映画レビュー『アトミック・ブロンド』(2017)俳優のアクションとピッタリ息が合ったカメラワーク
私とシャーリーズ・セロン
主演のシャーリーズ・セロンは、
20代の頃によく劇場で観た
女優でした。
彼女が出ているから観た
というわけではなく、
たまたま観たのが
彼女の出演作だったのです。
はじめて観る役者よりも
何度も観ている役者の方が
愛着も湧きますし、
観やすい感じがしますね。
しかし、その後、
20年もの間、彼女の出演作を
観ていませんでした。
最後に観たのは、
『モンスター』('03)ですね。
これも公開当時、劇場で観ました。
実在した娼婦の連続殺人犯を
演じたショッキングな映画で、
それまでに彼女が演じていた
「美人どころ」とは
180度違う役だったんですよね。
すごい女優さんだなぁ、
これからも観たいなぁ
と思っていたんですが、
なぜか20年も
遠ざかっていました(^^;
その間に彼女は
アクションに力を
入れ出したのは、
出演作の雰囲気を
見るだけでも
理解できましたね。
20年振りに満を持して観た
シャーリーズ・セロンですが、
まずは、そのガッチリとした
体格に圧倒されました。
本作では、のっけからヌードも
披露していますが、
その姿はとてもたくましく、
普通の女性に対する
憧れとは違うものを
感じましたね。
男性に負けないほど、
カッコいいんです。
この20年の間に
彼女がどんな努力を
重ねてきたのか、
その姿を見るだけでも
感じるものがありました。
舞台は東西冷戦終盤のベルリン
本作の舞台は
’89年のドイツ・ベルリンです。
当時のドイツには
東西を隔てる大きな壁があり、
「ベルリンの壁」
と言われていました。
これはアメリカ・ソ連による
東西冷戦がもたらしたもので、
そこに住む人たちは
無秩序に土地を
区切られてしまったんですね。
この辺の時代背景がわからないと、
本作は難しく感じられる部分が
あるかもしれません。
実際の歴史上でも
’89年にベルリンの壁が崩壊し、
東西冷戦が終結しました。
本作もその歴史を
モチーフにしてはいますが、
あくまでも架空の物語です。
ベルリン市内には
それぞれの国から送られた
諜報員が入り乱れ、
情報戦が活発化していました。
こういった戦況は、
当時、実際にあったのではないか、
という印象も受けます。
主人公のローレン・ブロートンは、
(シャーリーズ・セロン)
腕利きのスパイで、
イギリスの情報機関・
MI6 の指令を受け、
謎の組織を崩壊させるべく、
ベルリンに出向きました。
そこで彼女を待ち受けていたのは、
東西冷戦の異質な空間と
誰を信じていいのか
わからないほど、
巷に溢れる諜報員たちです。
物語の冒頭、彼女は、
指令を受けていた MI6 から
呼び出され、事情聴取されます。
その事情聴取での回想が
本作の物語のメインと
なっています。
俳優のアクションと
ピッタリ息が合ったカメラワーク
スパイの物語なので、
騙し合いであったり、
潜入であったり、
そういうおもしろさもある
作品ではありますが、
なんといっても、
本作の素晴らしいところは、
アクションシーンですね。
シャーリーズ・セロンの
鍛え抜かれた身体能力が
素晴らしいです。
また、そのアクションを追う
カメラの動きが絶品でした。
アクションシーンの
長回しが多い印象で、
定点から撮った視点では
ないんですよね。
俳優が室内を動き回るたびに、
一緒にカメラもそれを
追い続けています。
もうアクションがはじまると、
観ているこちらまで
力が入ってしまうような、
そんな魅力に溢れた
カメラワークなんですよね。
劇中全般の演出も
素晴らしかったですね。
特に、印象的だったのは、
主人公・ローレンが
滞在するホテルの部屋です。
青白いネオンが光る部屋で、
東西冷戦中のベルリンに
ふさわしい異世界が
広がっていました。
それに加えて、
音楽も良かったです。
多くの楽曲は、
当時の時代背景に合わせて、
’80年代のロックやヒップホップが
使用されています。
最初の方に出てくる
スパイが逃げるシーンでは、
ニュー・オーダーの
『ブルー・マンデー』が
バッチリ、ハマっていました。
前述したように
アクション映画としても秀逸で、
あの時代の空気感を味わえる
という意味でも
価値のある作品だと思います。
【作品情報】
2017年公開
監督:デヴィッド・リーチ
脚本:カート・ジョンスタッド
原作:アンソニー・ジョンストン
サム・ハート
『The Coldest City』
出演:シャーリーズ・セロン
ジェームズ・マカヴォイ
ジョン・グッドマン
配給:フォーカス・フィーチャーズ
KADOKAWA
上映時間:115分
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