祖父たちのゆく先
今年は二度ほど「遺族」になった。
両祖父が相次いで旅立っていったのだ。
30数年間生きてきて身内の死がはじめてだった私は
ある意味では恵まれていたのかもしれない。
九州ののんびりとした地方で
それぞれに激動の時代を生きてきた祖父たちに、
デリカシーなんてものはなかった。
親族で唯一、私に結婚や出産を焦らせてくる存在。
いつも半笑いで聞き流していた。
2024年の正月、それでもようやく両祖父母に
婚約者を会わせることができた。
このときすでに祖父たちの余命カウントダウンが始まっていたことを、私はまだ知らない。
風薫る新緑の季節と
入道雲が立ち上る記録的猛暑の頃に、
祖父たちはそれぞれ旅立っていった。
なんの前触れもなく、それは眠るような出発だったのだろう。
慌ただしい夏を超えて、
私は引越しと入籍を終えた。
春に企画していたウェディングフォトだけはずっと手付かずで、
これからももう撮られることはないかもしれない。
ああ、そうか。
私は祖父たちに花嫁姿を見せたかったのだ。
呪いに応えたかった私は
今日も祖父たちを想い、
少しの後悔の念を抱いて生きていく。