企業と多様な大人の未来を考えよう〜「たよおと」開催報告〜
育児をしながら自分のキャリアを成長させていく人たちが集まるコミュニティikumadoでは、メンバーが自分のやりたいことと社会に必要なことを掛け合わせたイベントを開催しています。
今回は、多様な大人サポートプロジェクト(通称「たよおと」)の第1回オンラインイベントを開催しました。
ikumado多様な大人サポートプロジェクト(通称「たよおと」)とは
「日本社会を生きづらいと感じる大人が業種や年齢の垣根を超えてアイディアを持ち寄り、また持ち帰ることで、寄り添い合える関係性を構築する」ことを活動のミッションにしています。
発達障害を持つまたは傾向のある方で一般就職している人をサポートする方法を共有したり、誰もが得意を活かして能力を発揮する環境づくりのためのアドボカシー活動に取り組みながら、ゆくゆくは企業に活用できる研修コンテンツの開発を目指しています。
イベント発案者のたまかつ(=魂を込めてやりたいこと)
発案者のまゆさんのたまかつは、「誰もが得意を活かして働ける環境をつくる」ことです。
誰しも、得意があり、苦手がある。
これを、よく言われる「ワンオペ」で解決しようとすると、誰しも、苦手を克服し、何でも得意な完璧な人にならねばなりません。それは、実際には、ごく一握りのスーパーパフォーマーのみに適用できることで、多くの人材にとっては無茶振りに過ぎません。
職場における「困った人」の実態調査
今回の第1回たよおとイベントでは、ikumadoメンバーに事前にアンケートを実施しました。その結果、職場における「困った人」の状況が見えてきました。
事前アンケート
こんな「困った人(本人が困っている)」は周りにいませんか?
・ 始業や会議に遅刻することが多い
・ お客さまに失礼なことを言う・失礼な態度をとる
・ 仕事の締め切りに対してルーズ
・ がんばっているはずだが、結果が伴わない
・ 簡易的なミスを何度も繰り返す・ミスに気づかない
・ 指示通りの行動ができない
・ 自分自身の体調不良を周りに言えない
・ 困っていることがあっても周りに伝えられない
・ わからないことに対して周囲に質問しない
・ 日常的に挨拶しない、挨拶をしても返さない
・ 身だしなみ(頭髪、洋服、靴、匂いなど)が整っていない
・ 被害妄想・被害者意識が強い
・ 機嫌の悪さを隠さない・感情の起伏が激しい
・ 面倒な仕事を他の人に丸投げする
・ ネガティブな結果を他人のせいにする
アンケート結果
イベント当日、参加者からも、困った人の具体的な状況についてシェアがありました。興味深いことに、今回の話題提供がきっかけで、参加者のみなさん各自が、自分の得意・苦手、特に苦手な面について認識を新たにしていらっしゃいました。
「困った」人の背景にあるもの
今回のアンケートで回答が多かったものを取り上げて、そのお困りの背景にあると考えられる特性について理解を深めました。
例えば、「簡易的なミスを何度も繰り返す」の背景にはどのような特性があると予測できるでしょうか。今回、まゆさんからは、以下のような指摘があり、認識を改め、特性への理解を深める機会になりました。
・不注意:ミスに気づけない
・脳内多動:次にやること、他のやりたいことが気になって集中していない
・こだわり:自分はそれがよいと思っている
・思い込み:自分では正しいと思っている
・認知のずれ:本来やるべきことを理解していない
他のお困りに関しても、その背景にありそうな特性について、みんなで詳しく考えたり、まゆさんから解説してもらい、終始、「そうなんだ!」「知らなかった!」「知れて良かった!」との感想が上がっていました。
職場の「困った人」のために周りの人ができること
今回のイベントでは、以下の2つのケースについて、もし、そのような人が職場にいたら、どんなことが周りの人にできるか、2チームに分かれてディスカッションしました。
A:簡易的なミスを何度も繰り返す・ミスに気づかない
B:指示通りの行動ができない
それぞれのチームの参加者から、当事者本人の強みが発揮しやすい仕組みや環境整備について、具体的なアイディアを出していただきました。あらかじめ、背景にある特性について理解を深めたことで、新たな視点から発想していただけました。
まゆさんから、オススメの対策を教えていただきました。
今日からでも、みなさんの職場にAまたはBのような人が気になっている際にお試しいただきたいので、以下にイベントスライドの内容をそのままご紹介します。
Aの場合
・ 不注意:ミスに気づけない
別の仕事を任せる、他の人がダブルチェックを行う
・ 脳内多動:次にやること、他のやりたいことが気になって集中していない
「今この時間にやるべきこと」を明示する
・ こだわり:自分はそれがよいと思っている
なぜそれがよいと思うかを聴いたうえで、本来の仕事のやり方がよい理由を論理的に説明する
・ 思い込み:自分では正しいと思っている
なぜそれが正しいと思うかを聴いたうえで、本来の仕事のやり方が正しい理由を論理的に説明する
・ 認知のずれ:本来やるべきことを理解していない
どのように理解しているか確認したうえで、本来やるべきことを視覚的にわかりやすく説明する
