【映画】エスター ファーストキル観た?
みんな、『エスター ファースト・キル』観ましたか?
最近映画が配信に来るのが早くて早くてびっくりしますね。
有難いことなんだけどさ。
ガッツリあらすじとかは書いてないですがネタバレしているので気になる方はここから下、気を付けてね。
ていうか、面白いから是非観てね。
前日譚になるので、前作を観ていなくても一応見られるけど、折角だからどっちも観ようぜ!アマプラにあるし!
まず、この映画で一番良かった点は
エスターの人間味を感じられたこと
エスターの人となりを垣間見られたこと
だと思う。
前作だと用意周到で不気味な少女という印象で(途中からめっちゃ肉体派ゴリラになるけど)人物像や何を考えているか、という所まで思考が踏み込む前に『サイコな殺人鬼』になってしまったエスター。
人物というより舞台装置に近いです。
今作だと、結構ポンコツというか、爪が甘いというか、結構ポカやらかしていることが多くて親近感が湧きます。
エスターを隔離している診療病棟の先生が彼女のことを「あいつは一級の詐欺師だ…決して騙されるな…」とか言ったりするんですが、
序盤から結構やらかしていて、
(着替えた直後に人をボコボコにしてまた血だらけになる、飼っているインコを間違える、もう亡くなってる祖母の写真を見て「早く会いたい」と言っちゃったりする、などなど…)
「なんか、結構苦労してたんだな……」という気持ちになります。
しくじった~!と一人でじたばたしたり、部屋で母親と話す練習をしてみたり…生き抜くために頑張ってたんだなぁと少し同情してしまうというか。
2つ目に面白い点が本物のエスターの母親とその息子の真の顔でしょうか。
あと初見で一番びっくりするのがこのエスターのお母さんと息子でしょうね…。
なんか最近、ヤバイ奴にはヤバイ奴をぶつけろ!みたいな、貞子vs伽耶子!みたいな映画が一定数出てきておもろいです。
被害者が真っ当な被害者ではなく、加害者の要素もあるというか。(ドント・ブリーズ2とか)
こういう構造だと共犯だったり共存関係になったりして話が複雑になって面白いですよね。
今回は、このお母さんが劇ヤバだったことが、エスターに対して理解を示す一因になったのかなぁとも思います。
私個人の考えだと、
自分の異常性を知っている
自分を悪人だと認知している
その上で、
でも自由になりたいから逃げる
という選択をとっているエスターに対し、
家柄や己の生活を守るため、
息子が娘を殺してしまった事実を隠蔽し、
その上自分を正しい、マトモだと思って行動しているお母さん だと
後者のお母さんの方がヤバの要素が大きいと感じてしまったから、私はエスター側にちょっと肩入れして観てしまってたんですよね。
息子の方も最初から感じ悪いな😡と思っていたけど、予想以上に腐れ外道で……
人が集まるパーティーでエスターを理想の娘として登場させるべく
「あなたは幸せな子供なの」
「好きな色は?ピンク、でしょ?」
とやっているお母さんを見ていると、
「本物のエスター、もし生きてても不幸じゃん…」となるし、余計にお母さん側にヘイトが溜まっていきます。
なんというか、エスター側の求めているものが、かなり原始的というか、『自分が幸せになりたいから求めているもの』なのに対して、
お母さん側の行動は保身だったり、周りを巻き込んでコントロールしたり支配したりしているから、余計に私の中では心象が悪くて……
そうなんです…
エスターは、
・閉じ込められたりするのは嫌
・自分を理解し愛してくれる人が欲しい
という、要約してしまえば
「幸せになりたい」という願望を持って動いていて、
それは理解出来るな…と私は感じてしまう。
いや、勿論エスターは悪いんだけどさ、普通に関係のない人間も殺しまくっているし……。
でも、息子達のパーティーを二階の窓から見ている時とか、口紅塗ってサングラスして煙草を吸って嬉しそうにしている所とかを見ていると、
「あー、エスターは大人の女の人になりたかったんだなぁ…」と何かしんみりしてしまったんですよね。
年頃の男の子達の集まってお酒を飲んだり、恋したり、したかったんだろうなぁ…。
この映画、診療所に来た新任の先生にエスターが子供だと勘違いされる所から始まるんですね。
エスターからすると、こういうのがもうとにかく嫌だったのかなぁ、と……。
外を歩いていても自分を大人だと認識してくれる人はいない。勿論男性にナンパされたり声を掛けられるなんてもっての他。
もしかしたらエスターにも昔、普通に好きな人がいたのかもしれない。思いを打ち明けたら、子供としか思えないって言われたりしたのかもしれない。
