百年の孤独の所有欲
『百年の孤独』がベストセラーになっている。文庫本になったかららしい。自分も大ファンである。確か3冊目のはずと思いつつ買おうとして愕然とした。Kindle版がないのである。
一体これはどうしたことか。Amazonのレビューで星一つの人が書いていた。「出版社に言いたい!電子書籍が欲しい」。まさに我が意を得たりである。
レビューの人はどうやら手でページを捲ったりしにくい境遇にあるようだ。自分はそうではないが、それでも紙の本は基本買わないようにしている。なぜならば所有欲を満たしたいからである。
「はて?」と思われただろうか。持って触って匂いも嗅げる紙の本こそ所有にふさわしいのではないか?と。
そんなことは全くない。電子のいいところはいつでもどこでも自分のそばにいることである。スマホであれタブレットであれPCであれ、手元に端末さえあればいつでもどこでも呼び出せる。重くて嵩張る紙の本では到底無理な芸当だ。たとえペラペラの文庫本であったとしても。ましてや672ページもあったら、本棚に置きっぱなしになるのが落ちだろう。
自分は好きなコンテンツをいつでも取り出せるようにしたい。だから、千枚ほどあったCDは全部電子化したし、手元に残った本も全て自炊し、書籍しかない場合は購入して、そのままBOOKSCANに送ったりする。『百年の孤独』も、もちろん電子化してある。それでも愛着があるから、PDFよりも融通が効くKindleでも欲しいと思ったのである。
電子化した本の愛好者が、書籍の敵のように思われるのだとしたら、全く持って心外である。むしろ愛はこちらの方が深い。ずっと一緒にいたいんだから。
別の原稿を用意していたところ、思わず筆を取って勢いに任せて書いてしまった。