”正しいこと”を実現するには
こんにちは、戸田です。
日頃から経営への問題意識を高く持っている方でも、企業の変革を自ら牽引し、実現していくことは難しいことです。前回も書いたように、「内圧」のアプローチには限界もあります。
この構図が起きる理由には、「何を言うか」よりも、「誰が言うか」が、変革の流れを生み出したり、逆に止めたりすることに大きく影響するためだと考えられます。
正統性なくして聞く耳持たれず
変革を進めるための最初の問いは、「自分の言うことがどれだけ変革に有効か=正しいか?」ではありません。
そうではなく、「なぜ、あなたの言うことを聞かなければならないのですか?」です。
この問いに応えるためには、自分自身に、変革を進めるだけの役割を担うだけの正統性が求められます。
周りの社員からの信頼や敬意だけでなく、外部のお客様や経営陣からの評価など、あいつの言うことなら聞いておこう、もっと言えば傾聴しようと思ってもらえるかどうか。これがなければ、変革の最初のステップすら突破できません。
もしオーナー企業であれば、後継者としての血筋を有しているだけでも意見が認められることもありますが(良くも悪くも)、特に中途で入った経営者や幹部の場合には、まずもって周りは“様子見”から始まるものです。いきなり変革を訴えたところで、心の底から協力してもらえることは殆どないでしょう。
正統性を裏付ける大義名分をどこに置くか
昔の戦国時代であれば、朝廷によるお墨付き、いわゆる錦の御旗を持っている方が「正統」とされました。朝廷そのものに一定の信用の根拠があってこそですが、権威が形骸化した後でも一定期間、武家に上手く利用されてきた背景があります。
それでは、企業において、正統性は何に求められるべきでしょうか。資本主義ですから、朝廷ではなく、一番簡単な答えは資本、すなわち株主になります。シンプルですね。
しかし、社員がそれで納得するかどうかというと別問題です。経営の立場に身を置いたことがある方であれば分かると思いますが、株主/オーナーの方だけを向いて仕事をする“プロ経営者”に人は付いてきません。
企業価値を上げることは、経営における当然のゴールですが、それも結局は「時間軸をどうとらえるか」次第です。たとえば、ある株主の特定期間だけ企業価値を上げても、その間に優秀な次世代の社員が流出してしまえば、その先に持続は期待できないでしょう。
誰もが納得しやすい「その会社だけの歴史」
誰もが納得しやすい、正統性を担保する大義名分を一つ上げるとすれば、「その会社だけの歴史」があります。
創業者は一体どのような想いでこの会社を始めたのか。どのような変遷をたどって今の経営や事業の在り方に至ったのか。時代は変わっても、この会社の歴史から読み取れる「変わらない本質」は何か。
正統性を、自社固有の歴史に求めることによって、失われつつあるものの危機感を訴えることや、これからの時代の変化においても「本質を堅持した変革」を訴えることが可能になります。
このような正統性の担保、正統性を付与するための大義名分に拠ってこそ、初めて「では、どのように変革すべきか」に耳を傾けてもらえる、入口に立てるのだと思います。
本日は、以上です。
TRAIL INC.(トレイル)
経営変革のための伴走パートナーシップ
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