
免許写真変更殴り込み失敗談
結論から言うと
俺は持参した写真を使うことが出来なかった。
今、それをここに記す。
✳︎
免許の写真が嫌いだった。
持ち込みで、換えられる事を知った。
引越ししたから、住所変更のついでだった。
近所の警察署に行った。
ここではできないと仏頂面で返された。
後日、変更が可能な試験場まで、向かった。
ここ数日に比べて、少し汗ばむ陽気だった。
近所ではあるが、あまり歩いたことのない土地だ。
道はひたすらまっすぐの道のりだった。
コンビニで緑茶を買った。
サラリーマンの距離感に苛立ちを覚えた。
途中でメロンソーダのような色をした川が流れていた。
前に歩いていた大学生も、橋の下を身を乗り上げて覗き込んでいた。
スマホを頼りにようやく運転免許試験場についた。
平日とコロナの影響でか人は、少ない。
総合受付で住所と写真を変更したい趣を伝えた。
番号で次へと促された。
書類の記載で、本籍と書かれていてたじろぐ。
覚えてる所までで良い、とのことで
うろ覚えだった地名を書いたら、当たっていた。
受付しては待たされる繰返しが続いた。
4Fで再発行された免許証がもらえるらしい。
長い時間が過ぎるのを、
俺は寝たふりをしてやり過ごしていた。
ようやく自分の番号が呼ばれる。
俺は、受け取ったそいつを見て愕然としたんだ。
そこに写っていたのは、アゴに絆創膏が張り付いた
気怠い表情の、今日の俺自信が写っていたからだ。
思い返せば
記載事項を散々確認された後、
写真撮影に促された。
改めて写真を撮るのか。
今日来たことの証拠にでもするのか。
俺は曲解していた。
言われるがままに流されてしまっていた。
とは言え、
書類にキメた顔の写真が貼ってあれば
わかりそうなものだ。
写真を撮った中年の、男性職員に尋ねた。
何故、この持参した写真を使えなかったものかと。
職員ないし警察官であろう男は、俺に説明をした。
要するに
俺はここまで、写真を変更したいとしか伝えていない。
この写真を使いたいと申告しないと駄目だったそうだ。
あっけにとられた。
✳︎
俺の戦闘力は枯渇していた。
長い待ち時間によって体力を消耗していたからだ。
数年すればまた更新が来る。
俺は帰ることにした。
桜はもう、だいぶ散ってしまっていた。