スタートアップやめてインドで僧侶になった話
サマリ
先日約2年にわたってCOOを務めたスタートアップを退職しました。
スタートアップ業界で凝り固まった考えをほぐすべく、出家するためにインドはナグプールへ向かいました。そこでの経験は日本で形成された価値観をメキメキと剥がしていくことになります…
脱・資本主義
私は2年ほど前にスタートアップを創業し、COOとして売り上げを追う生活をしていました。転売問題を解決するということを目標に、投資家の方々から出資を受けて社会を変えるようなビジネスをしたいと本気で取り組んでいました。社員が増えて、売り上げや株価が上がっていくことが喜びでした。
事業は順調に成長していたと思います。
しかし一方で、青天井な売上の目標に追われる営業の日々に違和感を感じ始めていました。自分がやりたいのは本質的な何かを作ったりすることだということにも気づき、退社を決意しました。
自分の考えを尊重してくださったCEOと、理解してくれた社員や投資家の皆様には感謝しかないです。
退社してやることも決めていなかったので、将来どうしようかという漠然とした悩みがありましたが、資本主義ど真ん中だったスタートアップにいたので、全く反対側の世界を知りたいという思いがありました。そんな時に友人からインド仏教の話を聞きます。
インド仏教1億5000万人の頂点、佐々井さん
友人曰く、「インドにて約100万人が集う仏教の式典があり、そこで大改宗式が行われる。そして今のインド仏教徒1億5000万人の最高指導者が佐々井さんという日本人らしい。」といいます。
約8割がヒンドゥー教徒のインドではカースト制度が色濃く残っており、カーストにさえ入れなかった不可触民(ダリット)と呼ばれる人たちは3千年以上にわたって差別されてきました。佐々井さんは彼らがヒンドゥー教から仏教に改宗することで、社会的に解放する運動の中心人物なのです。
剥がれ落ちる常識
この話を聞いてその場で参加することを決意しました。人生初海外です。
インドでは、これまで日本で植え付けられてきた常識が音を立てて崩れ落ちました。
狂犬病だけには気をつけろというのは母の言葉でしたが、空港の中に野良犬がいます。
人が多すぎるし、牛と犬が道路を歩いてるし、交通量多すぎでマリオカートみたいになってるし、永遠にクラクションが鳴り続けてます。
そして水を飲んだらお腹を壊します。
日本で社会課題を解決しようと思ってビジネスをやってきましたが、ここでは歩いてたら課題が見つかります。
生きている宗教
解放運動を最初に始めたアンベードカル博士のお墓はビカビカに飾られていて、お寺も日本でのイメージとは違って公民館みたいな感じでした。仏教って瞑想とかするのかなと思っていましたが、僧侶の方は課題が山積みで瞑想なんてしている暇はないと言っていました。
現地では宗教が生活に密接していて、生きるために必要なインフラになっていることを実感しました。
日本人の僕は珍しいらしく、現地の人からは一緒に写真を撮って欲しいと何度も囲まれたのも面白かったです。有名人扱いでした。
改宗式典会場にはメインステージがあり、パレードの行進や屋台などもあって日本で言うところのフェスみたいな感じでした。
60人くらいの人たちが戒律を読み上げて、15分程度で流れ作業のように改宗していきます。その正面にいるのは生きる伝説、佐々井秀嶺氏です。
日本人の得度式
お忙しい中特別に、日本人だけの得度式を開いてくださいました。(本当にありがとうございます)
20人くらいが日本から得度を受けに来ており、佐々井さんが読み上げてくださる意味のわからないヒンドゥー語の戒律を復唱していきます。
追記:ヒンドゥー語ではなくパーリ語でした。インドの古典語らしいです。
一部通訳してくださって、
・女性関係ダメ
・殺生ダメ
・盗みダメ
などの戒律でした。生きやすくなるための宗教なので、そんなに厳しくなさそうな雰囲気はありましたが、良い僧侶となるためには修行を励まなければなりません。
私も無事に得度することができ、
戒名は「首龍(しゅりゅう)」という名前をいただきました。
東京から来たので、首都の龍ということみたいです。
式典は3日間にわたって行われ、累計100万人は参加していたと思います。(夜の式典に参加できなかったので写真をお借りしました)
後日譚
将来に対して漠然とした悩みを抱えていた僕でしたが、ちっぽけな悩みだったことを認識しました。ただ、人のためになることをしている人たちはかっこいいなと思いました。
グローバルな視点を持てるようになったし、本当に全く知らない世界を体験して、最高に面白かったです。
最後に佐々井さんから頂いた言葉をシェアします。
スタートアップでも仏教でも、何事も「求道する」という精神が重要だことを学べました。
私は今、大学に戻って情報幾何を使ったAIの研究をしていますが、スタートアップに戻っても、今後の人生は「求道する」という精神を軸にしようと思います。
最後に
佐々井さんの活動を多くの人に知ってもらいたいなと思ったのでこのnoteを書きました。
また、インドにてお世話になりましたバンテージの方々、得度をサポートしてくださった小野龍光さん、宿を提供してくださったアミットさんを含め、食事を提供してくださった現地の方々、本当にありがとうございました。
必ずいつかお返しができるよう努めます。
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