【書評】ごみ収集の知られざる世界

久しぶりに書く。

今回は書評。

ここ数ヶ月読んだ本の中で、たぶんこれが1番面白かったので(たぶん)。



オリジナルはWEB記事。東洋経済オンラインの連載。巻末にWEB記事とそのURL、本書との対応が丁寧に記されている。


筆者の専門は地方自治・行政学であり、その立場で清掃行政を研究しているとのこと。本文の記述スタイルは学術調であり(新書の中では)、その点で多少好みが別れるかも。個人的にはこの方が好み。ただ、章・節の見出しは、いかにもWEB記事風というか、今風と言うか、かなりフックが強い。編集者の方針だろう。


内容は、とにかくフィールドワーク、インタビュー、フィールドワーク、情報整理(状況記述)。必要な背景知識も端的に要領良く整理して提示されており、知的満足度が高い。この界隈では今何が話題であり、どんなヒト・モノ・コトが注目されているかなど。


全体的感想として、一時も飽きることなく最後まで読み通せた。そして、本書を通じて最近の「ごみ収集の世界」を取り巻く様々な概念とその関係性が、すうっと頭に入った。挙げるときりがないが、「リサイクルボックスとごみ箱の違い」「飛び地、収集効率と連携収集」などなど。ここで知った・解像度の上がった言葉は、ちょっと日常でも使ってみたくなる知ったかしたくなる。ほんとに。


個人的に一番「熱かった」のは、水平リサイクル。自分は辛うじて言葉の存在を知っている程度だった。PETとPE、PP、ABS樹脂、PSは違うものだということそしてどう違うのかという初歩的なことをいまさら知ったり、協栄産業という会社とサントリーが「ボトルtoボトル」リサイクルというものを頑張っていたり。この話題だけで、NHKクローズアップ現代みたいなドキュメンタリーが一本きっと作れる(もしかしたらもうあるのかも)。


「便乗ごみ」、しかも大規模災害時のそれは、ほんとにイカンと思う。こういうとこにDXしてうまく抑止システムを構築できないものか。




ここからは書評としてはおまけ。


ここ2,3年でなんとなく自分の中で「ごみ」に対する関心が全方位的に広がってきた。一番大きい要因は、おそらく、現代アート鑑賞によるものだと思う(環境問題を訴えるテーマの展覧会を見たり、あえて「ごみ」を素材あるいはモチーフにしたアート作品に触れたり)。これが、世の一般の方々の感覚・トレンドとどこまでシンクロしているかは、ちょっと分からない。ジワジワと世の中全体で危機意識当事者意識は高まっているか。


なにかに興味を持つと、関連したモノが自然と目に留まる、そしてさらに興味が強まる。この知的サイクルに、自分にとって「ごみ」が嵌った。そんなこともあり、「ごみ」をテーマにここ1・2年ぐらいで記憶に刻まれたものが結構多い。それをここで整理しておく。それをしたくて今回note書評を書いた点もある。自分的にスッキリするし、ちょこっと誰かの役に立つかもしれず(AIではなく直接ヒトに役立って欲しいものだが)。


★はじめて正面から「ジャンク・アート」を体感した。《ゴミ男》1987年は大竹伸朗の出世作という理解。

2022-23 大竹伸朗展@東京国立近代美術館


★あまりのエレガントさに、番組を見たあと、ずっと、いつか観に行きたい建築一位に鎮座している。

2022.9.24放送 新美の巨人たち
美しきゴミ処理施設!『広島市環境局中工場』


★気楽に手にとったら、物凄く面白かった。この本の中で紹介されてた海外のゴミ山(たしかフィリピン)のヤバさ(風景)は、率直に「ここまでか」とビックリ。

滝沢秀一. すごいゴミのはなし ゴミ清掃員、10年間やってみた。
学研出版, 2022


★今年(2024年)見た展覧会のベスト3の一画。会期中によもや。哀悼。

三島喜美代―未来への記憶@練馬区立美術館




雑記的ですが、お読みいただけましたら、ありがとうございます。


以 上


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何となくUNIX(いしい)
誠にありがとうございます。またこんなトピックで書きますね。