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夏・海・美術館2024 神奈川県立近代美術館と「石田尚志 絵と窓の間」展

先月のことになるが、神奈川県立近代美術館で、「石田尚志 絵と窓の間」展を観てきた。


神奈川県立近代美術館を訪れたのは、今回が初。この美術館が出来たのは戦後まだ日の浅い1951年(スタートはこれから初回する葉山ではなく、鎌倉の方)。日本で最初に近代を名に冠した公立美術館。日本の美術館の中ではトップクラスの古豪。以前より存在は注目していたが、ようやくこの夏(といっても9月も終わり近くだが)、訪れた。

同じ神奈川県にある横浜美術館が、交通の要衝である横浜駅から直ぐなのに対し、この神奈川県立近代美術館があるのは葉山(逗子)と鎌倉。ビジネスの帰りにフラッととはいかない。そのあたりの立地と、「神奈川県立近代美術館」という少しカクカク味を感じる固めのネーミングが、個人的にここをやや遠い存在にさせていた。


今回遠征の背中を押してくれたのは、9/15放送のNHK日曜美術館アートシーン。そこで「石田尚志 絵と窓の間」展を知って。

平面美術をコマ撮りして作ったストップモーション動画の作品。一目見て、ツボ。コンセプトも視覚的な訴求力も、抜群。私はピングーのようなクレイアニメがかなり好きなのだが、純粋アートだとこういう風にやるのかと、感心しきり。色彩やライティング(自然光も人工光も)の絶妙なバランスのうえに成り立つ、センスの塊。

作品の多くは映像もしくはインスタレーションのため、紙の図録では、それらの表現は味わえない。また、石田尚志作品の(動)画集的DVDの類もこれまでのところ制作販売されていないようである(Amazon調べ)(おそらくはそのような形での作品の流通/受容をこの作家は望んでいないとも思う)。ということで、展覧会で、見るしかない。巡回展だが、次は群馬で来年5月。今回を逃すとかなりの間おあずけになる。いま葉山(逗子)でやってるのを、逃したくない。


ということで、会期終了間際になんとか、観てきた。

9/28までの展覧会を、9/15の放送で紹介って、リードタイムキツイ。。


そして感想。めっちゃよかった。展覧会も美術館も。タイミングよく天気にも恵まれ、「海と山に臨む美術館」(※自作即興キャッチコピー)も本領を200%発揮。そしてそれと実に良くマッチした作品・展示。今年一番の展覧会の神様が降り立った日だった。




前置きが長くなったが、ここから本題。写真で美術館と展覧会を紹介する。私にとって初めて訪れた美術館だったため、美術館と展覧会両方のレポートとなる。

記事公開時点ですでに展覧会が終わっている点、申し訳ない。興味を持たれたら、以下の巡回予定を来年のカレンダーに書き入れておくと良いかと。

【巡回予定】
2025/4/19-6/22 アーツ前橋(群馬・前橋市)
2025/8/8-10/5  高松市美術館(香川・高松市)

https://www.nhk.jp/p/nichibi/ts/3PGYQN55NP/blog/bl/p1okNB33e1/bp/p3OWXrmrX3/ より




▶会場まで

美術館まではJR逗子駅から、もしくは京浜急行線逗子・葉山駅から、路線バスが出てる。京浜急行線ルートで向かった。

駅舎をふりかえる。カマボコ。
初めての人にやさしいサイン
バスの車窓から。たまたま海側に座れた。あっという間に観光気分。
美術館に到着。
車内アナウンスの音量が小さかったので、到着直前はちょっと神経使った。
玄関への動線。神奈川県立近代美術館のシンボルの一つ。実はイサム・ノグチ!
美術館の間取り



▶「石田尚志 絵と窓の間」展


ここから本編

カラフルなこの作品は 072b 《透過光絵巻》
素材はプラスティックフィルムにインク、グアッシュほか とのこと

このタイトルウォール、いろんなアングルで遊び撮りして、面白い。
なかなか会場に入らない変な客を演じてしまった。

ここから場内

まずは、ルール。一番下に注目。水着での入場禁止。さすが葉山。


入場後、最初に目に飛び込んでくる作品
最初の部屋
映像と、その被写体/物理作品
右が左のオリジナル、という認識は意味をなさない。
全体のライティング、左側の映像内の変化。
もうこの時点でゾクゾクくる。

