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岡祐輔「地域も自分もガチで変える! 逆転人生の糸島ブランド戦略 税金ドロボーと言われた町役場職員が、日本一のMBA公務員になれたわけ」

岡氏の本を読むのは2冊目、前作の「スーパー公務員直伝! 糸島発公務員のマーケティング力」の中でも、自信を持ちながらもとても控えめな書き方をされていたけれど、「税金ドロボーと言われた町役場職員が」なんて副題は、謙遜し過ぎかなと思った。けれど、多分、相当つらかった「暗黒時代」のエピソードは読むだけでこちらも動悸がしてきそうだった。そこから徐々に前向きになり、努力を積み重ね、徐々に自信をつけ、自分がやるべきことは何かが分かって試行錯誤しつつも実現していく様子は、自治体職員という仕事に希望を与えてくれる感じがした。

中でも一番心に残ったエピソードは、糸島ブランド戦略のため、福岡でのマーケティングを行った際、地元の高校ではなくて、福岡の高校と組むことを決めたことだった。私も地元ではないの?と思ってしまったけれど、やはり岡氏もそのような意見をもらったという。それは地元の教育に貢献することになるから。岡氏は言っている。

しかしそれは副次的な効果であり、「地域の事業者の生産性を上げたい」という本来の目的を見失ってしまう。あくまで「組織は戦略に従う」。

私も5つ目の職場を経験中で、それぞれの職場で得た「視点」をそのまま持っている。一つの事業に対して色んな観点でものを見ることを「これまでの経験を活かしているね」と褒められることもあって感覚が麻痺していた。けれど、全体を見据えつつ、そもそもの目的まではブレてしまってはいけないのだと理解した。それが組織というものなのだ。

また、「職員が政策立案をせずに前例どおりの仕事だけをしていては、地域を衰退に導いているのと同じ」という厳しい言葉もあった。確かに社会状況の変化もあるのに、従前と同じことをやっていては、意味がない。それをどうしていくべきか、ということにマーケティングの手法が活かされるのだと思う。付け加えると、ここまで厳しい言葉を使っているのは、若い頃は前年の書類の踏襲で一人前になってたと思っていた時期もあったそうでその自戒も込めているのではないか?

後半部分に冒頭にも書いた暗黒時代のことが書かれている。正直、その部分に到達するまでは、謙遜しているけれど順風満帆だったんでしょ、と思ってしまったが、相当つらい時期を送ってきたことが分かって身につまされた。でもくじけずに努力して、それをそっと見ていた仲間たちや家族に支えられて、仕事をしながらの大卒資格やMBAの取得をしたのだった。その後、MBAの手法を活かしつつ、糸島ブランドに取り組む際にも、様々な仲間の協力があったという。
全体をさらっと読むだけでも、理論に基づいた戦略を立てることの大切さが実感できるけれど、コラム的に挿入されているMBAミニ講座はとても分かりやすくて、自分の仕事でもこんなことに使ってみようかな、とイメージしやすい内容になっている。九州大学ビジネススクールを修了した後、内示が出るまでは「配属された部署によって、財政や行政改革の部署では財務分析をやったり、窓口のあるところでは生産管理の手法を使って定型業務を効率化したり、教育分野で民間と連携してITを導入するなど、やりたいことを山ほど妄想して、早く現場で力を試したい強い気持ちがありました」と岡氏は書いている。そういうワクワクした気持ちが、このミニ講座に現れているんだろうなと思った。

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