地域移行の前に、スポーツ文化の改革を
※本記事は2023年3月発行のイマチャレ第6号に掲載されています。
■ 日本の部活動環境は世界と大きく違う
日本の部活動環境は世界的に見れば非常に特殊で、ある意味、異常といって良い。もちろん、部活動環境があったからこそ、全ての生徒が文化スポーツ活動に親しめる機会を安価に提供できてきたことは事実である。日本の教育の素晴らしい側面の一つであろう。一方で、文化スポーツ活動に親しむ機会を提供する目的を超えて、部活動が過熱化してきたことで生じているネガティブな面がある。
■ 日本のスポーツ界の活動量の多さ・オフの少なさ
多くの運動部活動では、週5日(平日4日、 休日 1日)、一年を通して活動をしている(未だにもっと活動量の多い部活も存在しているだろう)。スポーツ庁が示すガイドラインでもこの基準を超えないように定めらている。世界的に見ればこの基準すらも多すぎる。
例えば、プロサッカ ーのスペイン1部に所属するチームの中学生年代チームでは、1回90分・4回/週のトレーニングで、2か月のオフ期間がある(*1)。将来トッププロを目指す選手であってもこの練習量である。これは、中学生年代に、スポーツ以外の時間(家族との時間、勉強、趣味等)を大切にすることが 「子どもたちのため」になるとの考え方からきている。
一方、日本の部活動では、ただスポーツに親しみたい生徒も含めて皆が週5回、1年中練習に参加しなければいけない。練習量が多いことで、本来できたはずの多様な経験の機会が奪われていることや、怪我や精神的消耗のリスクが高くなっていることに気づく必要がある。
*1 佐伯夕利子、教えないスキル、小学館新書
■ 日本のスポーツ界における子どもたちの主体性
本来、部活動は「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」はずのものである。一方で、現在の部活動では、チームの活動方針や活動内容の決定に生徒たちがどれほど主体的に関わっているだろうか。心からその部活動に行くことを楽しみにしている生徒がどのくらいいるだろうか。
部活動の意義を語る時、「教育的効果」が掲げられることが多々ある。現在社会で求められてい る「教育的効果」を考慮すると、指導者の方針にただ従う活動ではなく、生徒同士で意見を出し合いながら、自分たちでチームの方針や活動内容を決めたり、メンバーみんなが楽しめる活動を作っていくことが本当の意味で 「子どもたちのため」になるはずだ。
■「子どもたちのため」をアップデートしよう
終身雇用・年功序列・長時間労働という社会システムに支えられ、世界を驚かせるスピードで経済発展してきたこれまでの日本社会において、従来の部活動の取り組みが教育的効果をもち「子どもたちのため」になっていた側面は確かに あっただろう。 しかしながら、社会が変わるにつれて、何が 「子どもたちのため」になるかも一緒に変わってきている。以下では、これからの時代の「子どもたちのため」を提案する。