見出し画像

テレビレビュー『Dr.コトー診療所』(2003)大事なものを取り戻すために

改めて『Dr.コトー』を観る

原作は’00年から
『週刊ヤングサンデー』で
連載されていたマンガです。

(『ヤングサンデー』が休刊以降は、
 『ビッグコミックオリジナル』に移籍。
 コミックは25巻まで発行され、
 ’10年から休載中)

私は原作を
読んだことがありませんが、

その昔、まだ実家に
住んでいた頃、
父と弟がこのドラマを
観ていた記憶があります。

私はといえば、
当時は、社会人3年目、

残業、休日出勤が
当たり前の日常で、
テレビとは疎遠に
なっておりました。

それでも、
稀に早く帰れる日もあり、

そんな時は、
家族でこのドラマを
観た記憶もあります。

一応、全話を通して、
ストーリーは
繋がっていますが、

基本的には
1話完結のドラマなので、
初見でも観やすかったですね。

沖縄の離島の診療所の
医師が住民の病気やケガを
治療するのが、
話の本筋になっています。

当時は、20歳そこそこの
若造だったため、
純粋におもろいドラマだとは
思いましたが、

そんなに深く感情移入
することもなく、
流し見する程度でした。

そこから年数が経ち、
3作目(2006)が
放映される頃になると、

私も実家を出て、
いろいろ変化がありました。

その頃からテレビドラマを
多く観るようになったのは、
妻の影響です。

そして、『Dr.コトー』の
3作目は、全話観ていた気がします。

もちろん、
おもしろいドラマでしたし、
それなりに楽しんで
観ていたはずですが、

具体的な
エピソードとなると、
それほど
印象に残っているものがない

というのが、正直なところでした。

そんな本作を
今回、改めて観直そう
と思ったのは、

昨年末、16年振りに
新作の映画作品が
公開されたからでもあります。

その映画作品の方は、
未見なんですが、

少なくとも今一度、
ドラマを観直してから、
観てみたいと思ったんですよね。

島民が避けている診療所

観たことがない方のために、
ザッとストーリーを
紹介しましょう。

物語の舞台は、
沖縄県八重山列島にある
志木那島(しきなじま)です。

これは物語上の架空の島で、
原作とは名称や設定が
異なります。

(原作では鹿児島県の離島)

この島は、
本土(沖縄本島)まで
船で6時間もかかる離島です。

志木那島には、
小さな診療所がありましたが、
施設も整っていません。

派遣されてくる医師は、
なかなか長続きせず、
頻繁に入れ替わっていました。

中には診療所の医師の
誤診によって命を落とした
島民もいて、

ほとんどの島民が
診療所を当てにしていません。

しかし、この島の
医療施設は
この診療所しかないので、

村役場の民政課課長、
星野正一(小林薫)は、
診療所の医師を探すことに
いつも頭を悩ませていました。

そんな時に、星野が
次に声を掛けたのが、
大学病院で外科医を務めていた
五島健助(吉岡秀隆)です。

なぜ、大学病院に勤めるほど
優秀な医師が、
最先端の医療から離れ、

離島の診療所に
くることになったのか、

そこには理由がありますが、
最初は明かされません。

その経緯については、
ドラマの終盤で
明らかになっていきます。

五島は、島の子どもの
聴き間違えが発端で、
「コトー先生」
と呼ばれるようになります。

とはいえ、診療所および
よそ者に対し、
強い不信感を持っている
島民たちは、

コトーに対し、
最初は腫れ物に触れるように、
避けるのが常でした。

コトーがやってきて間もなく、
ある子どもが虫垂炎に
なるのですが、

親はコトーを信用していないので、
船で本土に運ぼうとします。

しかし、前述したように、
本土までは船で
6時間もかかります。

やむを得ず、コトーは、
診療所のスタッフとともに、
船に乗り込んだんですね。

船が進んでいる間にも
虫垂炎は悪化していくので、
コトーは決心しました。

船を無理やり止めて、
船上でオペを
することにしたのです。

手術は無事に成功し、
子どもは助かったのですが、

島では、この話が
「コトーが船の上で、
 子どもの腹を掻っ捌いた」

と、恐怖話のように
伝わってしまいます。

なかなか、島民と
打ち解けることができない
コトーでしたが、

そんな島の人たちとも
正面から向き合い、

病気やケガを
治療していくことによって、
信頼を集めていきます。

やがて、コトーは、
すっかり島民たちと
打ち解け合い、

家族のようになっていくのです。

大事なものを取り戻すために

前述したように、
大学病院にいたコトーが
この島に来たのには、
理由があります。

ネタバレになるので、
詳しいことは書きませんが、

コトーは、自分が
医師として大事なものを
見失っている気がした
と言っていました。

見失ったものを取り戻すために、

コトーは敢えて、
最先端の医療から離れ、
離島の診療にやってきたのです。

彼はある時、他の医師に
こう言いました。

「医者は病気を診るのではない。
 患者を診るんだ」

この言葉は観る者の心に
深く訴えかけます。

医師に限らず、
人間と言うのは、
仕事に忙殺されたり、
なまじ知識が付いたりして

視野が狭くなると、
目の前にあるものの
本質がわからなくなりますよね。

本作では、医療現場の
人材不足による過労についても
言及されています。

どんな医師でも、
医師になった時には、
患者さんを助けたい一心で、
仕事をしているでしょう。

しかし、一人の人間には、
限界があります。

医師という仕事は、
高い精神性だけで、
保てる仕事ではないのです。

コトーは、そういったことを
島の住人たちとの
やりとりの中で、
一つひとつ学んでいきます。

最終的には、
彼のその謙虚な姿勢と
優しさが

島の住民たちに
受け入れられたのでしょう。

沖縄の美しい風景とともに、
人間の温かさに触れられる
素晴らしいドラマでした。


【作品情報】
2003年放送(全11話)
原作:山田貴敏
脚本:吉田紀子
演出:中江功
   平井秀樹
   小林和宏
出演:吉岡秀隆
   柴咲コウ
   時任三郎
放送局:フジテレビ
配信:FOD、dTV

【原作】

【シリーズ作品】


サポートしていただけるなら、いただいた資金は記事を書くために使わせていただきます。