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鍛えるべきはお腹、ほぐすべきは腰?

一般的に「鍛えるべきはお尻や背中」

「ほぐすべきは股関節」といったりします。

なので、筋トレはスクワットやるのがいちばん良い、といわれたりします。

ストレッチは開脚前屈とかです。


実際、スクワットには、

「これやっとけば全身が鍛えられるし、体力つくし」

という安心感があります。

また、身体の柔らかさを見る上で、

股関節の柔らかさを見ると、全身の柔らかさがけっこうわかるような気がします。


だから、それは正しいと思うけど。

私が運動をやり続けて思ったのは、

鍛えるべきはおなか」ということです。

おなかというのは、胸より下の体幹部のインナーマッスル。

横隔膜、腹横筋、腸腰筋、骨盤底筋などの、ローカルマッスルといわれる筋肉があります。

この部分を鍛える(というか使える)と、

運動能力が向上したり、

姿勢が良くなって、ヒップアップしたり、首肩背中がシュッとしたり、

代謝が良くなってラクして痩せやすくなったり、する。

感じがします。

しかし、鍛えるのが難しくて効果を出すのにコツが要るので、ふつうにスクワットやってたほうが無難…な側面もあります。


スクワットを毎日やって、ウォーキングも欠かさない、元気なお年寄りみたいのがいたとしましょう。

歩き方は「オイッチニ!オイッチニ!」という感じです。

体幹部よりも手足が先行してると、手足でかんばってる感が出ます。 

階段を上るときも、前足のももにグッ、グッ、と力を入れて上ります。

歩けないより、元気に歩けてるほうがいいので、これはこれで良い状態といえなくもないです。



一方で、子供の動作を見てみると、

パタパタパタ!って大げさに足音を立てて駆け出したりします。

手足よりも体幹部が先行してると、そういう走り方になる気がします。

お年寄りは足が前に出て、腰が落ちやすい。

子供は体が前に出て、足が後ろに流れやすい。

という傾向があるみたいです。

手足は意識して鍛えやすい(経験的)のに対して、

体幹部は生まれつきで、意識して鍛えにくい(先天的)、感じがします。



スクワットで鍛えられるお尻や背中、は体幹部じゃないの?

というと、体幹部だけど、外側の筋肉なので…

鍛えるよりもリラックスするクセをつけたほうが良い、場合もあるかもです。

お尻(大臀筋、中臀筋)や腰(脊柱起立筋)、腹筋(腹直筋)を固め過ぎると、

鎧のようにガチガチになって、体幹が動けなくなる、恐れもあります。

鍛えちゃダメという意味ではないですが。


「ほぐすべきは股関節」について。

知り合いに開脚前屈を熱心にやってるひとがいました。

そのひとは、股関節は柔らかかったけど、腰が固くて、背骨を丸めるのが苦手でした。

「背中を丸めてみて」というと、腰がまっすぐなまま、深く前屈してしまうのです。

そのせいなのか、腰痛もちで悩んでました。


では、とくにほぐすべきは背骨なのだろうか?

