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【本の紹介】『呆然!ニッポン大使館』(久家義之著)

Noteをやっていて嬉しいことのひとつは、記事を読んでいただいた方からコメントをいただくことです。

今回ご紹介する本は、下の記事のコメント欄で、瑞 茉莉 さまhttps://note.com/mizukimariko0820からご紹介いただいた本です。
瑞茉莉さま、ありがとうございます🙏

『オカシナ記念病院』の著者 久坂部羊氏はその昔、日本大使館の医務官として勤務しておられました。
その頃の大使館でのすさまじい体験が書かれているのがこちらの本。
ちなみに「久家義之」は久坂部羊氏の本名です。

久家氏は、神戸で消化器外科の医師として働いておられましたが、日本の末期医療の在り方に悩み、ノイローゼになりかけます。
そんなときに「大使館医務官募集」の記事を目にします。

そして「海外に出ればとりあえず末期医療の現場から逃れられる」という思いで(ご本人弁)、医務官の面接に行かれたのでした。

最初に派遣されたのはサウジアラビア
次にオーストリアのウイーン。
最後の任地はパプアニューギニア。

サウジアラビアに派遣されたのは1988年のことですから今から36年前です。

この著書に書かれてあるエピソードが現実の話だとしたら(たぶん現実)、「呆然」とするしかありません。
外務省とか大使館というのはそんなところだったのかとビックリ仰天。

たとえば大使のことは「閣下」と呼ぶとか、
たとえば大使館は議員の接待にテンヤワンヤだとか、
たとえば医務官は大使館関係者しか診察してはいけないとか、
たとえば公金流用とか…(大ニュースになっていましたね)

さすがに今はそうではないと思いたい。
けど、思えない。

というような大使館のおかしな話もおもしろいのですが、
医療事情やお国柄の違いがわかる盛りだくさんのエピソードはそれ以上に面白かった!

印象に残っているエピソードを少しだけご紹介いたします。
(大変偏っておりますが)

サウジアラビア編

大使館員はイスラム教徒でなくてもイスラムの教えを守らなければならない。
たとえば家族であっても男女が一緒にいることが許されないので、動物園に入る時も妻だけ入れなかったりとか。
女性は運転も禁止だとか。
病院の待合室も男女別だとか。
けれども大使館内での飲酒は大目に見られているとか。

湿度が2%!(日本なら湿度40%以下で乾燥注意報が出る)
タオルを干したら30分でパリパリに渇くとか。
夜寝ている間に鼻が乾いて鼻血が出がちだとか。

ウイーン編

・ウイーンの日本大使館は超豪華
・ウイーンの医務官は東欧諸国への出張が多い
・議員接待に大騒ぎ

パプアニューギニア編

・日本大使館は古いビルの2・3階を間借り
・ニューギニアはガンで死ぬ人が少ない。肺炎やマラリアで亡くなって、50歳まで生きる人が少ないから。
・ガンになったとしても治療はしない。生まれ育った家で家族や親しい人たちに囲まれ、静かに最期のときを過ごす。
・呪術が信じられている。(筆者は「呪術のような伝統医療は、治療と治癒に関する根本的な問いかけを発しているように思われた」と書いています。)
・水木しげると荒俣宏がニューギニアの久家氏の自宅で食事をした時の「妖怪談義」が面白すぎる。

番外編(お国柄とは関係ありません)

ある大使館職員が「五十肩」で夜も眠れないとのことで、湿布と消炎鎮痛剤を処方したが一向に治らない。
久家氏は知り合いから「鍼灸が効く」と聞き、にわか仕込みで勉強し、道具をそろえてやってみた。
初めて鍼を打つ久家氏は(初めて鍼を打つ久家氏に打たれる大使館職員も)超緊張!
結局鍼はその1回で終わったが、五十肩はそのうち自然に治癒したとのこと。良かった良かった。

と、このエピソードは自分が五十肩で痛いので印象に残っただけです🙇‍♀️


久家氏はニューギニアを最後に帰国され、在宅医療を専門とする医院で勤務されるようになります。

これまでに私が読んだ久坂部羊氏(久家義之氏)の著書には、さまざまな国の医療や文化や死生観に接した来られた生(なま)の経験が散りばめられているように思います。
(山田詠美氏には、「こんなに面白い題材で、よくこんなにつまらない小説が書けるものだ」と酷評されたとのことですが、私は好きです😆)







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