたりのときに仕事に集中したい場合は「静かにYouTube見てて」となってしまうので、シッターさんがいる方が喜びますよ。以前、佐賀県でシッターさんに預けたときは、シッターさんが屋内遊園地に連れて行ってくれてとても喜んでいました。
敢えて「子連れ」と絞り込まない
ーー旅先はどのように決めていますか?
基本的には、私の行きたいところに子どもを連れて行っています。特に行きたい場所がないけどワーケーションをしたいときは、目的から旅先を考えるのがおすすめです。子どもに何か体験をさせてあげたいからなのか、旅行したいけど仕事の都合がつかないからなのか、自分が癒されたいからなのか、などですね。
ーーなるほど。目的に応じて旅先が決まったら、次は旅の拠点となる宿探し。しかし、子連れOKの宿泊先を見つけるのが難しい印象です。どのように探せばいいのでしょうか。
「子連れ」「家族向け」などで絞り込むとあまりヒットしないときは、絞り込まずに検索してみるといいですよ。普通の旅行と考えると探しやすいと思います。
私が探すときに気にかけてるのは、清潔であるかどうかです。子どもっていろんなところを触ってしまうので、子どもが触っても大丈夫かどうか、口コミを見て調べています。行きたいルート上にあって、料金が予算内で綺麗であればよし、としています。
ーー予算……。ワーケーションはしたいけど、予算があまりかけられないという人は多そうです……。
予算面で言うと、子どもが未就学児のうちにワーケーションするのがとにかくおすすめです!未就学児は宿泊費だけでなく、バスや電車、新幹線といった交通費もかかりません。ただ、子どもの人数や席の座り方によってはかかる場合もあるので、事前に確認してみてください。
他にも、食事やツアーの活用で費用を抑えられますよ。
ーー食事やツアー?
ワーケーション中は鍋キューブ、カップ麺、パックのご飯を持ち歩いています。キッチン付きの宿で自炊できるときは、コンビニでカット野菜を買って、鍋キューブでかんたん鍋を作ったり、キッチンがないときはパックのご飯とカップ麺ですませたり。毎日外食だと予算オーバーになってしまうので、栄養が偏らない程度に節約ご飯も取り入れています。
また、自治体が運営するワーケーションのモニターツアーを探してみるのもいいですよ。通常より安くツアーに参加できます。ワーケーションよりも、移住を考えているのであれば、お試し住宅やお試し移住を利用するのも一つの手です。
旅先の出会いから人の輪が広がることが楽しい
ーーカミイさんが親子ワーケーションで日本一周しているのは、第二の拠点となる移住先を探すためでもあったと伺っています。なぜ第二の拠点を探そうと思ったのでしょうか?
この先、学校や部活といったコミュニティの中で子どもにとってしんどいことがあったときに、「お母さん東京で仕事してるからごめんね」と我慢をさせて同じ土地に住み続けるか、「合わないのなら違う場所に行こう!」と選択肢を持てるなら、私は後者でありたいんです。選択肢を広げるために拠点を探していて、そのために親子ワーケーションをしています。
ーーワーケーションは、将来の選択肢を増やす手段だったのですね。実際に行ってみて、選択肢が広がっている実感はありますか?
ワーケーションの度に、息子の見ている世界は広がっているはず。息子にとって遠いところへ行くのは当たり前で、それが日常になってきているようです。「北海道、近いよね」というほどです!また、家と保育園の往復だけでは出会えなかった人たちとのたくさんの出会いも、彼の選択肢を広げてくれるんじゃないかなと思っています。
ーーこれから親子ワーケーションをしてみたいと考えている人へアドバイスをお願いします。
親子ワーケーションの魅力はいろいろあります。好きなことも、育児も仕事も諦めずにできること。子どもと一緒の時間を思う存分堪能できること。子どもの世界を広げられること。そして、人の輪が広がることも親子ワーケーションの楽しさだと思っています。
事前に旅行先の地域への移住セミナーにオンラインで参加したり、旅行先で活動している人にSNSでコンタクトをとったりして、旅行先で地元の人と触れ合うこともしてきました。そして、旅行先で出会った人にまた誰かを紹介してもらい、そこから人の輪がどんどん広がっていって。人脈が広がるのは本当に楽しい。
子どもと一緒だからこそ、出会った人の優しさを感じることや、暮らすような旅を楽しむこともできました。親子で経験を共有できることは、親子ワーケーションだからこそできることでもあると思います。
まずは近場から始めてみてください。私たち親子の最初のワーケーションが東京⇔山梨だったように、遠くのリゾート地に行かなくても、近場でも楽しめますから。試してみて、想像以上に大変だと思ったらすぐに帰ってきてもいいんです。ぜひ、親子ワーケーションを気軽に楽しんでみてくださいね。
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ライター 田中亜由美