と思いますけど、背骨が固いとは具体的にどういうことなのか、という問題もあります。

①椎間関節の滑走性が失われてる。

②背骨の回りの筋肉が固い。

即座に思いついたのはこれです。

ですが、最近、

胸腰筋膜の固さが、背骨の動作を妨げるのでは?」という可能性を思いつきました。


胸腰筋膜は腰のところにある菱形の大きな筋膜です。

筋膜…広い意味でいうと、「ファシア(膜)」は全身にあります。

内臓の回りにもあるし、脳の硬膜もファシアといえます。

ファシアは特定のつながりをもってて、つながりのことを筋膜ラインといいます。

筋膜ラインは、身体中を路線のように走ってるので、アナトミートレインとかいってたりします。

例えば、スクワットで鍛えられる背中、ハムストリングスのラインを、「スーパーフィシャル(浅層)バックライン」と呼んだりします。

他にもいくつもの筋膜ラインがあります。


身体には「筋膜の中心」というものがあって、それは感覚的にはおなかのへん(丹田)だと思います。

路線図が入り乱れてるなかで、皆がそこにつながってる、ターミナルみたいのです。

おなかのへん、丹田というのは、

重心やバランスも含めた感覚的な中心のことで、この筋肉がそう、この器官がそう、という明確なポイントはないですが……

似た位置で、明確に名前がついてる場所を、胸腰筋膜といいます。

筋膜の中心、胸腰筋膜です。


胸腰筋膜は、前葉・中葉・後葉に分けられます。

胸腰筋膜の前葉・中葉は、腰方形筋、腹横筋などのローカルマッスルにつながってます。

後葉は、お尻と背中全体につながってます。

浅いところでは、大臀筋、広背筋、外腹斜筋、僧帽筋と菱形筋の下部など。

深いところでは、ハムの一部、中臀筋、脊柱起立筋などです。

Wood Jones (1946) 表層または深層を区別しなかったが、後葉が上方へ伸びて頭板状筋を覆うことを説明した
Bogduk & Macintosh (1984) 後葉の表層膜が僧帽筋と菱形筋の下を通過することを発見した。
下方ではPSISに付着し、下後鋸筋の下にある腱膜と大殿筋の起始が融合する。
Barker & Briggs (1999) 後葉が頭板状筋に達する間に、僧帽筋と菱形筋に融合する上層の拡張を述べた。
Barker TLF後葉の表層膜(広背筋腱膜)は、菱形筋を覆うものと連続することにも注目した。

胸腰筋膜の後層(PLF)の機能解剖:広背筋と下後鋸筋 | BPM Function https://bpm-function.com/thoracolumbar-fascia-posterior-layer/


胸腰筋膜は、腹横筋などのおなかのインナーマッスルにつながってる、のが一つ目のポイント。

お尻、背中、の背面の筋肉にもつながってて、ほとんど頭のほうまで伸びてる、のが二つ目のポイントです。

ということは胸腰筋膜は、

おなかに影響するとともに、背骨の全体に影響する、身体の中心的な筋膜、ということになります。


「胸腰筋膜をほぐすことが、身体の全体的な柔軟性を高めることにつながるかもしれない?」

と最近思いました。

可能性の一つとして。

胸腰筋膜を伸ばすには、腰を伸ばしたらいいので、

前屈やったり、ふつうにストレッチしてたら良さそうですが…

腰部で全身を支える丈夫なファシアなので、一度カタマってしまうと簡単にはほぐせない感じもあります。

実際、ストレッチしてるのに腰がゆるまなくて、腰痛で困ってるひとは多いと思います。


筋膜リリースっていうと、フォームローラーをコロコロさせるイメージがわきますね。

腰には胸腰筋膜という、筋膜の親玉みたいなのがあるにも関わらず…

「フォームローラーを腰に使わないで!」とよくいわれてます。

理由は、腰椎を過剰に反らせることで反り腰を悪化させて、腰椎を痛めたり、腰痛を悪化させる恐れがあるからだそうです。

なので、胸腰筋膜をリリースするときには、

腰椎をゴリゴリ刺激したり、反らせたりしないことが求められます。


胸腰筋膜をリリースする方法には、以下のようなものがあるようです。

・腰の皮膚をつまむ。(けっこうガッツリと)

・手や拳で軽く押し込んでから、ズラす。

ズラす方向性も大事で、

「胸腰筋膜はななめに走行してるので、ななめにズラす」という話もあります。

一方向じゃなくて、いろんな方向にズラしてみたらいいのでは、と思います。


私は竹井仁先生の筋膜ストレッチをよくやってましたけど、そのときも重要なのは丹田とか腰と感じました。

丹田をギュッとして末端をキュッと締めると、間の筋膜がピンと張るのです。

とはいえ腰のへんは頑丈なので、ほぐれにくいです。

ふつうのストレッチと併用して、胸腰筋膜のリリースのマッサージもやってみると、よりほぐれやすくなって良いかなと思いました。

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