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「きみは筆をおいて墨をすりなさい」といわれた話

今朝の朝ドラ『おむすび』。
書道部のステキな風見先輩が、米田 結(主人公)の書いた書を見て語ります。

「米田は自分の中でなんか抑え込んどるもんない?」

「自分で無意識に我慢しとうことない?その悩み、書道で少しは解消できるかもしれんよ。書道の目的は字をうまく書くことだけやない。自分と向き合うこと。おれが教えちゃあよ。」

こんなセリフ、ほぼ初対面の女子に言う男子高校生どうなん?
というところはさておき、
私は自分の大学時代のことを思い出しました。

「思い出した」というよりも、
「こびりついて離れない」という方が正しいかもしれません。


私は教育学部国語科に所属しておりましたので、「書道」は必修でした。
けれども書道は大の苦手。
ペンで書く字はそんなにひどくないと思うのですが、筆はどうも…。
小学生のときから、クラスの中でも格段にヘタでした。

大学の「書道」は、1クラスの人数は少ないですし、私の他に「ヘタ」な人は誰もいません。
国語の先生になろうという人はさすがに書道も得意な方が多く、私は恥ずかしくて恥ずかしくて。

恥ずかしい思いで課題に取り組んでいると、書道の先生がトントンと私の肩をたたき、こうおっしゃいました。

「きみは筆をおいて墨をすりなさい」

私は「やっぱりわたしはヘタすぎるんだ」とショックを受けつつ筆を片づけ、墨をすり始めました。

しばらくひとり、みんなから少しはなれたところで墨をすっていましたら、また先生が私の肩をトントンとたたき、にっこり微笑んでおっしゃいました。

「きみは心を開きなさい」

先生は、わたしが自分の字を恥ずかしく思うばかりに心を閉じてしまっているのに気づかれていたのでしょう。

「その後わたしは書道が好きになりました」と書きたいところですが、残念ながら苦手なままです。

けれども、「きみは心を開きなさい」とほほ笑まれる先生の姿は今も鮮明に心にこびりついていて、ことあるごとに私の心を開こうとしてくれるのです。


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