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飯寿限無(めしじゅげむ)

〇基本寿限無
寿限無じゅげむ 寿限無じゅげむ 
五劫ごこうのすりきれ 
海砂利水魚かいじゃりすいぎょ水行末すいぎょうまつ
雲来末うんらいまつ 風来末ふうらいまつ 
食う寝るところに 住むところ 
やぶらこうじの ぶらこうじ 
パイポ パイポ パイポの シューリンガン 
シューリンガンの グーリンダイ 
グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 
長久命ちょうきゅうめい長助ちょうすけ

〇意味
生まれた子供がいつまでも元気で長生きできるようにと考えて、とにかく「長い」物がいいということでとんでもない名前をつけた、という笑い話。縁起のいい言葉を幾つか紹介され、どれにするか迷った末に全部つけてしまった、という筋の場合もある。
(引用:wilipedia「寿限無」より抜粋)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BF%E9%99%90%E7%84%A1


〇飯寿限無
ジュレ食う ジュレ食う 
ごぼうの筋切すじきれ 
半シャリ鮮魚の修行ライス Uber待つ
つらいマック 旧来きゅうらい待つ
きゅう擦るトロロに 食う豚トロ 
油麹あぶらこうじの ブナしめじ 
半歩 進歩 店舗のチューインガム 
チューインガムの 食い切り大 
紅蓮鯛ぐれんだいの 何箱なんはこピーノ?(アイス) お腹ぽんぽこなーの 
直球うめぇのどうして?

〇意味
料亭で働く男は、自分の店を持つ夢を持っていた。腕を磨く慌ただしい毎日は、彼にとって夢に続く道だと信じていた。ある日には、師匠が作った創作和食のポン酢ジュレを試食する。ある日には、下ごしらえで用意されたごぼうを下処理する。ろくに昼食もとれず、客が残した寿司を隙を見て腹に入れる程度しか男に与えられた時間はないが、うっすらと見える希望の光だけを頼りに体を動かしていた。明日の仕込みを終える頃には、0時を回ることだってざらである。こんな生活をしていた彼の心は知らず知らずのうちに悲鳴を上げていた。現実と夢の境目が無くなり、起きているのか寝ているのか分からない毎日が音を立てながら心を蝕んでいく。ベッドに横になる。抜け殻になった体に、生命維持として何かを口に運ぼうとマクドナルドをUberで頼む。到着までの待ち時間で何度か睡魔に手招きされたが、明日に駒を進ませるのが怖くなって寝るのを断った。そんなやりとりをしていたのが、もう1時間以上前の出来事。彼は夢と現実の狭間でさまよっていたのに気が付き、急いで配達状況を確認するが、画面下のカートのアイコンに未だ注文しきれず放置されたバーガーセットが何事もないように入っていることに気が付いた。何か頭の中でタガが外れる音がした。覚めやらない頭の中、廊下に走り出る。冷蔵庫にある長芋を擦って、焼いた豚トロにかけて口に放り込む。しめじは麹が入った醤油と一緒に炒めてかき込む。なんでもいい、もうどうでもいい気持ちが、食材を飲み込む前に口に物を押し込んでいく。まだ足りない早く進めないと何かがこぼれてしまう感覚だ。気づけば修行することを決めてから絶っていたコンビニに駆け込んでいた。舌が鈍るとやめていたお菓子も、コンビニ飯もひたすらカゴの中に入れて、止まらない衝動に身を任せてみる。あとから考えると、紛れもなく気が触れたトランス状態になっていたと、男はのちに語る。糖分をたっぷり含んだガムを食べながら、家に帰り、鯛飯を食べて、ピノを食べて、食べ続けた。食べ続けて満腹になった彼は不細工に涙を流しながら「あぁうんめぇ…」と小さくこぼした。
次の日、男は料亭を辞めた。どれだけつらくても食事は食べた人に美味しさを感じさせ、そして救ってくれる。技術を磨き自分の中にある扉を開けている感覚から、扉を壁に感じるようになっていた自分に別れを告げ、料理をしたいという気持ちだけで、また始めてみようと歩き始めた。あの出来事から得た美味しさの探求と共に。

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