069 《正方形の窓》2015
これが、

このように映像変化していく。

ゾクゾクし、いつまでも観飽きない。


二番目の部屋
照明光と、それを遮るモノと、それによる生じる影。
視覚と空間と美術と光の関係性そのものが、テーマとも読み取れる。

展覧会タイトルにもなっている見どころの一つ
073 《絵と窓の間》2018

下にある注意書きに注目。「ポケモンショック」的なものへの注意喚起。

↓こんな感じで映像が変化していく(変な表現だが)作品
NHK日曜美術館アートシーンで紹介されていた。


暗室での映像鑑賞のあと、一転して明るい部屋へ
ここから作家史的に作品と邂逅する。

001 《バベルの塔》1985
今回の出展で一番古い作品
左上の剥落しかけが、やはり気になる。
自分の中では大竹伸朗的ビ的要素。
剥落あやういため、ガラスケースに収めて展示されている。
さらにクローズアップ。他にもここに注目されてるnote記事があった。
002 《王の入場を待つバベルの塔の二十一階》1988
隣のこれも早期の作品
右上に作家の署名があったので注目。
この作品まできて初め、今回の作家石田尚志の署名を目撃した。
003 《竜が棲み着いたバベルの塔》1989
さらに右隣。これも早期のもの
今回の展覧会の「絵画」の中で一番惹きつけられたのは、これ。
* *
昨年府中市美術で観た諏訪敦の作品が、瞬時に脳裏に浮かんだ。
塗が気になり、細部も飽きることなく観察
今回の作家の作品の特徴の一つに、「ヒトの不在」感があるような気がするが、
例外的にこの作品だけ、「ヒト」が描きこまれている。
作家の自画像だろうか。
これも、良かった。
モネ《印象》を連想した。

この展覧会の目玉
082 《葉山 展示室3bでの新作》2024
会期中ずっと更新して描かれ続る。
現代美術コンセプチュアル大賞2024があったら、これを推したい。

右上の美術館の「出窓」から入ってくるような、あるいは出ていくような。
美術館内の回廊エリア。右のポスターは、同時期開催の鎌倉別館の展覧会。
回廊から中庭への眺め。良い感じで「眼の箸休め」になる。
作家がブレイクした作品、の原画
暗室で《フーガの技法》の上映
ぜひどこかの展覧会場でご覧いただきたい。
ほぼ最後の展示。作家の幼いころの作品
ここまで張り詰めた雰囲気の作品に浸され続けているので、心がやすらぐ


そして会場をループし、再び最初に目にした入り口の作品のもとへ。
モノは同じでも、違って見える。



▶《神奈川県立近代美術館葉山を散策》

展覧会会場を出た後、帰りの路線バスまでの時間、美術館の敷地を散策。

これがまた結構な見どころで、この部分の鑑賞時間を見込んでおらず、
駆け足となってしまったことが悔やまれる。

何気ないオブジェ。さりげなく李禹煥作。
あとでそのことに気づき、もう少しじっくり見ておけばば良かったと後悔。
他にも結構屋外作品があったのだが、紹介しきれない。。。

海に臨む

山に臨む


* * *
この展覧会終了後、半年間、改修工事で展示室は閉鎖。
帰宅して資料・情報整理する中で気づいた。
今回なにかと時間いっぱい・盛り沢山・ギリギリ滑り込みな鑑賞だった。


実はこの日、この後、神奈川県立近代美術館鎌倉別館の方も回った。
ここまで足を延ばしたなら、1日で両方を攻略したかったので。
そっちは、また次の記事にする。


今回、展覧会も美術館も、まだまだ書き足りない。
ほんとに素晴らしかった。



以 上


誠にありがとうございます。またこんなトピックで書きますね。