Bの場合
指示を書いたものを渡す
・ 不注意:指示をすべて聞いていない、書いたメモをなくしてしまう・過集中:他のことに集中していて、指示を聞いていない
指示を書いたものをメールで送りメールしたことを口頭で伝える、話しかける前に意識を向かせる
・ 衝動性:一部を聞いてはじめてしまう
最初に「最後まで話を聞いてからはじめる」ように伝える、指示を書いたもの
(最初から最後までの流れを見落とさないようなレイアウト)を渡す
・ シングルタスクフォーカス:2つのこと(話を聞く・メモをとる)が同時にできない
まず聴くことに集中してもらい聴き終わってからメモをとらせる、指示を書いたものを渡す
・ 曖昧な表現:指示が具体的でないと理解できない
わからないことがないか都度確認しながら具体的に話す
イベント参加者感想
◎ 一つの困った行動についても、人によって、その背景にある理由は様々あるということが分かりました。
・ 遅刻の原因が多動性である人もいれば、著しい物事へのこだわりが原因の人もいる
・ 机の上に物があると、気が散って集中できなくなる人もいれば、その物に気を取られすぎる(過集中)人もいる
◎ 一言で説明のつかない多様性理解について、まゆさんの解説がとても分かりやすかったです。
◎ 自分にもともとある苦手や得意も特性なんだと分かりました。
◎ 脳内多動というのが自分にも当てはまると認識できました。
◎ 自分が猪突猛進なのは干支のせいではなくて特性だと認識できました。そんな自分をどう扱えばいいのか自分のトリセツにして考えたいです。
◎ 障がいといってもグラデーションなんですね。自分の苦手なこともそのうちのひとつなんだと分かりました。
◎ 何度も同じことやらかしてますが、それって自分の特性が関係しているんですね。
・ 電車でよく乗り越してます。
・ 取説読まないタイプ。
・ 電車逆方向よくやらかしてます。
・ 遅刻、よくやらかしてます。
・ Slackメンション来てるのをどんどん開いているうちに、本来何しにSlack開けようと思ったのか忘れてる。
◎ 夫婦の黒歴史を振り返ってみたら、そこにお互いの特性が関係しているのが見えてきました。
◎ 咄嗟の場合、左右を間違える(左右失認)のはどうしようもないので、口で言いながら指で指すようにしてます。パートナーは理解してくれています。
◎ 視覚優位と聴覚優位ってある。自分は聴くのは得意で、読むのが苦手。
◎ 恐ろしいニュースを見たお子さんが必要以上に怯えてしまうのも特性だと気づけた。(ASDの方に多い。)
◎ むかし、こっちが説明してるのにメモも取らずに、結局指示通りやってくれない人がいて、何でメモ取らないんだろう?と思ったけど、あれって、特性が関係していたのかも。
◎ 診断つくほどではなくても、困った部分をお互いに言いやすい職場は働きやすいと思う。
◎ 普段夫婦や職場で少しずつ工夫しているつもりでしたが、その背景をこんなに深掘りして考えたことはありませんでした!
◎ とっても勉強になりましたし、自分のトリセツのためにもありがたかったです
〈たよおとプロジェクトへの期待〉
◎ 凄いコンテンツ。CQみたいにロールプレイしてみるとよいかも。
◎ 困った人の背景にある理由や特性に関する知識、働きやすい環境づくりのヒントを企業研修コンテンツに。
◎ マニュアルがあっても、使えていない企業が多いように思うので、今日やった具体的なケースについてのワークなど効果的な研修づくりに意義ありそう。
◎ ヘルプシーキング、弱さを見せあえる組織づくりにつながるテーマとして広く関心を寄せてもらえるものにしていきたい。
まとめ
私たちの多くは、職場や家庭に「困った人」がいて、どう関わって良いのか困ることもあるかと思います。自分についても、苦手なことや実は結構意識して頑張らないと上手くいかないことなどがあるかと思います。
今回、職場における「困った人」をテーマに「たよおと(多様な大人サポートプロジェクト)」第1回イベントを開催しました。「困った人」に対して、周りの人はどんなことができそうかを参加者みんなで見つける機会にしました。「困った人」つまり「困っている人」の背景には生まれつきの特性がある場合が多いのです。「困った人」が持つ特性について、周りが気づき、理解を深めることで、周りの人にできることが見えてきます。そして、「困った人」本人が、自分がどんな場面で何に困るのか、自己認識を高め、周りにサポートやヘルプを求める力をつけていくことも非常に重要です。次回、第2回イベントでは、自分の苦手をどう扱うかにフォーカスします。ぜひ、ご参加ください。
第2回たよおとイベント【自分の取り扱い説明書を作ろう】開催案内
開催日時:7/5(金) 21時~22時
会場:Zoom
自分の強み・弱みを言語化できていますか?周囲に伝えていますか?棚卸しワークをしながら、考える時間をご一緒しましょう。
お待ちしてます!
たよおとイベント参加方法
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その際、たよおとイベントに興味あります、とお伝えください。
運営より、改めて、たよおとイベントへのご案内を差し上げます。