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アルトは高い声は出ないの?
Chère Musique
「アルト歌手でもこんな高い声が出るんですねぇ!」
これは、レッスンで聴いた音楽について「アルト歌手で、曲名はアヴェマリア…」と軽く説明している時のご感想。
ちなみにこの時の演奏は、アーフェ・ヘイニスというオランダの、宗教曲がお得意な素晴らしい歌い手です。
どの音域も
高音域が出せるからソプラノ、出せないからアルト、と思っている方が本当に多いですね。
アマチュアの方々の中には、そういうパート分けの考え方もあるかもしれないけれど、プロの歌手は皆さん高音域から低音域まで誰でもきちんと出せます。
一番美しい響きを作れるのはどの辺りの音域か?、ということで肩書きを決めているのではないでしょうか。
ですから、ソプラノの曲にもとても低い音は出てきますし、アルトの曲で高音を出す場面もあります。
もっと厳密にいうと、一番響かせたい音域がどのあたりなのかによって、発声法が、体の使い方から違います。
その声自体の元々の特性によってアルトになりたいのかソプラノになりたいのかを見極めたら、プロになる修行の道すじも、少し違うところを通って進んでゆくのです。
もちろん長い歌人生の中で、途中で別の声に転向するということもよくあります。
合唱のパート
発声法についてだけではありません。
合唱や重唱などのアンサンブル演奏についても同じようなことが言えます。
「私が歌をこんなに楽しいと思う時が来るなんてねぇ。。。」
こちらもやっぱりシニアクラスの生徒さんのつぶやき。
「昔、学生時代にアルトばっかり歌わされて、全然楽しくなかったんですよー」
、、、、その先生は本当のアンサンブルというものを指導することが出来なかったのですね。
ソプラノもメゾソプラノもアルトも、テノールもバリトンもバスも、音楽の構造的な意味でそれぞれ、“やり甲斐のある難しいポイント”が違います。
女声アンサンブルで言えば、
ソプラノの‘声質’がどんなに高音になっても澄んだ美しい声のままでいてくれないと、そもそもどんな曲なのかが伝わりません。
メゾソプラノが確実なブレない‘音程’で全体の中で一番しっかりした声質でないと、ハーモニー自体が確立しません。一番高度な音感が必要です。
アルトが、地声にならずに低い音程で美しく響く声を出すのは、とてもとても難易度の高い発声です。
でも一番ヴォリュームを要求される。
音楽全体を下からどっしりと‘支える’役目なので。
役割
私はよく生徒さんに例え話をします。
ソプラノが美味しい料理、メゾソプラノは料理を包み込んでそこに居させることができるようにする美しい食器、アルトはそれらすべてを乗せて揺るがないテーブル。
どれかが無くなって、またはどれかが役に立たないくらいクオリティが低くて、その場面がそこに存在するということがあるでしょうか。
料理だけが(それもあまり美味しくなさそうな笑)空中に浮かんでいる、という感じの合唱を聴くと、とっても残念。。。
つまりは、音楽の中での果たすべき役割が違うのです。
こういうことが、アンサンブルをしているという本当の姿。
アンサンブルというのは、いろいろなことをやる人たちが集まって、それぞれが役割を果たし
その混ざり合った結果が、素晴らしい芸術になるということ。
全員がお互いの役割を理解して、自分を主張しつつ、周りを尊重もしていなければならない。
奥が深くてとても楽しく、うまくいくと本当に幸せなのです。
でも、今日のこのお話は、お仕事で歌うような方々の場合でしょうか。
ご自身の楽しみのためにやっている音楽は、そんなに深く厳しく考えなくても、楽しい!を目指すのが一番大切です。
Musique, Elle a des ailes.