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さわやかのハンバーグ

炭火レストランさわやかに行くために、静岡に向かった。

わざわざハンバーグを食べるために、県外移動したとなると食事通の雰囲気をまとえるが、さわやかは静岡にしかないから仕方ない。

目的地までの道中、運転している友達が「さわやかはソースをかけずに塩コショウで食べるのが一番うまい」と豪語しているが、その車は高速道路のルートを間違えて進んでいた。

こういうトラブルも、旅を楽しむ調味料なんだぜと、僕を道連れする形で体現してくれるいい友達だ。
目的地までの時間が数十分伸び、ドライブ出来る時間が確保される。道を変えたことから途中の車線規制につかまって、しばらくの渋滞が、会話の時間を作ってくれた。

手料理だったら、奥さんも真っ青な量の調味料を、僕は旅行の序盤からふんだんにかけることになった。この旅行は塩気が強い濃厚な旅になるなと確信した。

さわやかに着くと、さすがの混雑具合で駐車場のこんがり焼けた警備員のお爺さんは「番号札取ったら、また来なさい」と手際よく案内してくれた。なんとなく「困ったら、うちに尋ねてきなさい」と助けてくれる遠縁の親族みたいな温かみを醸し出していたのに、反対側で警備しているお兄さんにトランシーバーを使わず、大声で指示していたところを見ると、自分の当たり前でものを言ってきそうで、お世話になるのは辞めようと思った。

時間になり、中に入るとびっくりドンキーのオリジナリティとファミレスの清潔感を足して2で割ったような内装になっている。これこれーとテンションが上がりながら席に着くと、ちょうど隣のテーブルの夫婦に料理が提供されるところだった。さわやかでは、ハンバーグの最後の仕上げを店員さんがテーブルでしてくれる。その間に多少の会話が出来るのだが、隣のテーブルから店員さんが離婚して、今ここで働いているという重めの会話が聞こえてくる。心の中で、頑張ってね!とASMR並みの声でエールを送った。ちらっと確認すると、大学生くらいに見える若い女性だったので、再度こっからこっから!と野球部風のエールを心の中で送った。

しばらくすると、自分たちの料理を先ほどの女性が届けてくれた。ちらっと見た時には感じれなかった可愛らしい笑顔とアイドル級に乱れないであろう固まった前髪が印象的。一礼してくれる時にも、ふわっと前髪がおでこから浮いて、絶えず毛先が地面を指しているのは、ジャンルでいうと方位磁石と同じ力が働いてるようにもとれなくない。いや、とれないんだけど、とれなくないとしときたい。

あと久しぶりに行ってみて、さわやかは接客がすごい。こんなお礼を言ってくれてたっけ?と思うほど、感謝をされる。会計を済ませた後にも、先ほどの店員さんが見送りしてくれた。本当素晴らしいと思うと同時に、この会社が好きな人は天職だけど、途中で人と触れ合うのが苦手になったらきついだろうなと、誰でもない誰かの心配をして、さわやかを後にした。

そういえば、塩コショウをつけたハンバーグはめっちゃ美味しかった。

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