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〈書評〉みどりいせき

Score(0.1~5):3.9
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thoughts :
フィクションと言い切って仕舞えば、
ブリってる描写も表現の自由に守られて、
でも主人公は知らずかかずったわけで、なんていう倫理的守り。

ジュブナイル、現代版不良遊び。
世のティーンのリアルか言われたら、
嘘と言いたい。
でも一方で、こんな事だってある。
起こりうる。

タコピーの原罪や、チェンソーマン的時代性の切り取り、冷えた目、生活、学校、外、大人、幼馴染、野球、青春、裏っ側のどんつき、が同居する学校、車内、知らない人、親、溜まり場、仲間意識、思春期の自我のキンキンに尖ったアイスピックたるハリネズミとしての僕や君や、誰か、筆箱の中のジョイント、背伸び、無知、あの時と、あの時を引きずったままと、あの時を過去として放りさった人、外、生活、

なんかを感覚的に捉えて、あまりに脆いほろほろの消え去りそうな生命力に時折ギラつかせる言葉の刃先がチッと頬を掠める。

あまりに痛切なありのままのダサさが、
大人になりたいということが、
大人には成れていないということのような、
ありきたりの通過点が、
紫の煙の中に、イリーガルとリーガルのチキンレースと、わけもわからず溜まっていく札束を良心からギブするもスルーされ結局握りしめて飛び出す苦さも、結局は青春なのだ。

青い空は平等に全人類を搾り尽くすし、
CBDでもTHCでもDPAでもAGEでも目には見えないし、世迷かもしれない。

人が人を裁き、
ルールを作り、
誰かによっては都合の良い、
だが決定的に彼らには都合の悪い、
しかしそこに守られているし、
ミットに放られた球が、
ストライクかボールかなんてのは、
野球というルールの中でだけで、
外に行けば、
それは別ルールでは暴力であり、あるいはセックスであり、またあるいは伝達手段であるのかもしれない。

そう、プッツリと切れるこの物語の、
どストレートなSFFが、
がつん股間ぶちかまされ、たまりませんねん。

それはさながら、
深夜の教室の、
あん時を思い出すし、
授業丸々掃除用具入れ入ってて潰したり、
そのあと成功したからクラスメートとハイタッチしたり、
腐った牛乳女子にかけちゃったり、
へんな気管入ったんかなってくらい咳き込んだり、
スタバのマークで隠された乳首の色を補色なら濃いめのピンクだね。なんて言い合ったりする遊びは、もはや過去。

みどりいせきの痛烈な三遊間抜けるゴロが、
魔物使ってレフトトンネルしてランナー返って逆転、みたいな、文学?が、でもやっぱり好きなのですなぁ。秋。

すばる文学賞、三島由紀夫賞受賞作。

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Title : #みどりいせき
Author : #大田ステファニー歓人
Publication year : 2024
Genre : #小説

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