読書感想文：ムーミン谷の夏まつり

コロナの影響も広がり、より一層ムーミン谷の世界の平和が沁みます。

ムーミン谷の夏まつりの表紙は青い水辺に赤い舞台で、自然いっぱいのイメージとは　ん？と感じましたが、読み進めるとそういうことかと、読み進めるほどに味わい深いストーリーでした。

大水で移り住んだ得体の知れない家が劇場で、劇場を知らないムーミン一家が、劇をやるんです。短くまとめるとカオスだ…うまく言えない。

何にも知らないけどムーミンパパが脚本を書き、芝居を知らないみんなが演技する。パパが書くストーリーもなかなか滅茶苦茶で、更にみんながやりたい放題だから、前日稽古もへんてこなまんまで初日を迎える。えー、大丈夫？って心配になるけどそれでもやっちゃうムーミン谷のみなさん。笑

劇場を知らない人に、演劇をどうやって説明するか。これ、自分だとどう言うかなぁ。昔小さい頃、チャンバラのことを本当にやってると思ってて、斬られる役に選ばれたら人生終わるなぁって怖かったからなぁ。選ばれないように強くならんとって謎な緊張感を感じてたなぁ。笑　親やじいちゃんばあちゃんの冗談を、信じてしまうなんて不覚。

エンマさんは、劇場のことをこんなふうに言ってた。

劇場は、世界で一番、大事なものじゃ。そこへいけば、誰でも自分にどんな生き方ができるか、見ることができる。してみる勇気はのうても、どんなのぞみを持ったら良いか、それからまた、ありのままの自分はどうなのかを見ることができるでのう

ほぉぉぉ。

思わずムーミンママも、教育の施設なのねと言葉にするほど。

すてきな表現です。将来子どもができたらそうやって教えてあげたい。

今大学院でやってるケースメソッドにも通じるなぁ…擬似体験して、自分だったらどうするか考えて、言語化して、ディスカッションして、考えをブラッシュアップさせる。

今まで、小説とかノンフィクションって感受性次第って思ってたし自分の感想を言葉にできなかった。言葉にしたり、自分に引き寄せることが大事なんだなぁ。　最近は人と感想をシェアしたり人の意見読んだり聞いたりするのが好きになった。言葉にできない〜って言いながら夫とぽつりぽつりしゃべるのも好き。

ちょっと長くなってるけど、本作、女心とスナフキンの新たな魅力を知れた、たまらない話でした。

まずはスノークのおじょうさん　

たくさんのドレスを見つけて、ひとしきり舞い上がった後に逆立ちして一言。

少し気を落ち着けないとね。そうしないと、私、しあわせで破裂しちゃうわ。あんまりたくさんありすぎて、、

劇場が水に流されてムーミントロールと一緒に木に取り残されたときに

わたし、あんた（ムーミントロール）にさらわれたってことにしておくわ

この後ムーミントロールに、いつものように前髪とかしてかわいくしてるのがいいよって言葉をかけてもらって落ち着くのが可愛らしい。

ミーサ　

だけど、こんなに泣いてもいい理由があるときには、いちどきに泣いておくの

ミーサ、物語の中じゃ泣いてばかりなメンヘラ感あるけど、私は共感できたなぁ。スノークのお嬢さんに髪型のこと言われたときの傷ついた気持ちも、分かる。自分に自信がないと、こんな思考になるよね。

ミーサがプリマドンナとしていろんな泣きの芝居を続けるってオチがとても好き。自分の好きなことを知れて、本当に良かったね。

そして、スナフキンのファンとしてはまた新たなスナフキンの魅力を知れた一冊です。

ちびのミイとの出会いのシーン

ミイが、「あたい、もうまた眠くなっちゃったわ。いつも、ポケットの中が1番よく眠れるの」と言って寝ようとしたときに、

そうかい。大切なのは、自分のしたいことを、自分で知ってるってことだよ

そう言ってミイをポケットの中にいれてあげる。さすがです！！

24人の行き場のない子どもたちを公園から開放してあげた場面。

さあ、みんな。気楽におやり！好きな場所に行っていいんだよ！

まぁいいや。じゃ、一緒においで。だけど、困ったことになっても僕は知らないぜ。心の中で、（この子たちがお腹を空かしたり、足を濡らしたり、腹痛を起こしたりしたらどうしたものだろうな）と思い悩みながら。

24人の子どもたちにせがまれ劇場に行くことになったとき。劇場に行きたくないの？と子どもの1人に聞かれて、

ものすごく、嬉しいさ。このあまえっ子め。

子どもたちと劇場を見に行って、子どもの1人から怖いよと言われて、

ぼくにつかまってれば、大丈夫だよ。ほらね、今幕があくよ

まさかのスナフキンの父性や面倒見の良さがどばどば感じられるエピソードが。

だけど、土壇場でムーミンママに世話を頼んで自分は警察ヘムルに追われながら小舟で逃げるっていうワイルドさ。

劇の内容がだんだんとリアルに近づいて、リアルなやりとりを劇場で繰り広げるって展開が面白かったなぁ。途中は、この話どうなるの？収拾つかないんじゃ…と変な心配しながらも、ちゃんと落ち着きました。笑

今回も個性豊かなキャラクターから、生き方のサンプルを頂きました！さー、次は冬のお話。楽しみです♡