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社内ニートの向上心

 台風が来ると、体がしんどくなる。何かしんどいなー何かしんどいなーと思っていたら、熱が出た。37.5度。しんどいはずである。風邪や病気などでなくてもこうしてちょくちょく熱が出る体質だ。
 そんな状態だと仕事へ行っても何も出来ない。クライアントとのミーティングは何とかこなし、上司に頼まれたコピーをとって、後は座って空を見つめていた。周りの人は忙しそうに動き回っている。私に与えられるお仕事は大幅に軽減されている。お仕事は半人前もしない癖に、お給料は一人前にもらっている(懲戒行為でもしない限り、お給料は年々上がっていく、古き良き日本企業である)。立派な社内ニートだ。

 双極性障害と診断が下ってからというもの、自分という人間が今までずっとポンコツだった理由が分かった気がして、何でも病気のせいに出来る気がした。肩の荷がおりたとかホッとしたとかよりも、もっと自分の中心に近いところが空洞になったような感じがした。
 自分がこんなにもポンコツなのには何か理由があるに違いないと、割と幼い頃から思っていたので、双極性障害を受け入れるのにそう時間はかからなかった。でも自分が「障害者」のカテゴリーに入るとは思っていなかったし、しかも治る病気ではないし、何より病気に振り回されていた時間は返って来ないし。それなりにショックを受ける自分もおり、病気に甘える自分もおり、な感じで今まで過ごして来た。

 ところが最近、良い薬と出会い、病気の方の影響がミニマイズされて来た。長く夏休みを取ったが、元気いっぱいだった。夏休み明け、しっかりお仕事にも取り組めるのかと期待したが、そうは問屋がおろさなかった。お天気や気圧、眠りの浅さなどが影響して、すぐにしんどくなり、相も変わらぬポンコツなのである。主治医にも相談したが、あまり薬で調整すると、副作用で眠いとか太るとかが出るようになるから、もともとの体質の部分はある程度受け入れるしかない、と言われた。
 つまり、私は病気のせいでポンコツだったワケではない。ポンコツな私が病気になっただけであった。この発見は双極性障害の診断よりショックだった。

 しかも、ちょっとした出来事から、自分の好きな人が、少なくとも自分が期待するような程度では私に興味を持っていないことが分かり、そのことでも少なからず悲しみを覚えた。年齢のこともあるし、さほど期待していたワケではないつもりだが、神様が奇跡を起こしてくれるんじゃあるまいかと非常に他力本願な望みは持っていた。当たる前から砕けてしまった(それでも当たってみろよ、と言いたいところではあるが)。

 こういうショックを受けた時にどうするか、答えは二択のように思える。
① 自分を磨き、望む結果が出るように努力する
② このままの自分を保ち、流されるままに生きる
 ほとんどの人は①のように行動したいと思うのではなかろうか。少なくとも私は志だけは一丁前で、どんな高い山だって、登ろうとすれば、登れるわ、背筋を伸ばして行くわよ!と思いはする。
 一応今年の1月から10kgは痩せたので、ある程度は志通り頑張っているのかも知れない。でも結局ほとんどのところは②になってしまっている。

 私は考えた。さて私はどうしたいのだろう。
 お仕事はどうしていきたいのだろう。短気を起こして辞めると生活に困ってしまうが、大したお仕事もなく社内ニートしていていいのだろうか。
 今、好きな人に興味を持ってもらえない自分なのであれば、興味を持ってもらえるところまで自分を高めたいのだろうか。

 そして私は第3の選択肢があるのではないか、と思い始めた。
③ 歩ける道を歩く
 お仕事が頑張れそうな時は頑張る、頑張れるように最大限体調は整える。好きな人に振り向いてもらえるように自分を磨ける部分は磨く。でもぜいぜい言いながら滝汗かいて高い山を登ることを目標とはしない。それはかっこいいが息切れする。目の前には道がいくつかある。その道の中で自分にも歩ける道を選んで歩く。それは流されて生きることとは違うのではないだろうか。

 ここで大事なことは、自分は自分で選んだ道を歩いているんだ、という自覚ではないだろうか。
 他人がどう言ってくれても自分がこうだ、と思わなければ、他人の言葉は心に沁みて来ない。こんな私にも「可愛いね」と言ってくれる人はたくさんいる。先週などほぼ毎日言われていたのではないだろうか。それでも私自身が自分を可愛いと思えていないから「いやいや…」となってしまって折角の誉め言葉が台無しになってしまう。
「可愛いね」と言われたら、おぉ私はいい道選んで進んでいるみたいだな、と思っておけばいいのではないかと思う。

 ところで先週、とても素敵なお誉めの言葉を頂いた。
「君は、面白いし、頭も良いし、優しくて、お料理上手だ。きっと好きな人もそれに気づけば、君を好きになるよ」
 ぜひ、これは脳内でリフレインして、自分の心に沁み込ませたい。

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