デザイナーがユーザーインタビュー運用で生成 AI を活用してみた
くふう AI スタジオのデザイナー imaizumi です。
くふうカンパニーグループは、AI を活用した新しいサービス体験を提供したり、自分たちの業務を効率化したりする取り組みを進めています。
私の所属している 家計簿サービス Zaim をはじめ、各サービスに AI が組み込まれた改善がどんどん行われています。
デザイナー内では生成系 AI を業務にどう取り入れるかの知見交換が頻繁に行われています。例えばこの note のカバー画像の背景イラストも AI で生成してみました。
今回私は AX 推進部の協力の元、ユーザーインタビューに関する業務効率化に取り組んだので、どんな活用方法をしたのかとその結果をご紹介します。
Zaim で行っているユーザーインタビュー
私が関わっている家計簿サービス Zaim では定期的にユーザーインタビューを行っています。
1人ずつユーザーに直接ヒアリングして、ユーザーを理解し、課題や価値観を分析し、サービス改善の施策に活かしています。
今回はユーザーインタビューの運用タスクの中で、すぐにでも AI 活用できそうなところに取り入れてみることにしました。
議事録の作成
議事録の要約
インタビューの分析
実際に AI をどのように活用したのか、その結果どうだったかをご紹介します。
なお、今回紹介する事例は実際のユーザーインタビューではなく架空のものです。実際にはインタビュー結果の中に個人情報が含まれないようにするなどの注意が必要です。
①議事録の作成
AI 活躍度:★★★★☆
結論:文字起こしはほぼ精度良く可能
最初にイメージしやすいインタビューの議事録の作成から。
AX 推進部が提供してくれた音声 AI 基盤の文字起こしツールを利用しました。
インタビューを録画してその内容をアップロードするだけで、文字をテキストデータに起こしてくれます。
音声の書き起こしと、テキスト情報の処理基盤の詳細は AX 推進部の note でご紹介しています。
さらに単語登録ができるので、話し言葉だと「ざいむ」は「財務」に変換されるところ、サービス名の「Zaim」に変換できます。
このままだと改行がなく読みにくい議事録ですが、この文章をさらに AI でインタビューアーとインタビューイに分割して話し手が読みやすくします。
この出力結果を出すためのプロンプトも AX 推進部が書いてくれました。感動!
ここまででインタビューの議事録としては十分だと思います。
強いて言うなら他の文字起こしツールにあるタイムスタンプの作成や、リアルタイム出力もできると良いなと思ったくらいでしょうか。
②議事録を要約する
AI 活躍度:★★★☆☆
結論:現時点では「AI に初稿の要約をさせて、インタビューアーが手直しする」が一番良さそう。
先ほど紹介した文字起こしツールで、議事録の要約も行ってみました。
こちらも AX 推進部の Chatbot ツールを活用し、先ほど生成した議事録のデータを読みやすいようにテーブル形式で要約してもらいます。
要約については得意不得意がありそうだなと思いました。
例えばこのユーザーは「他の家計簿アプリを試したことはあるが、クレジットカード連携などの機能により、家計全体の把握ができたのは Zaim を始めてから」というサービスを利用するきっかけの大事な箇所が要約に入っていません。
サービス開発者としては気になるエピソードでも全体の話の要約としては AI はピックアップしなかったようです。
何度かプロンプトを変えたり他の議事録で試してみましたが、結論としては完全に意図を汲み取って要約を生成するのは難しそうでした。
要約が得意なこと
プロフィールなど事実を答えるのみの設問はそのままでいける
要約が不得意なこと
要約されすぎるとニュアンスが少し変わってしまう
話してた内容の中で感情が盛り上がってるところや重要そうな箇所を見つける
要約を瞬時に生成できるスピードは助かるため、「要約のたたき台を AI に生成してもらい、自分で手直しする」という運用が良さそうです。
③インタビューの分析
AI 活躍度:★★★★★
結果:時間がかかるグルーピング作業がサクッと終わる!
今回のインタビューの分析は KJ 法で行い、最初のグルーピングを AI に仕分けてもらうことをやってみました。
FigJam でインタビューの発話から抽出した情報を一つずつ付箋にし、付箋をまとめてコピペでテキストを出力します。
プロンプト例はこんな感じです。グループの数や偏りの指定などは適宜チューニングします。
普段は付箋一枚一枚の結果を思い出しながら仕分けていたので時間がかかっていた作業が一瞬で終わりました!早い!
これも先ほどの要約と同じく、仕分けた後に確認し手直しは必要ですが、ざっと仕分けてもらえるのは助かります。
また恣意的にまとめようとせず、客観的にまとめてもらえる点も良いなと思いました。例えば自分一人でやると、「同じ人が言っていたから同じグループ」「これがきっと多そうだ」みたいな、結論をつけながら仕分けてしまうことがありました。
AI はテキストの文面通りに読み取って仕分けるので、自分の主観だけにならないところが良かったです。
AI の仕分けは最初のざっとしたグルーピングのまとめだけなので、この後でグループの調整をしたり、分析をしていく作業は自分たちで行いました。
結論:今後どうする?
今回試したインタビュー運用の AI 活用は今後も続けようと思っています。
議事録の文字起こしでテキストデータを生成し、その議事録から要約をまとめ、分析のグルーピングを AI で行う。
ただ、そこから先の分析やサービスにどう活かすかを考えるのは自分自身であるべきだと思いました。
通常の MTG の議事録なら「何を話したのか」が記録として残っていればOKですが、ユーザーインタビューの場合、ユーザーの発話からその背景や感情を読み取って、ユーザーが「本当に欲しいもの」を仮説立てなければいけません。
よくある「顧客に聞いても欲しいものは分からない」「顧客が欲しいと言うものが、本当に欲しいものだとは限らない」をかいくぐる必要があるっていうあるある問題ですね。
そしてその仮説から、課題解釈と自分たちのサービスにおいての解決方法を紐付ける必要があります。
ユーザーニーズを深く理解し、たくさんある選択肢の中から良い解決方法を見出す、ようは「考え尽くす」作業は AI に委ねず自分の頭でやるべきだなと思いました。
要約や仕分けのたたき台を作る作業は AI に任せて時間を短縮し、自分が考える時間を増やすのが良いなと思いました。
次回のインタビュー運用では一番最初のインタビュー設計で AIを活用してみようと考えています。
そんな私たちの取り組みがもっと気になる方は、くふう AI スタジオのマガジンや採用情報をぜひご覧ください。