それで、自分を構ってくれたり、理解を示して関わってくれる人っていうのが、父性として関わってくれる人、『父親』だったりする。
(子どもを騙って子どもとして接してるエスターが悪いんだけどね)
自分を受け入れてくれた、愛してくれた!だから正体を打ち明ける
→でも向こうは子どもだと思っていたから困惑して逃げていく
→それをエスターは拒絶されたと感じる、
という負のループだったのかなーと。
エスターは過去にも一つ家庭を潰していて、エスターがずっと持っている聖書に男性の写真が一枚入っていることから、その人に恋していたんだろうなぁと分かるんですね。
エスターは『一人の女性として愛されること』だけを結局求めているのかなぁ、と思ったり。
それにしても、、、
『元々攻撃性や加害性が強く、精神疾患だとみなされた人間』が『大人になれない病』を持っていたのか
それとも、
『大人になれない病に理解がない環境で育ち』その結果歪んでしまって『精神疾患に陥った』のか。
『精神疾患』かつ『病』なのか
『病』→『精神疾患』なのかで、
全然違うのよなー、と思う。
正直、下だったのだとしたら、私はちょっと同情してしまうよ。
自分だって同じ立場だったらそうなっていたかも、って思うから。
たとえば、学校なんかで「変」だとか「気持ち悪い」と言われたり、体のことを理由に「一緒にいたくない」と言われて、カッとなって殴ったりしたのが加害の始まりだとしたら…?
大人の見た目になれないことが理由でロクな仕事に就くことが出来ず金銭に困ったのが盗みの始まりだとしたら…?
勿論もっと良い方法、正しい方法があるのは確かだけれど、追い詰められて悪の道を辿ってしまったのかなぁ、と考えられなくもありません。
作中で、エスターは何度も化け物と罵られる場面があるのですね。
それは勿論「死んだ子どもを騙っている人間性」や「家庭に乗り込んでメチャクチャにしたその行為」対して、つまり『エスターの体や存在』ではなく『やったこと』に対して使われているんですが、
もしもエスターが今まで体のことで差別されたり「気持ち悪い」とか「化け物」とか言われてきた過去があったのだとしたら、『自分の行いが悪い』ではなく『自分がこんな体だから迫害されている』と誤って受け取る可能性も否めないなぁと思います。
エスターが
・自由に生きたい
・大人の女性として愛されて生きたい
という事柄だけを理由にこんな事件を起こしているのだとしたら、本当に無意味なことです。
世間一般から一目で「大人扱い」されるのは無理かもしれないけど、自分の周りの人間に「自分はこういう病気でこういう体なんだよね~」と話して、自分の周りの人に「大人扱い」されるのは可能なことですよね。
(現に、世界中にそういう方が沢山いるだろうし…)
自分を「本当の自分」つまり「年齢通りの自分」として扱ってくれる環境を獲得し、大人として愛されることも、可能なことです。
わざわざ人の家庭に踏み込んでまで、手にいれようとするのもではありません。
(ていうか、逆に人の家庭に踏み込んじゃってるから、拒絶されている…)
でも、診療病棟に連れ戻されるのは嫌だという恐れや、短絡的に暴力行為を重ねて罪を重くし、より一層危険人物になって、己を『自由』から遠ざけるっていう負のループと
子どもを騙ったことで、父親という肩書きを持った男性には一時的に愛されたっていう誤った成功体験から、また子供を装って、男性の愛を求めて、っていう負のループ。
二重の負のループに翻弄されながら、これからも同じような事件を起こして罪を重ねていくのかもしんないなぁ…
そう思うと、なんちゅーか、自分で自分の首を絞めているやん…というか、
エスターを可哀相、と思ってしまいます。
もう、パパッと30歳やと明かしな!そんで独身男性を狙いなさいな!!
とお節介オバチャンの気分で口出ししたくなりました。
勿論、こんな仮説とは全然違って、エスターがただただ悪人という可能性もあるけど、ジャン・バルジャンだって初めはパンを盗んだですからね。悪の道に転がり落ちてしまうのって、ほんの些細なきっかけだと思います。
単純な作品の完成度やホラー映画としての評価はきっと前作『エスター』の方が高いんだろうなーとは思うのですが、個人的には今作はとても考えさせられるところが多く好きな映画です。
エスター役は前作から続投された女優さんで、25歳で12歳の少女を演じることになりました。
不自然だという意見もあったようですが、私はあんまり気にならなかったです。大きいカラコン付けてるなーとは思ったけど、人形っぽいぎこちなさというか、ちょっとした不自然さと作り物っぽい嘘くささやわざとらしさが逆に不気味で、よかったように思います。
気になった方はぜひ観てくださいね-。