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主語を大きくしていく言葉/「お気持ち」と「太宰メソッド」

「お気持ち」とは

現在の上皇陛下が、ご自身の生前退位について自らご発言をなされたとき、マスメディアがこれを「お気持ち」と表現しました。

その本来の文脈から転じて、“自らの気持ちを表明する人”を揶揄して用いられるようになっています。

目上の立場の人間の「気持ち」に対する尊敬表現ではなく、本来主観的なものであるはずの「気持ち」に「お」をつけることで、“自分の主観を表明することに価値があると思っている人”を皮肉る表現に変質しています。

このnoteも「筆者のお気持ち」発言と言えます。

「太宰メソッド」とは

「お気持ち」について調べている中で、次のようなnoteを見つけました▼

執筆されたのは3年前ですが、「お気持ち」がはらむ剣呑な文脈について、具体例を交えながらわかりやすく説明しています。

気になったのは、「お気持ち」と同様のものとして「太宰メソッド」というネットスラングがあげられていること。

「太宰メソッド」は、太宰治の『人間失格』に由来するそうです。

⚠️太宰自身が提唱した方法論ではありません⚠️

何かを否定したり非難するときに、発言の主語を自分ではなく「世間」「世論」「被災者の方」「事件の被害者」「他のお客様」「ウチの会社」「このサイトのユーザ」など多人数であやふやなものに置き換えることで、発言の正当性を強調しつつ自分の発言の責任を回避すること。
問題は、その集団の意見を勝手に代弁する点にある。

ニコニコ大百科より

今日まで知らなかったのに、ストンと納得してしまいました。

私の「お気持ち」を普遍的なものとして語ろうとする行為が、まさに太宰メソッドということでしょう。

現在では、「主語がでかい(主語デカ)」という言葉の方がネット上では見かける気がします。

同様の意味を含むネットスラングにも、流行り廃りがあるのだなと思いました。

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いくは
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