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カスハラ野郎の言い訳

もし今この瞬間、カスタマーサービスに電話がつながったとしたら、自分は怒りを抑え切れないだろう。最初は冷静に事情を説明し、なるべく感情を表に出さないよう自制する。けれどそのうち口吻が強張り、言葉に震えが混じるのを自覚して、妙に慇懃な相手の応対が癇に障った瞬間、それはきっと爆発する。理性はもろくも決壊し、溜まりに溜まった鬱憤が噴き出すのである。

一昨々日の晩にKindle版の書籍を大量に購入した。「12冊買うと12%ポイント付与」というキャンペーンの口車にいつもながら乗せられ、気になっていたあれこれを選んで、えいやでボタンを押してしまった。

ところがKindleアプリを立ち上げても、買ったばかりの本が一向に出てこない。しばらく待って調べてみたら、購入したコンテンツの一覧に一冊も現れない。慌てて確認した購入履歴には、全部記録が残っているのに。

それから早、2日半が経った。

カスタマーサービスには2度連絡した。チャットを一回、電話でもう一回。どうやら自分だけではなく、広範囲でトラブルが起こっているらしい。旧Twitterを検索すると、ちらほら似たような症状が目に留まる。「まだダウンロードできない」と嘆く自分の呟きに、返事をくれた方もいた。端々に現れる怒りの表現に、ただただうなずいた。

Amazonの担当者によれば、先方は全力で復旧にあたっているという。「直ったら連絡します」というので「どうやって」と尋ねたら、メールで報告してくれるという。自分にできるのは待つことだけである。

一晩明けた1日目は我慢できた。2日目はネットで見かける「同志」の言葉に慰めを見出した。ところがもう3日目である。堪忍袋の緒は風前の灯だ。

こんな状態で再びカスタマーサービスに連絡しようものなら、自分が胸糞の悪いカスハラ野郎に成り下がるのは目に見えている。そもそも、自分にそういう体質があることは薄々勘付いていた。普段の気の弱さを棚に上げ、姿が見えないのをいいことに、下手に出る相手に、ここには書けないような言葉をぶつけてしまうのである。「お客様は神様です」を傘に着て。ちなみに三波春夫の真意は別だったらしいが。

でも一言、いわせてほしい。怒りをぶつけたいのは、もちろん担当者の方ではない。彼ら彼女らの後ろにいる、AmazonとかAppleとか、つまりは巨大企業なのである。

カスタマーサービスに連絡してしばしば感じるのは無力感だ。確かに担当者は自分たちの言葉を聞いてはくれる。しかし、それが具体的なアクションにつながることは、結構稀である。

以前、AppleにMac miniの不具合で連絡したことがあった。モニタを3台繋げているとしばしば調子が悪くなったり、Bluetoothの接続がしょっちゅう途切れるためだった。どちらも仕様からすれば、きちんと動いて然るべき機能である。修理に出し、ケーブルを取り換え、マウスやらキーボードやらを純正品に買い直したりもした。それでも結局、直らなかった。ネットを調べると、どうもよくある不具合らしい。「仕様だ」と強弁されて終わってしまいそうなやつである。

まあ、こういうのは置かれた場所とか機器の相性とか、よくわからないアナログな要素が絡んでいそうで、一概に会社のせいにはできないのかもしれない。でも自分は言いたい。Appleにしろ、Amazonにしろ、株式の時価総額で世界一位を争う存在である。世界最大の企業が、1年で何兆円も稼ぐ会社が、これっぽちの要求に応えられないでどうする?

逆にいえば、世界最大の企業には、世界中からそれこそ何億もの要望が集まるはず。その中で、自分の案件を取り上げてほしいという我儘は、聞き入れられない方が当たり前なんだろう。今回のKindleのトラブルも、これだけ時間がかかるのは、重要度が低いからとしか思えない。それこそKindleユーザー全員に関わる障害だったら、最優先で対処されるはずである。

だから自分はこんな駄文を書き散らかし、読者の気分をいくらか汚して、憂さを晴らすしかないのである。くだを巻いているうちに、問題が嘘のように消えていることを期待して。

と思って見に行ったら、相変わらずダウンロードできない。

ん、待てよ。新しいセールが始まっているじゃないか。河出書房新社の本まであるじゃん!ああ、Amazonさま。セールが終わるまでに、問題を解決してくださいますように。

翌日追記


4日目の朝。依然として症状は変わらず。業を煮やして再度カスタマーサービスに連絡。まだ技術的問題は解決していないとのこと。ただし、本のデータを手作業で送信してもらうことはできるようで、何冊かはそれで読めるようになった。ところが全部解決したわけではなく、まだ8冊分がダウンロードできていない。相変わらず、技術チームが解決するのを待つしかないとの回答。何とか声を(ほとんど)荒げずにやりとりできた。つもり。

こちらに続く

Amazonへの問い合わせ方法

自分の備忘録と、万一このページを見た人にわかるように、Amazonへの問い合わせ方法を残しておく(24年8月現在)。Amazonのページの右下にある「お客様サポート」へ行く。購入したKindle本は、次の画面の購入した商品一覧には出てこないので、「その他のお問い合わせ」で「Kindle、Alexa、その他のAmazonデバイス」を選ぶ。次の画面で「Kindle電子書籍リーダー」を選び、「Kindle電子書籍/_デジタルコンテンツ/コミック」を選び、「Kindleコンテンツの問題」を選ぶ。そうすると下の画面に「カスタマーサービスへ連絡」ボタンが出てくるので押すと、電話(番号を残すとかかって来る)もしくはチャットで連絡が取れる。

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